持続可能な債券ポートフォリオの構築は分かりやすく単純なことのように見えるかもしれないが、実際はそうではない。自動車産業は、民間セクターにおいて完全に持続可能な投資を行うことの難しさを示す1つの例だ。
 
ゼネラルモーターズ(GM)とフォード・モーターはここ数年、電気自動車の生産体制を構築するため全力を尽くしている。電気自動車が年間に排出する温室効果ガスは、ガソリン車に比べ約65%少ない。1
 
再生可能エネルギーは今後も石炭火力発電からシェアを奪い、電気自動車の燃料源としての役割が高まっていくと見込まれている。一方で、GMとフォードは今のところ、比較的燃費効率の悪いトラックやスポーツ用多目的車(SUV)の販売に大きく依存している。
 
では、なぜ我々は電気自動車の専門メーカーであるテスラモーターズだけに投資しないのだろうか?テスラの車は環境に優しいが、同社は生産プロセスに問題を抱えているほか、ガバナンス上の問題に直面していることが知れわたっている。テスラ車は国際連合の持続可能な開発目標(SDGs)の一部にも貢献しているが、同社自体が環境・社会・ガバナンス(ESG)に関するリスクを抱えており、多くの長期的な投資家は慎重な姿勢で臨みたいと考えている。
 
つまり、サステナビリティの観点から完璧な自動車メーカーは存在しない。結局のところ、伝統的な自動車メーカーがすべてのモデルを一夜にして一新することはできないため、これらの企業が電気自動車に移行する動きを支援することに価値がある。実際、アライアンス・バーンスタインは、サステナビリティに向けて前進しようとしている企業に投資することが重要だと考えている。
 

経営陣とのエンゲージメントが重要

サステナビリティに向けて前進しているからといって、社債発行企業に全てを任せたままで良いわけではない。企業は定期的な資金調達を必要としている。自動車業界にとって債券は主要な資金調達手段で、株式よりも安定して資金を調達できるため、サステナビリティを目指す発行企業にとって重要なツールとなっている。
 
投資家はESGに関する問題や債券の構造について企業や引受会社と対話することで、ベストプラクティスと見なす発行目的や主要パフォーマンス指標(KPI)の目標を明確に理解することができる。たとえ企業が債券発行の際に設定した条件が十分でなかったとしても、継続的なエンゲージメント・プログラムを通じ、将来的により良い条件設定を促していくことができる。資産運用会社は、SDGsをサポートする製品やサービスを開発し、SDGsに沿った行動を取るという約束を経営陣が守っていることを確認するため、ESG問題について経営陣と頻繁に対話する必要がある。
 
債券の運用担当者は、債券発行企業に説明を求めるために単独で行動する必要はない。変化を求めて行動する業界団体や、社内の株式運用担当者や幅広い資産クラスの責任投資に関する専門家など、さまざまなパートナーの助けを借りることが効果的である。
 
企業に対してより環境に優しく、より公正な世界を作り出すことに貢献するよう求めることは容易ではないが、変化を求める声が多いほど、サステナブルな未来を早く実現することにつながる。それを予定どおりに達成できるかどうかは、投資家の肩にかかっている。
 

 

 
 

1 自動車が使用中の場合のみの数値。米エネルギー省“Alternative Fuels Data Center: Emissions from Electric Vehicles,” Energy Efficiency & Renewable Energy(ウェブサイト)(2022年5月20日)https://afdc.energy.gov/vehicles/electric_emissions.html
 

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