チャットGPTの出現により、人工知能(AI)がビジネスを変革する可能性について世界中で関心が高まっている。資産運用会社では、AIがアナリストを雑務から解放し、これまでのやり方では処理しきれなかったような多くの情報に基づいた綿密な分析を可能にすることが期待されている。

オープンAI社が2022年にチャットGPTを発表して以来、AIは大きな注目を集めている。大規模言語モデル(LLM)から生み出されたチャットGPTを銘柄分析や市場予想といった投資業務にどう利用できるかについても、学術的、実務的なレポートや動画が続々登場している。AIはとうとう人間の仕事を奪うのだろうか?

あわてる必要はなさそうだ。AIがすぐに人間のアナリストに取って代わるとは考えにくい。チャットGPTはAIの著しい進歩を反映しているが、それが人間による企業収益や投資リターンに関する長期的な観点からのファンダメンタル・リサーチの代わりを務めることができるとはアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では考えていない。しかし、さまざまな企業がAI革命の波に乗ろうとしているように、資産運用会社もAIを使って効率性を高める新たな方法を見つけ出すことになるだろう。

膨大な情報を処理する

チャットGPTとLLMは、適切に導入されればアナリストの仕事を手助けすることができる。株式アナリストは、企業を分析する上で膨大な量の資料の処理に忙殺されることが多い。メディア報道、決算報告書、アナリスト向け説明会などを通じ、大量の情報が果てしなく伝えられる。そのため、運用チームは通常、綿密なリサーチを行う対象を優先順位の高い銘柄や有望な投資先候補に絞り込むことになる。

しかし、もし1人のアナリストに1万人の優秀なインターンがついていたとすればどうだろう。そのアナリストは画期的な情報処理能力を手に入れることになり、投資判断能力を研ぎ澄ますことになる。ABは、チャットGPTのようなLLMに基づくツールは、これまで投資プロフェッショナルがあまりにも多くの時間を費やしてきた、あるいは費やすのをあきらめてきたような、時間のかかる単純作業を処理できると考えている。LLMの技術は近年飛躍的に進歩しており、基本的なプログラミング・スキルを持つ者であれば、誰でも簡単に利用できる。アナリストの前に立ちはだかる工程上のボトルネックを把握することができれば、AIを創造的に導入することで真の効率化を実現することが可能になる。

より多くの業績報告書や説明会をカバー 

株式アナリストは通常、1つのセクターの中で数十社を担当しているほか、競合他社や潜在的な投資機会にも目を配っている。しかし、決算発表シーズンには、1社当たり1時間かかる説明会のすべてに参加することは不可能だ。投資先の競合他社の電話説明会をすべて聞く時間もない。

大半のアナリストは、ポートフォリオで最大のポジションを占める企業の決算説明会をインターンに任せることは決してしないだろう。しかし、インターンが無制限にいれば、アナリストは自分が出席できない決算説明会や会議を任せることが可能になる。優秀なインターンにも似たLLMは、洗練されたサマリーを作成することができる。ABの運用チームは、最近の決算説明会やさまざまな資料でそれを試したが、LLMが作成した要約の質の高さや正確さには感銘を受けた。

アナリストは、インフレ、サプライチェーン、規制に関する問題など、足元の決算情報から離れたテーマや問題についても、常に関心を向けている。LLMによる仮想インターンは、こうしたテーマを自動的に検索・抽出し、アラートを発することができる。

LLMは、企業の発表文に含まれる重要な表現の変更を特定するために利用することもできる。これらの文書は数百ページに及ぶことが多く、四半期ごとに変更されることはほとんどないものの目を通すのには多大な労力を要する。LLMはこれらの文書を点検し、企業のビジネスや戦略に関する実質的な変化を示唆する可能性があり、さらなる調査を必要とするような変更点を見つけ出すことができる。

ミーティング、メモ、内部文書を要約

ポートフォリオ・マネジャーやアナリストは、数え切れないほど多くのミーティングやZoomを用いた説明会に参加している。時には、アナリストが書きとめた雑なメモをインターンに書き直してもらうこともある。

チャットGPTはZoomのトランスクリプト(文字起こしファイル)を圧縮したり、雑なメモを完全な文章や要点の箇条書きなど使いやすいフォーマットにまとめ上げたりすることができる。さらに、チャットGPTは、焦点がぼけている長い文章からテーマを導き出したり、とりとめのない会話からアナリストが重要なポイントを理解したりするのを手助けすることもできる。きれいに書き直されたメモは、専門家以外の幅広い読者にとっても理解しやすく、チームのメンバーと自動的に共有したり、リサーチ管理システムに保存したりすることもできる。

こうした社内データベースがあれば、独自の分析を生み出すためにLLMを利用することができる。これは、運用会社にとって真に役立つAIの能力だとABでは考えている。将来的には、チャットGPTにアナリストのメモを処理・解釈させ、例えば特定の企業に対する弱気シナリオや強気シナリオの概要を素早く作成させることなども可能になるかもしれない。このように、会話情報なども、運用チームが投資テーマを監視したり、顧客向けの四半期コメントを作成したりする際に役立つ貴重なツールとなり得る。

課題とリスク: 幻想とセキュリティ

チャットGPTはまだ生まれたてのテクノロジーだ。急速に進歩しているが、憂慮すべき傾向もある。とりわけ問題なのが、もっともらしく聞こえるが全くでたらめな答えを作り出すことがあることだ。こうした回答は、説得力のある言葉で語られるかもしれないから危険だ。アナリストはチャットGPTの回答を確認し、その正確性を検証する必要がある。それは、インターネットからソースのはっきりしない情報にアクセスしようとする、意欲はあるものの経験が浅いインターンを相手にするのと似ているかもしれない。

データセキュリティの問題にも留意しなくてはならない。チャットGPTをはじめとするAIモデルは、セキュリティを確保し、知的所有権を保護するため、社内のIT環境に適切に組み込む必要がある。著作権や情報ソースの信頼性も懸念すべき問題で、AIが生成した情報をどのように引用すれば明確性が確保でき、コンプライアンス要件を満たすことができるか検討しなければならない。

生産性を高めるためのカルチャー改革

技術的な問題以外にも、チャットGPTは文化的な問題を抱えている。データサイエンス・チームは、チャットGPTを用いる利点を積極的にアピールし、その具体的な例を示す必要がある。アナリストは、何が自動化できるかを把握するとともに、テクノロジーに習熟し、その限界について理解しなくてはならない。チャットGPTの最も顕著なイノベーションである、自然な人間の会話の中でコマンドを処理する機能を考えると、質の高いアウトプットを得るために適切なプロンプトを見つけ出すこと(プロンプト・エンジニアリング)が、成功のカギを握っている。こうしたハードルを乗り越えることで、チャットGPTはチームに受け入れられるようになる。

それがうまくいけば、チャットGPTとLLMは、それらを戦略的・体系的に導入する企業に大きな変化をもたらすと思われる。リサーチや銘柄選択に関するAIの能力を過信しないことも重要だ。何千人ものインターンを活用する際のように、最も効果的に生産性を高める可能性のあるタスクを見極めなくてはならない。アナリストの頭脳とチャットGPTの処理能力を組み合わせることができれば、AIの能力をさらに高めるとともにリサーチの効率を向上させ、最終的により適切な投資判断を下すことが可能になるだろう。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら
 

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