世界的な貿易摩擦の激化に伴い、米国株式市場では、大企業と比べ海外売上への依存度が低い中小企業に投資家の関心が集まっている。しかし、業種によっては関税が予想外の形で中小企業にも影響し得ることに注意が必要だ。

各国による関税引上げの応酬が激化した場合、中小型(SMID)株は投資先として相対的に有利だと考えられている。投資家がそうした考え方に沿って行動した結果、米国中小型株で構成されるラッセル2500指数は2018年6月30日現在、年初来で5.5%上昇している。それに対し、S&P 500指数は同期間で2.7%の上昇にとどまっている(図表1)。

貿易摩擦の激化に伴い小型株への資金流入が拡大.png

外需エクスポージャーの評価   

しかし、現実はもう少し複雑である。もちろん、米国内事業の比率が高い企業を見つけるには、多角化した国際的企業の多い大型株よりも小型株から探した方が早いというのは事実である。総売上高のうち海外比率が10%を超える企業の割合はS&P 500指数構成企業の66%に達するが、ラッセル2500指数構成企業では38%に過ぎない(図表2) 。

大型株は外需依存度が高い.png

それでも、海外取引へのエクスポージャーの本当の規模は、顧客の所在地だけで把握することはできない。しかも、それは業界や個別企業で大きく異なっており、そうした違いはもう少し詳しく吟味する必要がある。つまり、小型株指数に連動する上場投資信託(ETF)を購入するだけでは、保護主義から資産を守ることが思ったほどできない可能性がある。

銀行や運送会社にも影響     

その理由を理解するには、例えば銀行について考えてみればいい。中小型の銀行は主に地方銀行で、融資先の大半を国内顧客が占めている。しかし、その顧客が誰であるかを具体的に知ることが重要である。米国の輸入関税引上げが招いた鉄鋼やアルミの価格上昇に苦しんでいる建設機械メーカーが顧客だったとしたらどうだろう? 地方銀行がすぐに影響を被ることはないかもしれないが、多くのメーカーが問題に直面し、返済を滞らせることになれば、その銀行のローン・パフォーマンスは徐々に悪化する恐れがある。中国が課した重い関税に直面する農家に融資している農村部の銀行についても、同じことが言える。

米国の運送会社も、見た目以上に世界の貿易摩擦による影響を受けやすいかもしれない。彼らのトラックは基本的に米国内を走り回っているが、どこに物を運んでいるかと同じくらい、何を運んでいるかが重要な意味を持つ。また、関税は物価を全般的に押し上げる傾向があり、それは消費者や企業が支出を拡大するよりも、支出を減らす道を選ぶリスクを高めることになる。その結果、運送会社は運ぶ荷物が少なくなる可能性がある。

消費支出に対する新たなリスク 

貿易戦争が起きれば、消費支出はあらゆる企業にとってもう一つの問題点となる可能性がある。米国内だけに店舗を構えているレストラン・チェーンは、主に米国民の食欲に業績が左右されるものかもしれない。しかし、例えば米国の工場労働者や農業従事者が職を失ったり勤務時間が短縮されたりすれば、以前のように頻繁に外食しようとはしなくなる可能性がある。

投資家はこうした微妙な問題を認識し、貿易戦争が中小型株にとって「良い」というような単純化を警戒すべきである。実際には、貿易戦争はあらゆる規模の企業に重大な影響を及ぼす。投資家はポートフォリオに組み入れている個別企業が直面する具体的なリスクを相対的な観点から理解することが重要になる。

とは言え、ABも中小型株市場は外需へのエクスポージャーが比較的少ない企業を探し出す上で有望なカテゴリーだと考えている。しかし、ここでのキーワードは「探し出す」である。今は、ラッセル2500指数の最近のパフォーマンスがプラスだからといって、単純に同指数に追随すればいい場面ではない。貿易戦争が拡大しても堅調な業績を維持できる中小型株のポジションを構築するには、それぞれの企業が世界的な貿易摩擦やその二次効果によってどのような影響を被るかについて、慎重かつ能動的・選別的なアプローチで検証を行うことが唯一の方法となる。

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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