要旨
情報技術の進化によって、世界にはこれまでにないほど多くのニュースやデータが溢れているが、新型コロナウイルスの登場はそれにさらに拍車をかけている。投資家は、ウイルスによって不確実性が強まるなかで、重要な情報をどのように識別し活用することができるだろうか?
アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では、簡単ではないものの、幅広いユニークなデータソースから得られる情報と、各セクターを担当するアナリストの専門知識とを積極的に組み合わせることで実現できると考えている。
例えば、新型コロナウイルスの症例数や消費者の取引データなどによって、金融市場や各業界の置かれている現状を把握できる。また、例えば従業員による勤務先企業の在宅勤務への対応についてのレビューや、企業の経営陣との対話などを総合的に分析することによって、その業界の将来の勝ち組と負け組の選別や、各企業が直面する可能性のある脅威や機会の理解が可能となる。

点と点をつなぎ、洞察を得る

証券分析とは、財務諸表を調べたり、経営陣に厳しい質問をぶつけたりすることだと思っている投資家も多いようだが、それは一部に過ぎない。ABのアナリストやポートフォリオ・マネジャーは、ABが長年にわたって構築してきた柔軟性の高いデータプラットフォームを活用することで、表面的な統計だけでなく、その下に隠された洞察を得ることができる。ここではその例をいくつか紹介する。

症例数は始まりに過ぎない

私たちはこれまで、新型コロナウイルスの国別の症例数と死亡者数のチャートを何度も目にしてきた。しかしABでは、症例数と死亡者数の推移、つまりウォール街の誰もが注目している数字は、物事の一面を示すに過ぎないと考えてる。ABのアナリストは、疫学の考え方に基づき、再生産率(R0)に着目している。R0は、各感染者が次にウイルスをうつす人数を表しており、もしある国のR0が1以下で維持されれば、感染者は指数関数的に減っていくことになる。つまり、R0が1を下回るかどうかが、その後、日常生活や経済活動が正常化し始めるかどうかのシグナルになると考えられる。
政府が公表する数字は完璧ではないが、このアプローチによってデータをユニークな観点から見ることができる。図表1 (2020年4月15日現在)にあるように、韓国、イタリア、米国は、ここ数週間でついに転換点である1を下回る水準にR0を抑制している。一方、シンガポールは、当初はウイルスをコントロールしていたが、その後感染の再拡大が発生し、ロックダウンの延長を余儀なくされている。これは、感染抑制の施策が一度はうまくいったとしても、その後の再拡大を阻止するための施策もまた必要である可能性が高いことを示している。
再生産率(R0)が1以下になると感染は収束していく.png

データが示す消費者の行動変化

ABでは、さまざまなデータや指標を活用することで、人間の行動の変化をいち早く捉えることもできると考えている。
学術研究によると、最高の意思決定はさまざまなスキルと視点を融合させることで生まれるとされている。それを実践するため、ABの調査プロセスでは、アナリストの担当セクターに関する深い知識と、データサイエンス・チームの能力を組み合わせている。独自のデータプラットフォームを活用することによって、アナリストは、消費行動をさまざまな角度から捉え、それらを組み合わせることで、人や企業がパンデミックにどのように対応しているかを知ることができる。
例えば、図表2 (2020年4月12日現在)を見ると、中国のインターネット検索では、「休暇」の検索が、今年初めの谷間の後、再び上昇している。これは、最近の中国の旅行予約サイトの1日のアクティブ・ユーザー数が1年前の水準を大きく上回っていることとも整合的だ。
一方の米国でも、「休暇のアイデア」の検索は3月に大きく落ち込んだが、ここ数週間で底打ちした可能性がある。
中国と米国での「休暇」のグーグル検索人気度.png
もうひとつ興味深いデータとして、消費者の取引データを紹介したい。このデータによって、企業決算や政府の経済データが公表される数週間または数カ月前に、ウイルスによる経済的なインパクトを知ることができた。さまざまな業界における消費者の支出の推移を見ることで、日用品のまとめ買いの動き、ゲーム会社の売上の急上昇、そして旅行・接客業の業績悪化の兆しがはっきりと見て取れる(図表3)。
食料品やゲーム支出が増加した一方で、屋外での不要不急の支出は減少.png

オルタナティブ・データによる銘柄の選別

これまで見てきたデータは、市場動向の予測やセクター配分のために、マクロ環境や業界のトレンドを捉えるのに役立つが、一方で、この困難な局面における個別銘柄の選別に活用できるデータもある。
例えば、米国の半導体メーカーのサプライチェーンがどの程度中国に依存しているかを見てみよう。ABのデータセットで確認すると、米国の半導体メーカーのサプライヤーのほとんどが、実は米国にあることがわかる(図表4)。一方で、これらの半導体メーカーの多くはアップルに製品を提供していることから、iPhoneやiPad、MacBookの需要が変動することによる業績への影響を受けやすいことがわかる。
半導体メーカーのサプライヤーの多くは米国内にある.png
また、個々の企業が在宅勤務への移行にどのように対応しているかを知るために、オルタナティブ・データを活用することもできる。
これは、業務効率と従業員の満足度の両方に影響する可能性がある。もし従業員が自宅で効率的に仕事ができなければ、企業の生産性は低下し、さらにこれが従業員の満足度と結びついているとすれば、経済が正常化した後、不満を持った従業員が会社を去っていき、長期的に競争力が損なわれることにもつながりかねない。
例として、米国の医療保険業界を見てみよう(図表5)。これらの企業の多くは、在宅勤務についてうまく対応しているように見える。しかしA社については、2019年の秋までは在宅勤務についての従業員からの不満は他社並みに推移しているものの、それ以降大きく増加している。また、肯定的なコメントをしている従業員の数も相対的に少なく、何らかの課題を抱えている可能性は否定できない。
在宅勤務の評判の悪さが目立つ医療保険会社がある.png

コロナショックはエンゲージメントの課題でもある

新型コロナウイルスのパンデミックによって、ABの環境・社会・ガバナンス(ESG)分析やエンゲージメント活動が後退したわけではない。反対に、企業の新型コロナウイルスへの対応を、ESG分析のフレームワークと、独自のESG情報共有プラットフォームであるESIGHTに直接組み込んでいる。そうすることで、すべての運用チームが、変化する企業のファンダメンタルズやESGに関する状況、そして新型コロナウイルスへの対応について洞察を共有している。
役員報酬や二酸化炭素排出量に加えて、新型コロナウイルスへの対応がエンゲージメントの主要な話題のひとつになっている。対象となる企業は、大手消費者ブランドから、パンデミックに最も直接的に関与しているヘルスケア企業まで多岐にわたる。エンゲージメント活動を通じ、これらの企業が責任ある企業市民であることを確認するだけでなく、新型コロナウイルスがビジネスにもたらす機会と脅威について理解を深めることができる。そして、ABの独自のプラットフォームによって、これらの重要な洞察はすべての運用チームで共有されている。

シグナルとノイズ

新型コロナウイルスに関する新しいデータは、依然多くのノイズを含んでいる。ABでは、それらをすべての運用チームが利用できる柔軟なプラットフォームに統合することで、ノイズをフィルタリングし、顧客に代わってより良い投資判断を行うためのシグナルを見出すことを可能にしている。
ABでは、定量・定性両面の分析に基づいて、投資テーマの構築・検証を行っている。今後も、多面的な視点と確立された運用プロセスによって、市場の乱高下を利用し、顧客に価値を提供することができると考えている。
  

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