昨今の労働市場データは、新型コロナウイルス感染拡大を受けた社会的措置(ロックダウン等)及び各種規制による米国経済への大打撃を鮮明に示す結果となった。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では2020年上半期の国内総生産(GDP)が7.5%低下すると予想していたが、新しく発表されたデータに基づくと、これは少々楽観的であったようだ。
 
現在、GDPへの打撃は少なくとも10-12%に至ると予想しており、今後発表される労働市場・政府支出関連のデータによる再考の余地は残るが、今般の「コロナショック」による2020年GDP予想の大幅引き下げは不可避な様相だ。ただし、言うに及ばず当該予想は今後の経済データ次第であり、とりわけ最終的な景気回復の兆候によって年内複数回にわたり変更される見込みである。
 

悪影響の様相が徐々に浮き彫りに

2020年の経済見通し策定にあたって大きな論点が3つある。1つは、景気後退の度合いはどの程度か? 次に、いつから回復は始まるのか? 最後に、どのような形になるのか? の3つである。このうち景気回復の時期については、新型コロナウイルス情勢の進展や社会的対応に大きく左右されるため、未だ確証は持てない段階だ。しかし、少なくとも、どれだけの経済損失が発生したかについて、手がかりは得られ始めている。
 
頻繁に発表されるデータのうち、最も有益なものは新規失業保険申請件数だろう。これにより将来の失業率の大まかな輪郭が見えてくる。こちらのデータをみると、過去4週間で実に2,200万人以上の労働者が失業保険の新規申請を行っており、処理の遅延や差し戻しを踏まえると、実際に失われた雇用がそれ以上であることはほぼ間違いない。今後、さらなる解雇の増加が見込まれる点を踏まえると、最終的な雇用喪失の規模は2,500-3,000万人に達するとの試算は妥当の範疇と言えるだろう。
 

20%の失業率は十分あり得る

この2,500-3,000万人という数字を失業率に換算してみよう。2020年2月末の米国の雇用者数は1億5,200万人弱であり、その15-20%がわずか6週間で労働市場から退出したことになる。これはもはや「前例のない」という表現に収まりきらない現象であり、今般の挙動に比べると、かの有名な2008-2009年の世界金融危機の際における動きは、誤差にしか見えない(図表)。
 
米国の失業保険申請数は空前の数字.png
 
さて、失業率の試算に移ろう。単純計算となってしまうが、上述のとおり労働人口の15-20%が解雇されており、4.4%の失業率が危機前のスタート地点となることから、現在の失業率は20%程度と推測される。一方、米国労働省が発表する公式失業率(5月初旬に発表予定)は、これより低くなる可能性が高い。なぜなら、当該統計上の「失業者」として認定されるには「求職中」でなければならないためだ。現状あらゆる経済活動が停止している点を考慮すると、解雇された人々の中で職探しを一時的に諦める人々が出てくるのは想像に難くない。しかしながら、公式失業率の10%超えはもはや確実で、15-20%の範囲とABでは予想している。
 

経済に対するダメージの概算

失業率を使えば、今度はGDPに対する影響の大まかな推計が可能となる。2008-2009年の世界金融危機の際、失業率はピーク時で前年比4%上昇したのに対し、GDPは前年比4%の減少となった。今回の新型コロナウイルス危機は、世界金融危機の際と経済収縮及び失業率上昇のスピードが大きく異なるために単純比較はできないが、それでも試算の出発点としては依然有効だ。
 
2020年4-6月期の失業率が15%、つまり1年前から11.3%上昇したと仮定しよう。2008-2009年の失業率とGDPの関係を前提におくと、GDPは前年比11%程度の減少、つまり2019年末のピークから13%の減少と推計される。もし「真の失業率」が20%以上であれば、GDPの落ち込みは18%へ増加する。
 
この分析を念頭において7.5%のGDP縮小、との当初予想を振り返ると、現在リスクは明らかに悪化方向にあることは疑いようが無く、経済へのダメージは最終的に7.5%よりも大きくなると言ってしまっても差し支えないだろう。
 
ただし、上述のGDP予想にはかなりの不確実性が残ることに留意する必要がある。1つは、失業率の急上昇がいつまで続くか不明な点だ。現在、4-6月期に入ったばかりであり、6月末を待たずして一部労働者が職場に復帰できる可能性は十分にある。また、このショックがかつて前例のない規模であることに鑑みると、金融危機の際に見られた失業率とGDPの関係が今回も当てはまるとは限らない。
 
一方、迅速な財政出動が見られたことは朗報であり、政府支出によって経済損失が一部緩和されることが示唆されている。家計がより多くの、さらには拡充された失業給付にアクセスできれば、経済への悪影響は相応に緩和可能と見ている。
 

鮮明化する経済への打撃、 そして未だ見えない回復経路

一部ポジティブな側面は見られるものの、依然としてコロナショックが及ぼす短期的な影響については以前より深刻に捉える必要がある。これらの分析を加味したABのGDP予想(4月末に更新予定)について、現時点では10%から12%程度の縮小を考えているが、今後発表される労働・政府支出関連のデータによってさらなる予想の精緻化を図りたい。
 
新型コロナウイルスの情勢が好転すれば、最終的に経済は回復へ移行する見込みであるが、その点については未だ情報に乏しく、現在のGDP予想に将来的な回復の前提をおくのは時期尚早と考える。
 
目下の経済急減速及び今後の回復を示唆するデータ不足が意味するところは、米国のGDP見通しは通年ベースで-5%程度まで引き下げられる、ということだ。もちろん、今後数カ月以内に力強い回復の兆候が見られるようになり、予想の上方修正が行われることを望んでいるが、現段階でその確信は持てない状況だ。 

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