高配当株への投資は効果的な戦略で、長期にわたり世界の株式市場をアウトパフォームしてきた(図表1、左図)。しかし、そのリターンは変動しやすく(図表1、右図)、市場環境や景気サイクルの段階によってパフォーマンスが大きく左右される。

アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では配当インカム戦略について、伝統的な高配当企業だけでなく、より幅広い投資機会を活用するように設計されていれば、さまざまな市場環境で有効に機能しうると考えている。

伝統的な高配当株:焦点が狭くなるリスク

配当インカム戦略は、マルチアセット・インカム・ポートフォリオにおいて重要な役割を担っている。しかし、あまりに狭い分野に集中しすぎるリスクがあり、それによってインカム収入を拡大する余地や、株式市場が上昇している場面で値上がり益を得る可能性がどちらも制限されかねない。

伝統的な配当戦略はディフェンシブな性格が強く、景気が鈍化している場面でアウトパフォームする傾向がある。なぜなら、高い配当を安定して支払うことができる企業は成熟度が高く、ビジネスモデルが比較的安定し、強力なバランスシートを持っているケースが多いため、市場がストレスにさらされている局面をうまく乗り切ることができるからだ。

しかし、伝統的な高配当企業のみに投資していれば、一部のサイクルではリターンが犠牲になる可能性がある。高配当企業はバリューの特性を持っている傾向があり、利益を株主に還元するよりも事業拡大のため再投資するグロース企業とは必然的に性格が異なる。そのため、グロース株に追い風が吹いている場面では、高配当株はアンダーパフォームする傾向がある。

こうした理由から、高配当株への投資に当たっては、慎重に検討された分散型の投資アプローチを取ることが賢明だとABでは考えている。

配当インカム戦略が直面する課題は拡大している

最近の市場の動きは、高配当銘柄だけを重視すれば通常よりも大きな意図せぬリスクに直面しかねないことも浮き彫りにしており、それを慎重に管理する必要がある。

例えば、急成長しているテクノロジー企業の時価総額が拡大した結果、配当利回りが2%を超える企業が世界の投資ユニバースの半分に満たない市場環境が生まれた(図表2)。その結果、配当を重視する伝統的な投資家にとって投資機会が少なくなっており、インカムを求める投資家にとって、株式市場における他の分野に投資範囲を広げる必要があることを浮き彫りにしている。

こうした高成長企業と伝統的な高配当企業の大きな違いは、高配当株ユニバースの動きを変化させている。高配当株は通常よりもさらにディフェンシブな性格が強まり、株式市場全体の動きに対する感応度が着実に低下している。こうした傾向は2022年に市場環境が悪化した場面ではプラスに寄与したが、市場が好調なリターンを上げている場面ではその恩恵が小さくなる可能性がある。グロース株主導で市場が力強く上昇した2020年にはまさにこうした現象が見られ、高配当株は約16%アンダーパフォームした。2023年も同じような動きが進行している。

今日の市場における高配当株投資のアプローチは、これらの課題に対処できるよう設計する必要があるとABは考えている。

配当以外の要因にも注目:ファクターが配当投資  ユニバースの拡大に寄与

ABの見方では、定量分析に基づく投資プロセスは、伝統的な配当戦略の枠外にある銘柄を含む、より広範な投資機会を追求する効果的な方法となり得る。より体系的なアプローチを取り入れれば、さまざまな国や投資スタイル、セクターから、高い利回りを獲得することができる。それは配当利回りだけでなく、価格モメンタム、クオリティ、収益力といったさらなるリスク・プレミアムを考慮して銘柄を評価する上でも役立ち、よりバランスの取れたポートフォリオを構築することにつながる。

伝統的な高配当株のみに焦点を当てていれば、意図せずしてスタイルのファクター、セクター、狭い配当レンジの銘柄に投資が集中してしまう可能性もあるが、投資の網を広げれば、そのような事態を回避できるかもしれない。(図表3)。セクターのリターンが大きく変動することはよくあることで、そのばらつきは投資パフォーマンスに対して他の要因よりもはるかに大きな影響を与える。その傾向は、新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われた2020年と2021年に「勝者と敗者」を分ける要因として一段と強まり、当時はテクノロジー株が他のすべてのセクターを圧倒した。2022年には、高インフレと金利上昇を巡る懸念が最大の関心事となった結果、エネルギー株がアウトパフォームしたほか、ヘルスケアや生活必需品などディフェンシブなセクターは他の銘柄に比べ、下げ幅がはるかに小さかった。

株式市場全体や伝統的な高配当株のセクター構成がますます変化しているほか、業界の勝ち組と負け組の格差が拡大しているため、高配当株と株式市場全体の短期的なパフォーマンス格差が通常よりも大きくなっている。それは純粋にインカムに焦点を当てている一部の投資家にとって、リターンがいつも以上に主要銘柄のパフォーマンスから乖離することを意味する。

もっとシステマティックな高配当株投資アプローチを取り入れれば、セクター間の格差を縮小することができる。特に、構造的にオーバーウェイトとなっている生活必需品セクターの比率を引き下げ、テクノロジーセクターに対するアンダーウェイトの度合いを最小限に抑えれば、株式市場全体に対するトラッキングエラーを最小化することにつながり得る。

インカム戦略における高配当株投資のダイナミクス

高配当株は、マルチアセット・インカム戦略を構成する多くの重要な要素の1つである。投資家は、市場のパターンが変化するのに伴い、高配当株へのアロケーションが他の構成要素をどのように補完するかといった点を常に考慮しなくてはならない。例えば、投資家は高配当株の役割を評価する際に、株式と債券の相対的な利回りの優位性を考慮する必要がある。

わずか1年半前、高配当株の利回りは質の高い債券の2倍以上で、ハイイールド債とほぼ同水準のインカム収入をもたらしていた。だが現在は、債券が株式をはるかに上回るインカムを創出している。ハイイールド債の利回りは株式の倍に達し、高格付け債でも利回りが株式を1%以上上回っている。こうした環境下では、株式にとっては配当収入と同時に、株価の上昇余地がかつてないほど重要になっている。

ABは、よりシステマティックなアプローチをとり、幅広いインカム創出源を慎重に考慮しながら銘柄を組み合わせ、セクターや他のリスク・プレミアムのバランスを取ることで、投資家はリターンを犠牲にすることなく魅力的な配当収入を得ることができると考えている。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら
 

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