サステナブル投資は、今や世界で最も注目されているトレンドのひとつとなっている。しかし一方で、投資対象が絞られるという点で、分散の妨げになる可能性も指摘されている。マルチアセットの考え方を取り入れると、ポートフォリオのリスクのバランスを量ることが可能で、潜在的なリスク調整後リターンを改善することにもつながる。

サステナブル投資のアプローチは、社会や環境に好ましい影響をもたらす発行体への投資を通じて、魅力的なリターンを実現することを目指している。しかし、サステナブル投資は、サステナブルな目標と合致し、高いリターンをもたらし得る堅実なビジネスモデルを持った発行体を絞って投資するアプローチをとるため、ある特定のリスクも生み出すこととなる。

サステナビリティを実現するには一貫性が重要

マルチアセットのポートフォリオでそれを実行するのは容易ではない。異なる資産クラスに一貫性のあるフレームワークを取り入れることは難しい。しかし、今日では、マルチアセット・アプローチの魅力を高めるイノベーションが生まれつつある。

これらのイノベーションは、よりバランスの取れた投資戦略を見出してくれる。株式を通じたアプローチでは、長期にわたり魅力的なリターンをもたらす可能性がある一方、2022年のように、短期的には著しいボラティリティやドローダウンに見舞われた場合は、一定のリスクがより顕在化することもある。債券やマルチアセットのアプローチを用いると、幅広にサステナブル投資にアクセスできるようになり、より大きな分散効果を手に入れることもできる。

ボラティリティを低減するさらなる手段

マルチアセット・ポートフォリオは、特にサステナブル投資のユニバースにおいて、ポートフォリオのリスクのバランスを取り、ボラティリティを低減するための補完が可能である。

最も明白な利点は、単一のポートフォリオで幅広い資産クラスにアクセスできることである。マルチアセットのマネジャーは株式と債券を組み合わせ、不動産やインフラなど非伝統的な資産へのエクスポージャーをポートフォリオに組み入れている。例えば、調達資金を持続可能なプロジェクトに直接投資できるグリーン・ボンドなど、環境・社会・ガバナンス(ESG)にフォーカスした債券が投資対象となる。非伝統的な資産では、デジタルインフラや再生可能エネルギー発電といったサステナブルな資産への投資も拡大している。こうしたさまざまな資産クラスへ分散投資できることになる。

ポートフォリオのバランスを保つためには、株価下落の影響を和らげるために株式以外の資産を検討する。ただ、株式のボラティリティを引き下げるために債券や現金など低リスク・低リターンの資産クラスのウェイトを高めれば、リターンが犠牲になる可能性がある。

同時に、高リターンを得る可能性とサステナビリティに関する基準を維持するには、単なる定量的なスクリーニングだけでは不十分である。特に急成長している革新的な企業ではESGに関する欠落が多いため、ファンダメンタル分析と計量分析を組み合わせて個別に企業を評価することが必要となる(図表)。

マルチアセット・ポートフォリオにおける分散投資は、単純な資産クラスへのアロケーションにとどまらない。例えば、株式ではよりバランスの取れたリターンを投資家に提供するため、幅広い投資スタイルへのポジションを構築することができる。

伝統的な分散投資手法では、必ずしも十分な成果が得られるとは限らない。例えば、サステナブル・ポートフォリオの株式部分におけるスタイルの偏りを是正するには、より幅広いユニバースでリバランスを行うだけでは完全な解決策とはならない。サステナブルなマルチアセット・アプローチは、考慮すべき問題が多いため、より繊細な対応が必要となる。具体的には、ボラティリティの低減を目指しながら、長期的に高リターンを創出する潜在力とサステナビリティに関する高い信頼性の双方を維持することが重要になる。また、パフォーマンスとサステナビリティの双方をサポートするため、質の高いファンダメンタル分析や計量分析を通じ、幅広い分野から投資先を選択する必要がある。

サステナブルなアプローチのバイアスを是正

サステナビリティに関して高い信頼を得ている企業を見つけ出すには、明確なロードマップが必要となる。2030年までに年間5-7兆米ドルのプロジェクトを支援する国際連合の持続可能な開発目標(SDGs)は、サステナビリティを重視する投資家にとって望ましいフレームワークを提供しているとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では考える。

SDGsに合致したアクティブ運用の株式ポートフォリオは、規律ある投資先選択アプローチを通じて構築されている。同ポートフォリオは、もちろん長期的に高いリターンを獲得を目指している。しかし、モーニングスターのデータによると、それらは本質的にグロース株にスタイルのバイアスがかかっているケースが多い。グロース株は他の株式に比べ、金利変動に対する感応度が高い。金利が低下している場面や低金利環境下ではこれはさほど問題にならず、投資期間が長い、またはリスク許容度の高い投資家にとっても大した問題ではない。しかし、今年のような金利上昇局面では、多くのサステナブルな株式ファンドのパフォーマンスが過度に悪化している。

サステナブルな投資機会へのバランスの取れたエクスポージャーを構築したいと考える場合、マルチアセット戦略を構成するグローバル株式に対する2段階のアプローチが効果的だとABでは考える。まず、質の高いサステナブルな株式で構成するグロース・ポートフォリオに集中的に資産を配分する。次に、そのバランスを取り、グロース株への偏りを減らした総合的な株式ミックスを作り出すため、カスタム・コンプリーション・ポートフォリオに資産を配分する。

ボラティリティが低く、成熟した質の高い企業(以前の記事 『Turning Less into More: Revisiting Equity Risk in a Volatile Year』(英語)ご参照) に焦点を当てたアクティブな株式戦略を補完的に活用すれば、サステナブルな株式ポートフォリオによく見られるバイアスに対処することができる。また、一貫性のある厳密なサステナビリティに関するフレームワークを組み入れることで、ボラティリティが低く、よりバランスのとれたグローバル株式へのアロケーションを実現することが可能になる。こうしたアプローチは、標準的なグローバル株式でグロースバイアスをかけたポートフォリオと同水準のリターンをもたらす一方で、ボラティリティ(リスク)ははるかに低くなるとABではみている。

適切なアプローチを選択する 

集中的なアクティブ株式ポートフォリオもリスク・バランスを考慮したマルチアセット・アプローチも、どちらも持続的なパフォーマンスを提供しうるソリューションであるが、何が適切な選択かは、主に投資家の投資目的やリスク許容度、時間軸などに左右される。グロース株式を用いるソリューションは長期的に高いリターンをもたらす可能性があるが、2022年上半期には金利上昇を背景に、大幅な調整を余儀なくされ、高いボラティリティに見舞われました。

マルチアセット・アプローチは幅広いグローバルな株式を組み合わせてバランスを取ることで、市場の下降局面におけるドローダウン・リスクを低減できるとABでは考える。この戦略をさまざまな資産クラスで一貫して適用すれば、サステナブルな企業に対する投資を続け、かつリスク許容度の低減が可能となり、とりわけバランスの取れたサステナブル投資を可能にするだろう。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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