米国の債務上限をめぐる議論が再び熱を帯びてきた。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の基本的な考え方は、過去に何度も行われたように、議会が最終的に債務上限を引き上げるというものだが、2023年はそのプロセスがかつてなく混乱すると予想する。したがって、米国債が「偶発的なデフォルト」に至るリスクシナリオがこれまで以上に懸念される。

先日、ジャネット・イエレン財務長官は、米国財務省が債務上限に達し、議会で債務上限の引き上げ法案が可決されるまでの間、債務の履行を臨時措置に頼らざるを得なくなったと発表した。あくまで「臨時」の措置ではあるが、債務上限の論議はあまりに頻繁に起こるため、当たり前のことだとの感覚がある。しかしたとえ議会が最終的に上限を引き上げるとしても、チキンレースが繰り広げられ、意図しない米国債デフォルトのリスクが高まるため、この議論は夏の間、金融市場を揺るがすと予想される。

そもそも債務上限とは?

おさらいになるが、債務上限とは、米国議会が財務省に借金をする許可を出すための法令による規則である。債務上限自体は、予算編成の過程で成立する政府の歳出計画とは何の関係もなく、2023年度予算は2022年末に成立済みだ。要するに、債務上限は、政府がすでに支出を約束しているものを使うことを承認する投票に過ぎない。

トランプ前大統領の政権下では三度にわたり無事に債務上限は引き上げられた。しかし、民主党がホワイトハウスを奪還し、議会と立法府がねじれ状態になった今、予算編成の過程で支出削減が実現しにくく、議会が政権から支出削減を引き出さなくてはいけない状況にある。

なぜ債務上限が問題なのか?

金融システムにおける米国債の役割は独特である。国債は一般に「無リスク」と見なされ、単なる投資にとどまらない使われ方をしている。国債は、よりリスクが高いと思われる投資に対するヘッジとして利用されている。また、銀行が資金を調達し、流動性を維持するための短期取引の担保としても利用されている。保険会社や政府機関、その他の大口の借り手は、大量の国債を準備金として保有している。

国債が無リスク資産ではなくなれば、金融システムの一部が予想不可能な形で崩壊する可能性がある。この予想不可能性こそが最大のリスクであり、実際、米国国債のデフォルトがたとえ短期間であっても、どのような事態になるかは想像し難い部分がある。投資家が真のヘッジ手段を奪われる前例のない事象である。

もちろん、債務上限が問題となるのは今回が初めてではない。2011年は、議会と政権がギリギリまで交渉を長引かせ、結果的に米国の国債が格下げされたことが、今回の事態と最もよく似た事例となる。

債務上限問題の緊張が本当に高まる時期の予想は難しい

政府の支出能力が枯渇する「機能急停止」の時期を事前に予想することは困難である。正確なタイミングは、今後数カ月間の政府の歳入の状況に左右される。ABは、この特別措置が第3四半期まで続き、議会がこの問題に真剣に取り組むのはそこからになると予想している。金融市場もおおむね同様の想定をしており、現在、夏までの資金調達市場には混乱は織り込まれていない。

交渉は非常に複雑なものになる

債務上限のやりくりの限界が近づくと、交渉の状況はどうなるのか?2011年よりもさらに厄介なことになると思われる。共和党の中には、歳出削減を実現するためにデフォルトのリスクを冒すことをいとわない考え方もある。そうしたグループはごく少数であるが、下院において共和党はごく少数の議席しか民主党を上回っておらず、妥協に反対するグループが大きな力を握ることが、下院議長の地位をめぐる交渉でも明らかになっている。

このため、債務上限引き上げを承認するためには超党派の連立が必要となる可能性が高く、特に政府財源に関する問題では難航が予想される。最終的には、デフォルトの危機は米国議会にとって無視できない問題になるものの、交渉が妥結に至る交渉が時間切れとなり「偶発的デフォルト」に陥るリスクは無視できるものではない。

予想不可能なことがゲームの名前である

2011年には、債務上限をめぐる議論が夏まで長引き、金融市場は苦境に陥った。期限が近づき、投資家の警戒感が強まるにつれ、株式市場は15%以上下落した(米ドルベース)。特筆すべきことは、デフォルトへの懸念が高まりソブリン格下げのリスクが高まったにもかかわらず、投資家は逆に国債を購入し、国債利回りは低下した。株価の下落に対し、デフォルトが発生してもごく短期的であり、その悪影響は満期の長い長期国債よりも満期の短い短期財務省証券に影響を与える可能性が高いという考えにより、投資家は国債の購入に動いたのだ。

また同じようなことが起こるのだろうか?その予想不可能性こそが、投資家が念頭に置かなければならないことだ。最終的に議会は債務上限問題に解決をみるだろうが、その過程はスムーズにはいかず、債務上限をめぐる攻防は過去見たことのないシナリオに陥る可能性が高い。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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