最も基本的なレベルでは、リターンが資産クラス、個別の現物資産、またはファクター戦略のどこから得られようとも、ポートフォリオはさまざまなリターン源泉を組み合わせて構成される。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は数年前から、ファクターは資産配分の重要な役割を担うべきで、ある程度の制限付きながらも、資産クラスと交換可能なものとすべきだと指摘してきた。

ファクターの戦略的意義は、投資家が効果的にタイミングを計ることができるかどうかという問題とは異なる。むしろ、ファクターはリターンの観点や分散投資の源泉として役立つ可能性があるという点に戦略の妥当性がある。仮に投資家がこの考え方に原則的に同意したとしても、過去数年にわたるファクターの低調なパフォーマンスは、多くの投資家がファクターを取り入れるのをちゅうちょする十分な理由となってきた。

最近はファクターの成績が改善している  

ABは資本の流入でファクターが「裁定された」という考えには決して与しなかったが、ファクターは長期にわたり十分な効果を発揮できない場合もある。ここ1年にそうした低迷期は終わり、ファクターの有効性が回復してきた(図表1)。バリュー・ファクターを取り巻く環境が変わったことも改善の一因だが、米国では2021年半ば以降、モメンタム・ファクターやクオリティ・ファクターもプラスのリターンをもたらしている。

投資家はなぜファクターが引き続き有効だと考えるべきなのだろうか?最近のパフォーマンスの変化を受け、多くの投資家はここ数年の低調なファクター・パフォーマンスは構造的なものではなく、単に循環的なものだったと考えるだろう。そうであれば、ファクターはあまり重要でないとか、資産配分を決定する際の明確な構成要素として不適切だといった見方は薄れると考えられる。

バリューとインフレとの関係

バリュー・ファクターについても、効果があると考える具体的な理由がある。過去100年近くにわたり(図表2)、バリュー・ファクターの有効性とインフレ率の間には関連性が見られる。インフレ率が高い場面ではバリューの効果が高まる傾向がある一方、低インフレの環境下ではバリューの効果は低くなる。こうした関係は、過去12カ月に先立つ10年間におけるバリューのアンダーパフォーマンスの少なくとも一部は、実際のインフレ率が持続的に予想を下回ってきたことが原因であることを示唆している。

もちろん、バリューの有効性を決定づける要因はインフレだけでないことは明らかで、依然として2つの構造的な逆風が残っている。ひとつは、技術革新が一部の産業を守っている「堀」を破壊したことで、過去の基準に照らして非常に割安な水準にある業界は単に循環的に人気が薄れただけではなく、伝統的な競争ダイナミクスの大きな変化によって負け組となった可能性がある。

また、過去10年間に、企業による投資は有形資産から無形資産に重点がシフトしている。会計処理の違いは、価値を測る最善の方法に関する重要な問題を提起する。こうした要因が存在するため、投資家は価値に関する伝統的な定義が必ずしもこれまでの長い歴史と同様のパフォーマンスを示すと期待してはならない。

ABはこれまでのリサーチで、バリュー取引の対象となる銘柄について、インフレが直接反映される銘柄としてうまく機能するものと、インフレに対する典型的な中央銀行の対応という間接的なメカニズムの結果として輝く銘柄(特に銀行)を区別してきた(以前のリサーチペーパー『資産クラスとファクター』ご参照)。現時点ではどちらもうまく機能する可能性があるが、長期的な戦略的視点に立てば、後者についてはそれほど確信を持てない。

低ボラティリティとさらなる効果:それはバリューだけではない 

有望なファクターはバリューだけでない。低ボラティリティ・ファクターも魅力がある。2021年のようにインフレ期待が急速に高まれば、このファクターは低迷する傾向がある。しかし、インフレ期待がピークを打った後、沈静化するか一定のレンジ内で推移した1970年代以降の主な場面では、低ボラティリティ・ファクターのリスク調整後パフォーマンスは、株式や60/40戦略のどちらと比較しても好調に推移した。しかも、低ボラティリティ・ファクターが大幅にアンダーパフォームするのは、市場のリターンが最も好調な時期だけで、当面は市場のリターンが低水準にとどまるとABではみている。

戦略的な観点から注目すべきはもう1つのファクターはクオリティである。質の高い株式は、長期にわたって魅力的なリスク調整後リターンをもたらす傾向がある。最後に指摘したいのはモメンタム・ファクターである。それはカメレオンのように変化するため、ある意味でファンダメンタルな戦略的視点を持つことは難しい。それでも、モメンタムは幅広いアロケーションの中で果たすべき役割を持っている。特に、インフレが高進している時期のように価格トレンドが長期にわたり定着している場面では、その傾向が顕著になる。つまり、ABの見方では、モメンタムはインフレから資産を守る役割を果たしている。

ファクターの戦略的意義は、投資家が必要とするパフォーマンスと、実際に得られるリターンの「リターンギャップ」を埋める能力だけではない。ファクターはポートフォリオのリスクを管理する役割も果たしている。ファクターは資産クラスよりも安定性のある分散効果を提供してきた長い歴史があり、ファクターの平均的なペアワイズ相関は資産クラスよりも安定していることを示してきた。ABは一部の投資家がファクターを懐疑的に見ていることは認識しているが、ファクターは戦略的な役割を担っており、しかも、それはさまざまな目的を持っていると考えている。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。 

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