市場は米連邦準備制度理事会(FRB)も欧州中央銀行(ECB)も来たる2024年6月に利下げに踏みきると予想しているが、マクロ経済の進展がこのコンセンサスを覆す可能性もある。

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先進国全体で物価上昇率の緩和が続くなか、市場は利下げサイクルの開始を切望している。FRBとECBは6月の会合で金融政策見通しの改定を行うが、投資家は両中銀ともその段階で利下げを開始すると予想している。公表されている経済指標に基づくと、これが現実的な中心的ケースだとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は見ている。

しかし、経済統計以外のファクターも今回は重要になる可能性がある。各中央銀行の政策目標は微妙に異なっており、経済情勢の変化に対する政策対応の変化は同じではない。

米国経済(特に労働市場)は堅調を維持しており、米国のインフレ率は予想ほど急速に低下せず、FRBが最初の利下げを、しばらく延期するのではないかという懸念を促している。そんなFRBの動きにECBも付き合う必要があるのだろうか。

政策目標の違いが異なる動機を生む

FRBがインフレ率と失業率の両方を目標に掲げているのに対し、ECBは物価の安定にのみ焦点を当て、インフレ率を2%未満に維持することを義務付けられている。したがって、FRBが利下げサイクルの開始を遅らせようとも、ユーロ圏のインフレ率が目標に向かって持続的に低下する限り、ECBは利下げに踏み切る可能性が高いとABは考えている。

ECBは3つの原則によって意思決定する。理事会が評価するのは、1)インフレ圧力を抑制するために金融政策がどの程度効果的に機能しているか、2)インフレの基礎となるコア部分が低下しているか、3)入手可能なデータに基づく今後のインフレの見通し、この三点だ。

ECBは、新たな経済統計が入手可能になればそれを評価し、さらに金融政策の意思決定がもたらし得る二次的効果の影響を考慮することに全力を尽くすと強調している。現在得られている経済統計に基づけば、FRBよりもECBが先に利下げを行うことは明白と考えている。

金融政策の波及は依然として影響しており、信用状況の引き締めと信用増加率の鈍化がそれを証明している。ヘッドラインインフレ率は2023年に大幅に低下し、予想よりも速いペースで低下し続けている。コア・インフレ率(特にサービス・インフレ率)は鈍化がやや滞っているものの、強い賃金上昇圧力にもかかわらず、同様の下降経路をゆっくりとたどっている。

さらに、ECBが3月に発表した経済見通しでは今後のインフレ率のさらなる低下が示されており、ヘッドラインインフレ率は2025年に2.0%、2026年に1.9%と予想されている。基本的に、インフレ率は中期的にはすでに目標に達しており、6月にはさらなる下方修正が行われる可能性が高い。

タカ派的な側面では、ECB理事会の一部のメンバーは依然として賃金上昇に警戒を緩めていない。しかし、いずれは経済統計がこの懸念を和らげる可能性が高い。賃金上昇率は2023年10-12月期にやや鈍化し、2024年にはさらに鈍化すると予想されている(図表1)。

したがって、ECBが6月に利下げを開始するために必要なマクロ経済的条件は、今後数カ月ですべて満たされると考える。

タイミングと景気も重要な要素

インフレ指標はECBの意思決定の主要な原動力ではあるが、ECB理事会は利下げのタイミングとユーロ圏の経済成長への影響を更に慎重に検討するであろう。

ECBは利下げを先送りし続けることもできるが、それはせいぜい24年7月の理事会までであり、あるとしても欧州圏独自の情勢によってのみで米国とは関係ないとABでは見ている。ECBの発言者(タカ派からハト派まで)は、6月が開始点となる可能性が高いと述べている。3月の理事会後の記者会見で、ラガルドECB総裁は、理事会はすでに引き締め的な金融政策スタンスを縮小する議論を始めていると述べた。利下げの先送りはハト派理事からの強い反発を招き、低迷するユーロ圏経済に打撃を与え、中期的にインフレ率が目標の2%を大きく下回るリスクとなる可能性がある。

つまり、経済成長を維持すること自体はECBの正式な目標ではないが、理事会が不必要に金利を高く維持し、経済に打撃を与え、米国との格差をさらに拡大することは失策となりうる。実質成長率でみると、米国がパンデミック前のトレンドを顕著に上回っているのに対し、ユーロ圏はほとんどトレンドまでの回復も出来ていない。その主な要因としては、両地域で異なる内需パターンが挙げられ、パンデミック(世界的大流行)が始まって以来、その格差は大幅に拡大している(図表2)。個人消費と投資にこの傾向は明白に現れている。

FRBが堅調な国内経済を背景にインフレ動向をじっくりと検討できる一方で、ECBがさらされるプレッシャーはより大きい。ユーロ圏の成長率は2024年後半に持ち直すと予想されているが、依然として弱い。最大の経済大国であるドイツは、解決に時間を要する構造的課題に直面している。こうした国内の厳しい制約を踏まえると、ユーロ圏の状況と見通しは、利下げを早急に開始するよう求めているとABは考える。

投資家の視点では

もちろん、ECBが利下げで先行するシナリオは実現しないかもしれない。しかし、もしそうなった場合に備えて、投資家は準備をしておく必要があると考える。

ECBが利下げサイクルを主導すれば、投資家はユーロ圏金利の低下と、現在の市場予想よりもユーロ通貨が売られる可能性が高いと考えるべきだ。これは、イールドカーブと為替の両方のポジショニングに影響を与える。

ECBの利下げはユーロ建て債券利回りの低下を促し、債券価格を押し上げるだろう。このシナリオでは、投資家は金利の変化に最も敏感な(デュレーションが最も長い)ユーロ債を保有することで利益を得るだろう。最終的には、金利低下は消費と投資を押し上げ、経済成長を刺激し、債券発行企業を支援するはずである。

ユーロ建て債券価格は上昇するだろうが、一方で投資家はユーロ安による為替差損が価格上昇分を相殺しないように注意すべきである。例えば、米国の投資家はユーロ・エクスポージャーを米ドルに戻すヘッジを検討すべきであろう。

常にそうであるように、投資においては先を見越しての準備が重要であり、ECBの金融政策に関しても同様だと考える。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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