気候変動に注目している投資家は中国企業を見落としがちだが、それは間違っている。中国企業は、世界がより環境に優しい未来に移行する上で欠かせない役割を果たしており、慎重に選別された銘柄に投資すれば魅力的なリターンが得られる可能性がある。

大半の環境ファンドは、中国企業をほとんど、または全く保有していない。モーニングスターのデータに基づくアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の調査によると、2022年末時点で、グローバル環境株式ファンドの運用資産上位10本のうち、5本は中国へのエクスポージャーが全くなかった。残り5本のうち4本も、中国銘柄の保有比率は5%に満たなかった。

あらゆる環境の道は中国企業につながる

そうした状況は投資機会を逸しているように見える。世界中で加速する脱炭素化に向けた取り組みには、中国企業の製品が欠かせない。太陽エネルギー、風力発電、電気自動車(EV)に対する需要を満たすには、世界の広大なサプライチェーンが重要だ。グリーンへの転換を実現するのに必要な原材料、製品、部品の一部は、中国企業が支配している。

例えば、中国の銅やニッケルは、風力タービンやソーラーパネル、EVの生産にとって欠かせない原材料だ。また、風力タービンやEVの生産に使われるリチウムは、中国が世界全体の58%、レアアースは87%を加工している(図表)

エネルギー転換:太陽光と風力

太陽光発電装置の設置が急増している。中国は世界の太陽エネルギー需要の37%を占め、太陽光発電装置の世界最大の消費国でもある。ブルームバーグNEFのデータによると、中国は世界の太陽光発電装置サプライチェーンの約4分の3を占めている。

太陽光発電を導入しようとする世界中の企業や住宅所有者は、中国が市場を支配しているポリシリコンなどの原材料に依存している機器を購入する必要がある。ブルームバーグNEFによると、中国は世界中で使用されるソーラーウエハーの97%、ソーラーセルの81%を生産している。

その結果、中国のソーラー機器メーカーは、中国国内だけでなく、炭素排出ネットゼロを掲げる世界各国の需要拡大により、急速な成長を遂げようとしている。例えば、太陽電池モジュールの2大メーカーであるジンコソーラーとJAソーラーは、2022年に世界市場におけるシェアが合わせて約32%に達した。

中国企業は風力発電の分野でも強さを見せている。メイヨウ・スマート・エネルギー・グループは中国を代表する風力タービンメーカーで、特に洋上風力発電分野を得意としている。同社は2021年時点で、中国を除く世界の風力発電装置市場で22%のシェアを持ち、スペインとドイツの風力エンジニアリンググループであるシーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジーに次いで2位となっている。

EV革命を推進

中国はすでに世界最大のEV市場で、中国の自動車メーカーは、EVをめぐり世界の同業他社との競争を激化させている。例えば、深圳のBYDは電気自動車やバスを製造しており、テスラに次ぐ世界2位のEVサプライヤーとなっている。プラグインハイブリッド車を含めると、BYDは新たなエネルギー源を動力とする車の最大のサプライヤーであり、世界で18%のシェアを握っている。

自動車メーカー以外にも、EVのサプライチェーンには投資機会があふれている。例えば、EV用バッテリーセルの約75%、セル部品の約70〜80%が中国で生産されている。コロンビア大学国際公共政策大学院グローバルエネルギー政策センターで非常勤准教授を務めるトム・モーレンハウト氏によると、補助金を支えに世界的にEVの需要が拡大する中、中国は今後10年間にわたり、サプライチェーンのあらゆる分野で支配的な地位を維持するとみられている。モーレンハウト氏は、ABとコロンビア大学が昨年実施した「The Making of a Green Giant: Decarbonization with Chinese Characteristics(グリーン巨人の形成:中国流の脱炭素化)」と題する一連のワークショップで、世界のEV革命における中国の役割について論じた。

EVの推進を下支えする中国企業の例としては、世界最大のEV用バッテリーメーカーであるCATLが挙げられる。同社は世界で32%のシェアを持ち、米国、欧州、日本の大手自動車メーカーに製品を供給している。

環境効率化を実現するインフラ・ソリューション

ネットゼロの目標を達成するには、EVや代替エネルギー向けにインフラを整備するソリューションや、エネルギーや水、環境に優しい素材の利用効率を高める取り組みが必要になる。銅鉱山会社や、海底ケーブルメーカー、スマートグリッド関連のソリューションプロバイダーは、インフラのアップグレードと合理化に向けた世界的な取り組みに貢献している。

NARIテクノロジーはそのいい例だ。同社は送電機器のプロバイダーで、システムオートメーションやスマートグリッド、再生可能エネルギー、省エネなどの分野でソリューションを提供しており、同社の主な製品は30~40%の市場シェアを握っている。

ネットゼロの実現を支える中国企業にどのように投資するか

中国では政策や規制が経済に与える影響が著しく大きいため、海外の投資家は中国企業への投資に懸念を抱くかもしれない。しかし、中国の長期的な政策目標に沿って、世界のエネルギー転換の実現に貢献する中国企業に焦点を当てた規律あるアプローチは、規制リスクを軽減するのに役立つ。

中国の政策と経済状況のニュアンス(以前の記事『China’s Growth and Policy Priorities Pave New Paths to Equities』(英語)ご参照)を理解している投資家は、強じんで長期的な投資機会を見出すことができる。2060年までにカーボンニュートラルを達成するという中国のコミットメント(以前の記事『中国のカーボンニュートラル計画を読み解く』ご参照)は、長期にわたり政策の方向性を決定づける重要な指針であり、移行に貢献する企業を支える役割を果たすだろう。

工業から公益事業、素材、一般消費財、テクノロジーに至るまで、さまざまなセクターで魅力的な企業を見出すことができる。ABは、ネットゼロへの移行に関わる10億米ドル以上の時価総額を持つ中国のオンショア及びオフショア銘柄を約400社リストアップしている。この中から、ネットゼロの目標に貢献し、気候変動リスクに取り組んでいる業界のリーダー企業を探し出すことで、投資家は最も有力な投資先候補を見つけることができる。それらの条件に加え、候補となる企業は、持続的で高い競争力を備えたビジネスモデル、長期的な成長を生み出す能力、魅力的な株価水準を備えていなくてはならない。

厳しいマクロ経済環境にもかかわらず、世界経済が化石燃料から脱却しようとする動きは衰えることなく続くとABでは考えている。このことは、エネルギー転換を推進する企業の成長を持続的にけん引する要因となろう。環境保護を目指す世界的な取り組みに深く関わり、強固なファンダメンタルズを持つ中国企業に焦点を当てることで、これまで投資家が見落としていた魅力的なリターンの源泉を手に入れることができる。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら
 

本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。

当資料は、2023年3月9日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 

当資料についてのご意見、コメント、お問い合せ等はjpmarcom@editalliancebernsteinまでお寄せください。

「責任投資」カテゴリーの最新記事

「責任投資」カテゴリーでよく読まれている記事

「責任投資」カテゴリー 一覧へ

アライアンス・バーンスタインの運用サービス

アライアンス・バーンスタイン株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第303号
https://www.alliancebernstein.co.jp/

加入協会
一般社団法人投資信託協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
日本証券業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会

当資料についての重要情報

当資料は、投資判断のご参考となる情報提供を目的としており勧誘を目的としたものではありません。特定の投資信託の取得をご希望の場合には、販売会社において投資信託説明書(交付目論見書)をお渡ししますので、必ず詳細をご確認のうえ、投資に関する最終決定はご自身で判断なさるようお願いします。以下の内容は、投資信託をお申込みされる際に、投資家の皆様に、ご確認いただきたい事項としてお知らせするものです。

投資信託のリスクについて

アライアンス・バーンスタイン株式会社の設定・運用する投資信託は、株式・債券等の値動きのある金融商品等に投資します(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)ので、基準価額は変動し、投資元本を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されているものではありません。投資信託の運用による損益は、全て投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金と異なります。リスクの要因については、各投資信託が投資する金融商品等により異なりますので、お申込みにあたっては、各投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等をご覧ください。

お客様にご負担いただく費用

投資信託のご購入時や運用期間中には以下の費用がかかります

  • 申込時に直接ご負担いただく費用…申込手数料 上限3.3%(税抜3.0%)です。
  • 換金時に直接ご負担いただく費用…信託財産留保金 上限0.5%です。
  • 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.068%(税抜1.880%)です。

その他費用:上記以外に保有期間に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認ください。

上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、アライアンス・バーンスタイン株式会社が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。

ご注意

アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略や商品は、値動きのある金融商品等を投資対象として運用を行いますので、運用ポートフォリオの運用実績は、組入れられた金融商品等の値動きの変化による影響を受けます。また、金融商品取引業者等と取引を行うため、その業務または財産の状況の変化による影響も受けます。デリバティブ取引を行う場合は、これらの影響により保証金を超過する損失が発生する可能性があります。資産の価値の減少を含むリスクはお客様に帰属します。したがって、元金および利回りのいずれも保証されているものではありません。運用戦略や商品によって投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なります。また、ご投資に伴う運用報酬や保有期間中に間接的にご負担いただく費用、その他費用等及びその合計額も異なりますので、その金額をあらかじめ表示することができません。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。