小型株は2025年初めに苦戦を強いられていたが、投資家の投資対象の広がりが回復を支える可能性がある。

最近は関税と貿易戦争が投資家の不安感を煽っている。その影響を免れている資産クラスがほとんどない中で、米国の小型株はとりわけ大きな打撃を受けている。一方で、株式市場では投資家の投資対象の幅が拡大する兆しが現れており、いずれは小型株の追い風となる可能性がある。

市場の大幅な変動が見込まれる中、投資家は小規模企業の短~中期的な収益力について、もっともな懸念を抱いている。中小企業は大企業に比べ景気動向に左右されやすいと考えられていることも、小型株がアンダーパフォームする一因となっている。

小規模企業は貿易の不確実性による影響が小さい可能性

しかし、現在の状況は異例である。関税や貿易政策を巡る不確実性が経済成長の鈍化を招いた可能性はあるもの、米国経済は失業率やインフレ率が低水準にとどまっており、相対的に力強く推移する中で今の状況を迎えている。

貿易摩擦はいずれ米国経済にさらに深刻な影響をもたらす可能性があるが、力のある企業は依然として利益を拡大することができ、変化する環境の下で優位性を発揮できる可能性もある。バロンズによると、米国小型株の代表的なベンチマークであるラッセル2000指数構成企業は売上高の80%近くを米国で得ており、グローバルなエクスポージャーが大きな大企業に比べ、関税による悪影響をさほど受けずに済んでいる。

確かに、小規模企業は貿易の不確実性について懸念を抱いており、それは全米自営業者連盟(NFIB)の中小企業楽観度指数がこのところ低下していることからも読み取れる。それでも、企業の楽観度指数は過去3年間よりも高い水準を維持している(図表1)。

市場の広がりは小型株に追い風となる可能性

小型株の投資家は、物色対象が拡大する兆しから安心感を得られるかもしれない。過去30年間、大型成長株への集中投資が巻き戻された最後の2度のサイクルにおいて、小型株はとりわけ好調なパフォーマンスを示してきた。それは、市場の物色対象が広がりを見せ始めていた時期だ(図表2)。ラッセル1000グロース指数を構成する上位10銘柄の時価総額は2024年末までに同指数の半分以上を占め、市場の集中度は過去最高に達した。このトレンドは反転する兆しが現れているが、集中度は依然として過去のピーク時をはるかに上回っている。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の見方では、小型株は市場における集中度の低下によって大きな恩恵を受ける可能性がある。

不確実な時期には質の高さが重要

市場が広がりつつある場面では小型株のリターンが上向く傾向があるが、転換のタイミングをうまく捉えようとするのは難しい。通常は、景気が回復し、リスク許容度が改善する環境が市場の転換を促すことが多い。

市場の広がりがいつ始まるか不明確な中でそれをうまく活用するには、質の高い企業に焦点を当てることが最善のアプローチだとABは考えている。質の高い銘柄は、経済が収縮しても下落幅が小さく、経済が拡大している場面では上値余地が大きくなる傾向がある。

株主資本利益率(ROE)など質の高さを示す要因は、市場が好調な時も低調な時も魅力的なリターンをもたらしてきた。例えば、ROEが上位5分の1に入る小型株は、景気後退時に小型株全体よりも株価が底堅く推移してきた(図表3)。また、質の低い銘柄は景気後退直後に一時的に市場をけん引する場面があるかもしれないが、ABのリサーチでは、ROEが高い企業は経済成長が加速するのに伴い、長期にわたりアウトパフォームしてきたことが示されている。

市場のタイミングを図ろうとすればコストが高くつく

最近のボラティリティを踏まえると、投資家が取るべき最善の行動は投資スタンスを維持することだとABは考えている。市場のタイミングを図ろうとすれば、小型株がいずれ勢いを取り戻した場面で悲惨な結果を招く恐れがある。実際、小型株が最も力強く上昇した5カ月を逃せばリターンが半分以下になり、10カ月を逃すと小型株の上昇局面で得られたはずの利益が事実上なくなる可能性がある(図表4)。

それでも、投資対象を選別することは重要だ。小型株は非常に広い分野に分布しているため、投資家は現在の不確実性を乗り切るためにアクティブ運用マネジャーの助けを借りるべきだとABでは考える。経験豊富な投資マネジャーはファンダメンタル分析を活用することで、正当に評価されていない銘柄を見つけ出すとともに、強力な製品群、競争力を守る広い障壁、持続可能なビジネスモデルを持つ耐性の高い企業に焦点を当てることができる。

足元の数カ月は、小型株の投資家にとって決して楽な時期ではなかった。しかし、長期的な時間軸で見れば、小型株は市場が広がりを見せる中でその底力を示してきた。小型株の投資家にとって、持続性と忍耐力が長期的な成功の鍵を握るとABでは考える。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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