人工知能(AI)の力は変革をもたらす可能性があり、その導入においては包括的な計画の策定がものを言う。
AIの時代はまだ始まったばかりであるにもかかわらず、それはまるで昔からあったイノベーションのように感じられることもある。また、この短期間における変化のスピードは驚くほど速く、組織にとって長期的なAI戦略を策定することは、たとえ困難に思えても極めて重要な意味を持つ。
出発点:リスク許容度の把握
そのためには、まずは自らの組織がAIという革新的なテクノロジーをどこまで取り入れるつもりがあるのか、見極めることから始めるのがよいとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考える。
チャンスとリスクのトレードオフは企業によって異なり、その違いが戦略にも影響する。AI戦略の策定にあたっては、組織にとって無理なく対応できる分野や許容できるリスクの種類は何かという、基本的な問いについて考える必要があり、その答えがAIツールの活用方法を決定づける。また、AIの適用範囲も重要なポイントであり、AIツールを組織全体に導入するのか、あるいは特定の部門のみに導入するのかについても考える必要がある。
さらに、組織はAIと人間の共存に関する考え方に従い、重要業務における人間と機械の役割分担についても、基準を定めなければならない。ABの考えでは、人間の専門知識とAIを融合させることは、拡張知能を実現するための有効な手段であり、映画の「アイアンマン」がそのモデルになると言えるだろう(以前の記事『Navigating Generative AI? Consider a Framework』(英語)ご参照)。それはつまり、テクノロジーに精通した人間にAI搭載型の「防具」を着用させることで、私たち人間は意思決定に役立つタイムリーかつ効果的なヒントを手にすることができるということだ。
組織的なAI戦略の策定
ABは、AI戦略の策定を通じて、以下の4つの柱を軸にした考え方が役立つことを実感した。それらはすなわち、AIを使ってどのような課題を解決するのか、技術力と人的能力をどのように構築するのか、さらには責任あるAIの利用をどのように担保するのかに焦点を当てた、4つの柱である。
1. 機会を洗い出し、優先順位を決める。AIの導入においては、その影響が明らかに大きい分野、つまりは重要な活用ケースを重視すべきである。そうした活用ケースは組織のあらゆる分野に潜んでいる可能性があり、運用パフォーマンスの改善に役立つツールや、より正確なリスク管理手法である場合もある。または、より効率的な業務プロセスやより効果的な顧客体験の実現など、様々な利用目的が考えられる。
例えば、個別株に関する基本資料の作成は、アナリストが抱える大きな悩み、すなわち情報過多の現代において「重要情報」を「投資判断に使える状態」で素早く手に入れるという課題を直接解決するものであり、優れたAIの活用事例であると言える。個別企業に関する基本情報や最新ニュース、さらにはリスクや論点を自動的に統合することができるAIは、それがなければ見過ごしてしまうかもしれない、あるいは発掘に何時間もの手作業が必要となる、投資機会の洗い出しや優先順位付けに役立つ可能性がある。
2. 基盤となるインフラと能力を構築する。AIの幅広い導入には強固な基盤が必要となる。それはつまり、安定的かつ多様な共用ツールに加えて、データ接続機能や関連リソースの存在が、組織における大規模なAIの活用を支える力になるということである。
例えばABでは、社員が安全にAIを利用できるようなプラットフォームを構築することで、顧客データやABの知的財産を保護しつつ、最新のAIツールを会社全体で活用する環境を整えた。生成AIツールは、役割が大きく異なる各部門に基本的な能力を拡大するものであり、他のシステムとの連携が必要なAIアプリケーションには、効率的なデータ接続が不可欠となる。また、開発者によるAIインフラの構築、統合、管理には、優れたアプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)も必要となる。
3. AI人材とAI活用能力を育成する。企業の社員には、AIとの共生関係を築くことが求められる。社員の多くはChatGPTのようなAIツールに慣れ親しんでおり、私生活においても好きな映画について調べたり、税金の還付に必要な手続きを確認したり、車を選んだりするために、AIツールを積極的に使いこなしている可能性がある。それでも、組織の中には運用や顧客サービス、または業務オペレーションなど、様々な専門的な役割があり、それらを支えるAIツールをうまく活用するには、ニーズに合わせたトレーニングの実施が不可欠となる。
重要なのは実践的なトレーニングであり、とりわけ同僚によるトレーニングは、日々の業務や作業にAIを活用する明確なメリットを社員が理解する上で、貴重なきっかけになると考えられる。そのためABでは、プロンプト設計の事例を共有したり、AI活用事例に関するカジュアルなコンテストを開催したり、ライブデモを実施したりするなど、社員のAI活用能力を高めるための様々な取り組みを行っている。また、ABは社員による新たな試みも後押ししており、社員はそれぞれに極めて豊かな想像力を発揮し、AIが業務に役立つ可能性を模索するとともに、AIが実際に機能しているか、専門知識や現場の経験を活かした判断を行っている。
4. 責任をもって利用する。AIの力は大きな可能性を秘めている一方、その力にはリスクも伴う。そのため組織はAIを利用するにあたり、倫理観や透明性を重視し、強力な管理体制と説明責任の仕組みを整える必要がある。強固なガバナンス体制は、そうした目的の実現に寄与し、社内における監督機能を果たすものである。そしてその任務には、例えばすべてのAI活用事例を精査し監視することで、AIツールが期待どおりのパフォーマンスを発揮しているか、さらにはそれらが本来の目的どおりに使用されているか、確認することなどがある。
また、AIツールが人間の判断や経験に取って代わるのではなく、それらを補うものとなるよう、AIの利用方針や管理体制も整えるべきであり、その必要性はエージェント型AIの出現によってさらに高まっている。例えば、AIを使ってポートフォリオの潜在リスクを洗い出すことはできるかもしれないものの、その結果に基づいて行動するかどうかの最終判断は人間が行うべきである。なぜならば、人間はAIが完全には理解していない可能性のある要素や背景についても考慮することができるためであり、このように人間を中心に考えることで、AIツールの効果的かつ責任ある利用が促進されると考えられる。加えて、データはAIにとって不可欠な要素であり、AIツールは、信頼性が高く安全なデータソースに根ざしたものである必要もある。
大局的に見れば、AIの時代はまだ始まったばかりではあるものの、AIはビジネスに必要不可欠な存在へと急速に変化しつつある。だからこそ、全体的な事業戦略の一環としてのAI戦略の構築と実行が、組織にとっては極めて重要なのである。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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