クレジット・サイクルは終盤に向かっているものの、プライベート・クレジットは今も重要な役割を果たしている。
インフレ、オルタナティブ資産への需要、そして人工知能(AI)がもたらす可能性とリスク。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)が開催した「2026年グローバルCIOフォーラム」では、これらのテーマとその潜在的な投資戦略への影響について、合わせて約2兆米ドルの資産を運用する保険会社の運用責任者たちから多くの発言があった。
このフォーラムは、130名の最高投資責任者(CIO)やシニア・アセット・アロケーター(資産配分担当者)が参加し、現在直面している重要な戦略課題を議論する場であり、そこには保険会社からの参加者も含まれる。また、そうした保険会社の運用責任者たちは、冒頭のテーマ以外にも、地政学や米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性、さらには市場の集中やバリュエーションといった問題についても懸念を示した。それでも、参加者の大半はリスク志向が強く、プライベート資産へのニーズもまた主な議論のテーマとなった。
以下は、フォーラムに参加した保険会社のCIOたちとABとの個別の議論を簡単にまとめたものである。
プライベート・アセットが最重要課題
プライベート・アセットへの投資を拡大する、あるいは少なくとも既存のエクスポージャーを維持するという点においては、CIOたちの意見はおおむね一致しており、なかでも依然として底堅い米国の経済成長とFRBの長期目標を上回るインフレを理由に挙げる声が多かった。また、プライベート・クレジットへの投資余力を確保し、その魅力的なリターンの可能性を追求するため、多くの参加者はさらなる分散を通じて、パブリック債券ポートフォリオの流動性を高めるつもりであると話していた。
その一方で、市場がクレジット・サイクルの終盤に向かっていると考えられることに懸念を示し、不安定なパフォーマンスに備えているという投資家もいた。ある参加者からは、「利回りがより高いプライベート・クレジットに投資したいと思わないCEO(最高経営責任者)はどこにもいない。ただし、同時に損失の発生を懸念してもいる」とのことコメントがあった。
それでも、ほとんどの参加者が語っていたのは、個別のストレスやデフォルトが損失につながることはあっても、その規模は比較的小さく抑えられるであろうという見方であった。またその理由としては、貸し手を保護するコベナンツ(財務制限条項)の設計においてはプライベート・レンダーが主導権を握っている点や、借り手に問題が起きた際にはプライベート・レンダーによる積極的な対応も期待できる点を挙げる声が多かった。
2026年は投資家にとって、同じプライベート・クレジットの中でも種類を区別することが、おそらく重要な意思決定になるだろう。生命保険会社の多くは引き続きミドルマーケット(中規模企業向け市場)へのダイレクト・レンディングを投資先として選好しているものの、リスク許容度や投資意欲の大きさは各保険会社によって異なる。例えば、欧州の生命保険会社の間では、ダイレクト・レンディングの中でもより高いリターンの可能性が期待できる、メザニン・トランシェやジュニア・トランシェへの関心が比較的高かった。ある参加者によれば、それは米国の保険会社が2008年にサブプライム住宅ローンのジュニア・トランシェから損失を被ったことで、そうした投資により神経質になっているためとのことである。
一方、それ以外の保険会社からは、アセット・ベースド・ファイナンスの拡大がより重要であるとの声も聞かれた。さらには、魅力的なリスク調整後リターンを追求できる可能性があり、通常は厳格な融資基準と低いリスク資本要件を有する、米国の民間(非政府系)住宅ローンも注力すべき分野に挙げられている。こうした住宅ローンは、連邦住宅貸付銀行(FHLB)への担保として利用することも可能であり、それが安定的かつ低コストの資金の確保につながる点でも魅力があるようだ。
また、商業用ローンプールや消費者ローンプールのシニア・トランシェへの投資を通じた、追加的なスプレッドの獲得機会にも関心が寄せられた。こうした投資については、独自のオリジネーション能力や資産特化型のカスタマイズ・ソリューションを有する資産運用会社と戦略的なパートナーシップを組むことで、その実行がより容易になったと言えるだろう(以前の記事『住宅ローンが保険会社のバランスシートに適している理由』ご参照)。
負債の構造が戦略を決定づける
投資戦略の考え方は負債の特性によっても異なる。損害保険会社においては、私募のストラクチャード債券の中でも、公募社債に対する超過スプレッドが期待できる、満期5年から7年の固定金利債への需要が高かった。また、一部の保険会社はより年限の長い債券にも関心を示したものの、それ以外の保険会社では、固定金利のデュレーション・リスクを取る手段としては米国国債やその他のパブリック債券を選好し、それらと併せて変動金利のアセット・ベースド・ファイナンスへの投資も考えているとのことであった。
その他にも、ミドルマーケット向けダイレクト・レンディングへのエクスポージャーを分散する目的でアセット・ベースド・ファイナンスやインフラストラクチャーへの投資を拡大すると話す保険会社があった一方、プライベート・エクイティやプライベート・クレジットのセカンダリー投資に魅力を感じている参加者もいた。プライベート・エクイティやプライベート・クレジットの償還が近づくと、生命保険会社はそれらの資産をバランスシートから外そうとすることがあり、そのためセカンダリー市場では、プライベート・エクイティやプライベート・クレジットを割安に取得できる場合が多い。
また、石油・ガス関連の証券化商品のほか、音楽の著作権使用料を裏付けとする債券など、よりニッチな資産に関心を示す保険会社もあった。そして、多くの参加者がNAVレンディング(ファンドの保有資産を担保とした融資)の拡大を検討していると語った一方で、プライベート・クレジット投資の拡大がとりわけ投資適格私募債のスプレッド縮小につながることを懸念する参加者もいた。
そうした中、ある逆張り的な参加者は、プライベート・クレジット全体をアンダーウェイトにし、パブリック・クレジット市場の中から割安で流動性の高い投資機会を発掘することに注力しているとのことであった。
リスクへの意識は引き続き高い
プライベート・アセットへの関心は高いものの、保険会社の多くはプライベート市場をめぐるヘッドライン・リスクについても懸念しており、そのため日々の資産配分決定にこれまで以上の難しさを感じているとのことでもあった。ある参加者は、「損失はまだ実現していないだけであり、いずれ発生することになるだろう」と語っている。
また、米国における政治や政策の不確実性が複雑な状況をもたらす可能性もあり、参加者の多くは市場が米国の中間選挙を意識する中、そうした難しい状況が今後も続くと考えていた。そして、FRBの独立性をめぐる懸念について言及した参加者は多く、またインフレや金利上昇の可能性に関するヘッドライン・リスクの高まりを予想する参加者も複数いた。
ある保険会社からの参加者は、「投資判断が難しいのは、現在はあらゆる政策決定が2026年11月の中間選挙に勝つことのみを目的としているように思われるため」であり、「そうした目先の問題にとらわれて資産配分を決定することや、金利のボラティリティに対処することは難しい」と話している。
地政学及びAI
一部の投資家からは地政学的な問題への懸念も示された。それは例えば、米国、中国、そしてロシアのような大国が、力を誇示することで自国の利益を追求するような、昨今の世界の風潮に対する懸念である。
また、AIについての言及も多くあり、その大半は慎重な見方を示すものであった。参加者の懸念の中心は、データセンターの建設資金を賄うために巨額の債券が発行されており、その後データセンターを維持する上でも多額の投資が必要となる点にある。ある参加者は、2000年代前半のITバブルの崩壊と現在との共通点を指摘し、データセンターの建設資金を提供する投資家には「慎重な選択」が求められると付け加えている。
特にプライベート・クレジット投資を中心としたプライベート市場への投資全般に関して言えば、資産運用会社の選定が引き続き極めて重要な要素になるという点において、参加者の意見はおおむね一致していたと言える。またその中には、パブリック市場よりもプライベート市場の方が、パフォーマンスの持続性は高い可能性があるとの意見もあった。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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