航空会社の苦境はレッサーの好機になり得る。

イラン戦争の影響で航空会社に圧力がかかっている。ジェット燃料価格の高騰が利益率を圧迫しており、紛争が長期化すれば欧州とアジアの旅行需要が減少する可能性がある。しかし、レッサー(航空機の貸し手)にとって、こうした航空会社に対する暗雲は希望の光となるかもしれない。

レッサーは航空ファイナンスにおいて独自の立場にある。固有の価値を有する実物資産である航空機を所有し、それを世界中の航空会社にリースしているからだ。この事業の経済性は、長期契約、航空機の供給不足、旅行する意欲と経済的余裕を持つ中間層の世界的な拡大によって支えられている。

レッサーに注目することで、特定の航空会社の業績に過度に偏ることなく、グローバルな航空セクターへのエクスポージャーを得られるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考えている。過去10年あまりのデータによれば、単純平均ベースで見た場合、航空機リース事業の投下資本利益率は(以前の記事『航空機ファイナンスへの投資機会』ご参照)、総じて上場民間航空会社の自己資本利益率よりも高く、かつ安定していた。

航空会社とは異なるビジネスモデル移動可能な資産

確かに、世界中の航空会社が運航停止に追い込まれたコロナ禍の時に比べれば、今回の危機の方がはるかに対処しやすいと言える。しかしそれでも、特に欧州とアジアの航空会社の多くは困難に直面している。現在、世界で運航されている航空機の約半数はリースである。中小の航空会社はほぼすべての機体をリースで調達している場合があり、一方で大手航空会社は自社保有機とリース機を組み合わせた構成となっていることが多い。いずれにとっても、リースは柔軟性を高め、全体的な経費の削減につながる可能性がある。

この点は、航空機リースが運航事業とは異なるビジネスであることを理解する上で重要である。航空会社の収益性は、燃料価格と旅客需要の変動に大きく左右される。一方、レッサーの収益性は、将来のキャッシュフローの予見性が高い長期リース契約と、世界的な航空機需要の強さに支えられている。

また、レッサーは特定の路線や空港、顧客基盤に依存しているわけではない。航空機を自ら所有しているため、軟調な市場から堅調な市場へと自由に航空機を配置転換することができる。イランでの衝突に起因する世界的な燃料供給のひっ迫が、中東上空を通過する路線を持つ欧州とアジアの航空会社にとって差し迫った問題となる中で、こうした柔軟性は重要な意味を持つ。これらの地域間の往来の減少が長期化した場合、レッサーはそうした市場から航空機を引き揚げ、北米や南米など他の市場に配置転換することもできる。

言い換えれば、レッサーは航空会社の資本構成の中に組み込まれているのではなく、自ら所有する機体を貸し出す立場にある。一方、航空会社は、自社の財務状態が著しく悪化していることを示せない限り、通常、リース契約の再交渉を申し入れることは難しい。

航空機の供給は需要に追い付いていない

それだけでなく、航空市場は深刻な構造的問題にも直面している。旅行需要の増加に対応できるだけの航空機が単純に不足しているのだ。航空機の生産は2019年に減少に転じ、推定5,000機から8,000機の不足が生じている。また、航空機は高度な技術を要する資産であるため、メーカーが不足分を補うペースで生産能力を拡大するには至っていない。この供給不足は今後何年も続くとABは予想している。

航空需要が世界の国内総生産(GDP)を上回るペースで拡大してきたことを考えると、この点は重要である。国際航空運送協会(IATA)によると、長期で見た航空需要の増加率はGDPの伸び率の約1.5倍から1.7倍になっている。イラン紛争が終結すれば、需要は速やかに回復すると見込まれる。

一方で、供給の増加は緩やかなペースにとどまる公算が大きい。アジアと中東での中間層の急速な拡大により、旅行する経済的余裕と意欲を持つ人々の数は増加している。こうした需給のミスマッチは、現在の航空旅客輸送を巡る制約が解消された後も残る可能性が高く、リース料と航空機の資産評価額を下支えする要因となる。

燃料価格の上昇は最終的にリース料を押し上げる可能性

原油価格の上昇は、直ちにレッサーの収益に波及するわけではない。通常、燃料費高騰によるコスト増は、まず航空会社の採算を圧迫する。しかし、時間の経過とともに、航空会社はそうしたコストの一部を旅客に転嫁するのが一般的である。原油価格が下落しても、運賃は一定期間高止まりする可能性があり、その間に航空会社は失われた利益の一部を取り戻すことができる。

もっとも、投資家にとって短期的に不安定な状況が続く可能性はある。また、リース料は燃料価格と金利に遅れて動く傾向があり、1年以上のタイムラグが生じる場合もある。しかし、航空機の供給が限定的で、運航コストが高く、増産能力が不足している市場環境下では、最終的にリース料は上昇し、航空機リース戦略の投資リターンも拡大する可能性が高い。

陳腐化への対応と下振れリスクの管理

もちろん、航空機のような有形資産にもリスクはつきものだ。現在、一部の航空会社は、以前なら退役を迎えていたであろう航空機の使用期間を延ばすため、追加の整備サイクルに資金を投じている。今後数年間、世界の航空機に占める次世代機の割合が高まるにつれ、レッサーは技術的陳腐化への対応を迫られるだろう。

また、航空機資産と航空会社の両方を評価するツールもレッサーには必要となる。リース先の航空会社が苦境に陥っても、性能や汎用性に優れた航空機であれば、配置転換できることが多い。一方、性能や汎用性が劣る機体を財務基盤がぜい弱な航空会社にリースしている場合には、リスク特性が異なる。

中東での紛争が予想以上に長期化した場合や、別の紛争のリスクが生じた場合、レッサーの収益は圧迫されるだろうか。確かにその可能性は排除できないが、ABはその可能性は低いと見ている。

むしろ投資家が問うべき問題は、航空機市場の構造的な需給不均衡が継続するかどうかであり、ABではその可能性は高いと考えている。だとすれば、航空機リース戦略への投資は長期的な経済成長を捉える好機であると言えるだろう。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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