ポートフォリオ構築において投資家が考慮すべきことは、安定性の維持と投資機会の追求である。
堅調な企業業績が一部の人工知能(AI)関連銘柄以外にも広がる兆しを見せたことで、2026年前半の市場は混乱を乗り越えることができた。イランにおける軍事衝突が沈静化すれば、原油価格は正常化し、インフレ圧力も弱まる可能性はあるものの、経済成長リスク、インフレ・リスク、そして政策リスクは現在、過小評価された状態にあると言えるかもしれない。そうした中、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)が注視しているのは、エネルギー価格が消費者に与える影響とAIの収益化ペースというふたつのテーマである。そして、分散されたマルチアセットのアプローチにおいては、株式のオーバーウェイトと、市場下落時の安定性、インフレに対するプロテクションを重視すべきであるとABは考える。
市場はやはり不安定ながらも底堅さを維持
2026年を迎えるにあたってのABの市場見通しは、おおむね良好なものであった。それはAIの拡大がまだその初期段階にあり、市場ファンダメンタルズの追い風が一部の巨大テクノロジー企業以外にも広がる兆しが見え始めていたことに加え、各国の中央銀行も政策金利の引き下げに傾いているように思われたためである。その一方で、市場のバリュエーションが高止まりする中、リターンのけん引役は引き続き一部の銘柄に大きく集中し、AIの収益化ペースも議論の的となっていた。
こうした背景から、2026年はより不安定な年になるだろうとABは考えた(以前の記事『2026年のマルチアセット市場の見通し:重要課題を見極める』ご参照)。そして、ふたつの連続的なショックが、そうした見方をさらに裏付ける形となった。AI投資がどれだけ早期に利益を生み出すか、投資家がより詳しい検討を進める中、AIの拡大がソフトウェア企業にもたらす破壊的な変革への懸念が強まったことで、市場は2月後半から3月にかけて大きく下落する展開となった。また、イランにおける軍事衝突の開始を受け、エネルギー価格やインフレをめぐる懸念に再び注目が集まったことも、市場下落の引き金となった。それでも、市場は比較的速やかに回復し、その背景には、とりわけテクノロジー・セクターの比率が高い市場における、力強い業績見通しの発表があったと言える(図表1)。

2026年も後半に入った今、市場はショックが一時的なものになるとみているようである。イラン紛争の沈静化とホルムズ海峡の再開に向けた期待から、投資家は短期的な混乱の先を見据え、原油市場の最終的な正常化を織り込み始めたと言える。また、原油価格は6月末時点で紛争開始前の水準を下回っており、原油市場の正常化は既に始まっているとも考えられる。そのため市場の基本シナリオは、今のところ比較的良好ではあるものの、今後急速に変化していく可能性もある。それはつまり、紛争の再激化やエネルギー供給網の新たな混乱、あるいは地政学リスク・プレミアムの再上昇がエネルギー価格を再び押し上げ、企業の生産コストや市場のインフレ見通し、さらには家計の実質所得に対する懸念を再燃させる恐れもあるということだ。
広く言えば、2026年後半に向けたABの市場見通しは、依然として強気である。2026年前半の流れを決定づけたふたつの変化は、この先も重要なパズルのピースであると考えられ、ABではそれらの影響を引き続き注視していく方針である。
イラン紛争はマクロ見通しを変化させるほどにまで長期化しているか?
原油価格は2026年前半の終わりにかけて低下したものの、その高止まりは長期に及び、企業の生産コストや市場のインフレ見通し、さらには各国中央銀行の政策に影響を与えるには十分であったと言える。そこで次の問題は、こうしたショックの影響が、主要経済の重要な構成要素である、消費者にも及び始めているかどうかである。
最も分かりやすいショックの波及経路は家計の実質所得、すなわちインフレ調整後所得への影響であり、英国や欧州の消費者はより早い段階でその痛みを感じることになりそうだ。それは英国や欧州の消費者ファンダメンタルズが、イラン紛争の開始前から既に、比較的ぜい弱な状況にあったためである。市場のコンセンサスによれば、世界経済が景気後退に陥ることはないものの、その成長率は2025年よりも低下すると見込まれている。それに対して、ABの見通しはコンセンサスよりも若干強気であり、安定した米国の国内需要やより有利な状況にあると思われる米国の消費者が、世界経済を下支えすると考えている(図表2)。

一方、世界経済を下押しするリスクが最も大きいと考えられるのは金利の水準であり、各国の中央銀行間における金融政策のかい離は、今後数カ月でさらに広がる可能性がある。米連邦準備制度理事会(FRB)は、仮に労働市場が悪化した場合、エネルギー価格の一時的な上昇には目をつむる姿勢を強めることも考えられる。それに対して、欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BOE)は、価格上昇への対応を迫られる状況に直面し、経済成長が鈍化する中、インフレとの戦いを強いられることになるかもしれない。それでも全体として見れば、世界各国の経済はエネルギー・ショックを吸収する上で、2022年よりも良好な状況にあると言える可能性がある(図表3)。

AIストーリーの次のステージを想像する
ABの見方では、AIをめぐる議論のテーマはAI投資の規模からその効果、すなわちAI投資がそれに見合った十分な生産性の向上、さらには売上や利益の成長につながるか否かに移っていると考えられる。AIサイクルはまだ投資のフェーズにあるとみられるものの、その次のステージに目を向ける投資家が増えている。それはつまり、市場のけん引役が「つるはしやシャベル」を売る企業、つまり、インフラを提供する企業だけでなく、ソフトウェア企業や電力会社など、他の分野にも広がっていくかというテーマでもある。
直近では幅広いソフトウェア株が下落したものの、そうした企業の一部は、AIストーリーの次のステージで重要な役割を果たす可能性がある。そして今後予定されているいくつかの新規株式公開(IPO)が、AIの長期的な成長への市場の投資意欲を測る、重要な試金石になるとABは考えている。その一方で、現在の状況は今のところ典型的なバリュエーション・バブルとは異なると思われるものの、既に実行された巨額の投資が利益成長の加速につながらなければ、極めて高い市場の業績期待は裏切られる恐れもあると言えるだろう。
マルチアセット・ポートフォリオのポジショニングを投資家はどう考えるべきか?
2026年の中間地点におけるABの考えは、投資家はポートフォリオにおける安定性の維持と投資機会の追求を図るため、以下の戦略を検討すべきというものである。
株式をオーバーウェイトし、なかでも米国株式を選好する。株式ポートフォリオにおいては、AI関連銘柄の比率が高く、より高い利益と収益性が期待できることに加え、経済もより安定している米国株式を選好すべきであるとABは考える。また、新興国市場や日本についても、AIバリューチェーンとのつながりがあり、一部のセクターでは業績見通しが改善していると言えるだろう。
ポートフォリオの安定性を高める。2026年前半の混乱が明らかにしたように、投資家はポートフォリオのディフェンスをただ強化するのではなく、そのための手段を多様化することも考える必要がある。例えば、オプションを利用した戦略を導入することで、市場の成長分野へのエクスポージャーは維持したまま、ポートフォリオの下落リスクを抑えられるかもしれない。また、低ベータ株式や金の組み入れもポートフォリオのディフェンシブ性を高める可能性があるほか、2026年の不安定な市場においては、米ドルへのエクスポージャーもポートフォリオの防衛に役立っている(ただし、米ドルに対するABの長期的な見通しは弱気である)。
システマティックな株式投資戦略を組み入れる。市場の集中度が高まった状態はおそらく当面続くとみられ、その結果、ポートフォリオに意図しない偏りが生じるリスクもより高まるかもしれない。システマティックな株式投資アプローチは、そうしたリスクを抑えるのに役立つとともに、ファンダメンタル運用戦略を補完するような超過収益を生み出す可能性がある。
デュレーションはアンダーウェイトしながらもインカムを追求する。スタグフレーションへの懸念や金融政策の引き締め観測を背景に、債券利回りは今後もおそらく高止まりするとみられることから、デュレーションがもたらす分散効果は低下している可能性がある。その一方で、例えば英国債券市場は金利上昇を過度に織り込んでいると思われるほか、総じて高い債券利回りはインカムを追求する投資家にとって、魅力的な投資機会を提供しているとも言えるだろう。
インフレに対する新たなプロテクションを模索する。投資可能な最大の実質資産は株式であると考えられる一方で、他の戦略の組み入れがポートフォリオの強化につながることもある。エネルギー・ショックが長引いたり、市場のボラティリティがさらに上昇したりした場合、実物資産、コモディティ、金、さらにはオプションによるプロテクションといった戦略が、ポートフォリオの構成要素として力を発揮する可能性がある。
大きな視点で見れば、規律とリスクを意識しつつ、変わりゆく状況にもダイナミックに対応できるマルチアセットのアプローチは、現在の投資環境に極めて適した戦略であるとABは考える。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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