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トランプ減税で米国企業は魅力を増すか?

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フランク・カルーソ 
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
米国成長株式運用 最高投資責任者
 

 

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2017年5月16日

 
 
 
米国のトランプ政権が公約どおりに減税を実施すれば、当面の企業収益にとってはプラスとなるだろう。しかし、本当に収益力を押し上げるかと言えば、ほとんどの企業で一過性のものとなるだろう。税制改革の勝者を見つけるには、そうした傾向の例外を探さなければならない 。
 
税制改革の恩恵を受けるとの期待が高まった銘柄は、昨年11月にトランプ氏が大統領選に勝利して以来、大幅に上昇した。税率が低くなると税引き後の純利益やキャッシュフローが拡大するので、株価は上昇するという理由からだ。特に、米国で上げる利益の多い企業は有利になると見られている 。
 
減税が実現するのか、したとしてどのような形になるのかについては、引き続き予測することが難しい。実際、減税期待が後退すると上昇相場は勢いを失った。しかし、ここでは公約が最終的に実現されるという前提のもとで考えてみよう。減税が実現したとして、投資家が次に考慮すべき最も重要な論点は「低税率は米国企業の価値を根本的に高めるのか?」ということだろう 。
 
その問いに対するアライアンス・バーンスタイン(以下、AB)の答えは、ほとんどの企業について「NO」である。長期的には間違いなく「NO」であるし、短期的にもおそらく「NO」だと見ている。なぜか?それは、資本の収益率が構造的かつ大幅に改善するには、競争に関する企業行動に劇的な変化が必要であるが、そのような変化は起こりそうにないからだ。低税率から長期的にどのような恩恵を享受するかは個々の企業により異なり、各企業の市場ポジションに大きく左右されるため、投資家にとってはどのような企業が有利になるのかを見極めることが重要である 。
 

弱肉強食の法則は不変

収益力指標のひとつである投下資本利益率(ROIC)は、ほとんどの産業で概して資金調達コストとほぼ同水準かそれを若干上回る程度である。これは、企業が既に一定の競争にさらされていることを意味している。減税は外的要因であって特定企業要因ではないため、そのような競争環境下では、長期的に見れば多くの企業が減税による恩恵をいずれ販売価格の引下げなどの形で消費者に還元することになるだろう。
 
しかし、これは収益率の高い優良企業には当てはまらない。そうした企業は往々にして強力なネットワーク効果*や、代替困難なサービス、確立されたブランドなどによる、高い参入障壁や競争優位性を持つため、安定的に高い収益性を維持することが出来る。このような優位性は容易には崩れず、税率のみの変化でそれが変わる可能性は低い。そのような優良企業は一般に価格決定力が強いため、減税によって得る偶発的な利益を消費者に還元せずに留保できるからだ。
 
*ネットワーク効果とは、「ネットワークでつながる相手先が増えるほどネットワークを使う価値が増えること」を指す。電話網やSNSなどが典型例。
 

富める者はますます富む

つまり、ある程度の値下げ圧力がかかる可能性はあるものの、収益力の高い優良企業の税引き後利益は、収益力の劣る非優良企業のそれを大幅に上回って伸びると見られる。さらに、同業種間における最上位企業と最下位企業の間におけるROICの差が大きければ大きいほど、最上位企業が減税によって享受する恩恵の度合いも相対的に大きくなると見ている 。
 
それは単純な論理で、そもそも利ざやが薄い非優良企業には、利益を上げている優良企業と比べて、価格を引き下げる余地が限られているからだ。また、税引き前利益もより小さいため、税率が低くなっても税引き後利益の増加は優良企業と比べて小さい(図表1)。
 
 
 
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優良企業が合理的に行動すれば、価格引下げは市場原理に基づく必要最低限のものに留まり、同業の下位企業よりも大幅に引き下げることはないだろう。そうなれば、優良企業にとって減税による恩恵は価格低下の影響を上回るものになる。言い換えれば、優良企業のROICは、同業他社との比較においても、自らの過去実績と比べても改善するということになる。
 
価格を引き下げる企業が現れず、全ての企業の収益が拡大するのが株式市場にとっては理想的なシナリオである。しかし、その場合でも、減税の恩恵を最も受けるのはやはり業界最上位企業である 
 

優良企業には更なる投資を

総括すると、税制改革のもたらす影響を評価するにあたっては、個別企業の市場ポジションを検証しなければ意味がないということである。低税率により生じる、おそらく短期的なものに留まるであろう収益増加に殊更に反応することは非合理的だ。(以前の記事 『利益だけを見ていても成長企業はわからない』 ご参照)でも指摘した通り、長期的に見れば、ROICが高く、かつ持続性の高い競争優位性を持つ企業が長期的にアウトパフォームする。そのため、減税が実施された際の影響に関しては、市場全体よりも、優良企業への投資の魅力が増すであろうと言える。
 
 
 
 
 
 
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

 

 

 

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