ミレニアル世代の人々は、自分たちにとって最大の問題は、それぞれのニーズや願望が同じであるかのように、1つのカテゴリーにまとめられてしまうことだとよく言う。確定拠出年金(DC)プラン加入者も、あまりにも大雑把に分類されてしまうという同じような問題を抱えている。しかし、同じ退職プランに加入しているからといって、彼らの置かれている状況や投資に関する知識が同一だとは限らない。
 
加入者の状況はそれぞれ異なっている。しかし、そうした違いがあっても、加入者は3つのグループに分類できることが、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の「年金加入者が考えていること(Inside the Minds of Plan Participants)」調査で明らかになった。実際、 投資に関する14項目の質問に対する回答から、一貫して3つのグループが浮かび上がった。それらは、「能力がある」、「熱意がある」、「保守的」なグループである。プランスポンサーは、それぞれのグループに異なる働きかけ方をすることで、エンゲージメントや信頼性を高めることができると思われる(図表1)。
 
 

 

3つの投資家グループの明確な特性

長年にわたる調査によると、この3つのグループはほぼ同じ割合で、人口統計学的な特徴だけでなく、特定の特徴を持っている。それぞれのグループの特徴には、投資スタイル、学習嗜好、エンゲージメントの度合い、リスク特性などが反映されている。
 
  • 能力がある:金融リテラシー・テストで高いスコアを獲得し、プランの口座残高が多い、自信と知識を持った投資家
  • 熱意がある: 熱意と自信はあるが、金融リテラシーのスコアは低く、おそらく年齢が若いために口座残高の少ない若い加入者
  • 保守的: 自信と投資能力は低いが、自分が思っているよりも多くのことを知っている(または必要としている)可能性がある、慎重で勤勉な貯蓄家
 

エンゲージメントの強化にはターゲットを定めた働きかけが必要

幅広い人々に対するプランのコミュニケーションは、特に、メッセージが分かりやすく、ストーリー性のあるビジュアルを使用し、常に行動を促す言葉が盛り込まれていれば、好ましいスタートとなる。しかし、退職プランへの関与やその成果を高めるには、個別のメッセージも必要となる。
 
プラン加入者とより深く関わるには、人間的なつながりを重視したメッセージが必要だが、これは幅広い人々を対象としたメッセージでは実現が難しい。ABは、加入者を投資家としての特性に基づいて分類することで、プランスポンサーが加入者との密接な関係を築き上げ、彼らの状況に応じて長期的に好ましい成果をもたらすための優れた方法を見つけ出すことができると考えている。それには、まず加入者の置かれた状況を理解し、彼らが役立つと考えるものをより多く提供することが重要になる。
 
例えば、退職後の生活に自信を持ち、投資に関する知識を身につけてもらうことは、プランスポンサーにとって継続的な課題となっている。最近はパンデミックの影響で問題が深刻化しているが(以前の記事 『COVID-19 Strained Participant Financial Wellness: Can Employers Help Them Recover?』ご参照)、その傾向はパンデミックのかなり前から見られていた。その理由の1つは、デフォルト商品や自動化の仕組みを使うケースが増えていることである。これらは多くの点で非常に便利だが、プランスポンサーによる継続的な働きかけや加入者の積極的な関与を必要としないため、将来的に予想外の事態につながる可能性がある。そのことが、退職後の収入目標を達成できないと考えたり、退職前にもっと貯蓄しておくべきだったと考える加入者が増えている理由かもしれない(以前の記事 『Retiree Hindsight Casts Light on Big DC Plan Blind Spot: Income Planning』ご参照) 。
 

能力がある投資家も支援が必要

他のグループと比較すれば、能力がある加入者は長期的な投資家で、熱心なファイナンシャル・プランナーであり、自信を持って意思決定ができる(図表2)。彼らはかなり自立しているが、それでもプランスポンサーの支援を必要とする可能性がある。
 
例えば、能力がある加入者の多くは過度に積極的な投資スタンスを取っている可能性があり、リスクを取りすぎることによる潜在的なマイナス面をタイムリーに認識する必要がある。さまざまな投資タイプのリスクとリターンに関する示唆に富むコンテンツや、市場のボラティリティがもたらす問題やインフレによる長期的な影響など、話題性のあるトピックに関する見解も役立つ可能性がある。
 
 

 

熱意のある加入者を励ましながら、プランを作る必要性を説く

熱意のある加入者は、励ましよりも指針を求めている。彼らは他のグループに比べ、貯蓄より支出が多いほか、最も多額の負債を抱え、ファイナンシャル・プランに従わない傾向がある(図表3)。彼らの自信はやや高い程度だが、それ以上に重要な点は、金融知識に対してスポンジのような渇望を持っていることである。カギを握るのは、彼らの熱意と競争心を利用して、退職時に「勝利を収める」方法を提示することである。
 
 

 
 
 
熱意のある加入者は年齢層が若く、退職がまだかなり先の人々が多いため、今すぐ行動を起こす必要はないと考えている。しかし、彼らには柔軟性があり、今すぐ適切な行動をとれば活用できる時間が増えることを示すことで、彼らの「待ち」の姿勢を積極的な行動に変えることができる。例えば、借金の返済やファイナンシャル・プランに沿ったウェルネス・プログラムは、とりわけ大きな効果を発揮する可能性がある。
 

保守的な貯蓄家は、もっと成長を目指す分野に足を踏み入れる必要

保守的なグループは、自分たちを投資家というよりも貯蓄家と考えている。彼らは市場の変動を最も嫌い、特定の投資戦略に固執しようとはしない傾向がある(図表4)。一般的には、年金の残高を守るため、マネー・マーケット・ファンドのようなリスクの低い、よりディフェンシブな投資にこだわりがちである。また、彼らは3つのグループの中で、退職後の生活に対する自信が最も低い。熱意のあるグループよりも年齢が高いにもかかわらず、口座の平均残高は同水準で、能力のあるグループの半分以下にとどまっている。
 
 

 
 
 
保守的な投資家の多くは慎重になりすぎており、老後の生活に対する自信が低いのは十分な貯蓄を持っていないと感じていることが理由かもしれない。そのため、彼らを成長を目指す分野に導く必要があるが、それには安心感を持ってもらわなくてはならない。そのためには、さまざまな投資タイプに効果的に資産を配分することについて、関連事例やガイダンスを用いて説明することが望ましい。特に、時間の経過とともに成長する可能性のある投資タイプに配分することは、彼らに大きなプラス効果をもたらす。
 
加入者の積極的なエンゲージメントと退職後の自信の向上には、極めて大きな相関関係があると思われる。幅広く働きかける取り組みを通じて多くの加入者に接触することは、効果的な出発点となる。結局のところ、加入者は退職後の収入確保、市場ボラティリティの管理、インフレに対する備えといった共通の目的を持っている。一方で、希望、懸念、自己認識、個人的な意欲などについて、それぞれの加入者に大きな違いがあることも認識する必要がある。プランスポンサーにとっては、加入者の特徴を理解し、それに基づいて思慮深いコミュニケーション戦略を構築することが、加入者のエンゲージメントを高め、ひいては成果を向上させるカギとなる。
 
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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