ハイイールド社債は、ポートフォリオのリバランスを考えている投資家にとって魅力的な選択肢かもしれない。
ボラティリティが金融市場を動揺させる中、投資家はハイイールド社債を含むリスク資産に不安を抱いているかもしれない。しかし、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)のリサーチによれば、ハイイールド社債は株式の代替として、さまざまな市場サイクルにおいて株式と同水準のリターンを、より低いリスクで提供することができる資産クラスだ。高い利回りと魅力的な信用スプレッドを特徴とするハイイールド社債は、今日の激動する市場において特に魅力的であるとABでは考える。
関税が世界貿易と物価安定を脅かしており、米国経済は成長鈍化の時期を迎えている。ここ数カ月、投資家は政策の不確実性を解き明かそうとし、過度な悲観から逃れる局面もあったが、市場は依然として不透明感に包まれている。しかし、債券投資家はこれまでも不確実性を乗り越えてきた。元本部分が毀損しない限り、クレジット戦略は、乏しい成長環境のもとでも長期的な好結果をもたらす可能性がある。
利回りの上昇は将来のリターンに好材料
まず、利回りの上昇から見てみよう。インカム志向の投資家だけでなく、トータル・リターンの最大化を目指す投資家にとっても朗報である。歴史的に見ても、最低利回りは好不況を問わず、5年後に得られる投資リターンの信頼できる予測指標となってきた(図表1)。

最後に大きなデフォルトの波が押し寄せた2020年以降、企業のバランスシートは堅調に推移している。低格付け銘柄が減少したことも相まって、ハイイールド社債の信用力は安定した。その結果、今日のハイイールド社債発行体の多くは格付けが高く、レバレッジが低く、キャッシュフローが良好で、景気循環への脆弱性も低い。需給面でも、最近の個人投資家の資金流出を機関投資家が吸収している。
高利回りがポートフォリオ全体のボラティリティ低減に貢献
信用状況が良好な点の他にも、過去、株式ボラティリティの高い時期にハイイールド社債が示したパフォーマ ンスも支援材料だ。ハイイールド社債のリスク水準は、長期的にみると株式の半分に過ぎず、近年では株式の約 5 分の 1 と更に安定していた(図表 2)。

さらに、ABのリサーチによれば、ハイイールド社債は、国内総生産(GDP)成長率がトレンドを下回る局面では、特に優れたパフォーマンスを発揮する可能性がある(図表 3)。このように、ハイイールド社債は、最近の株式に偏重して債券保有が不足気味の投資家にとって、有力な選択肢となり得るとABでは考える。

スプレッド拡大でハイイールドがエクイティをアウトパフォーム
関税のニュースが市場を襲った2025年4月、信用スプレッドの水準は約1.6倍へ拡大した。それでも、2月中旬以降の通算ではハイイールド社債は株式市場全体をアウトパフォームしている。これはハイイールド社債セクターの回復力を示す証拠であり、あしもとは潜在的な買い局面になったと考える。
スプレッドがさらに拡大する可能性があるのは事実だ。しかし、ABはこれを大きな懸念材料とは見ていない。現在、ハイイールド社債の利回りは、国債利回りの上昇とクレジット・スプレッドの拡大という両方の結果として上昇しており、スプレッドがさらに拡大することによる価格への悪影響に対して、高い利回り水準が十分なクッションとなっている。歴史的に、クレジット市場は株式の大幅な調整後に上昇する傾向があり、スプレッドがこれほど拡大している場合、ハイイールド社債が競争力のあるリターンを提供しないためには、状況がさらに急速に悪化する必要がある。
投資家は、スプレッドがさらに割安化するまで待ってから行動を起こすこともある。しかし、それは賢明な選択とは言えない。クレジット・スプレッドの変動のタイミングを正確に捉えることは現実には相当に困難なだけでなく、投資家はその間に得られたであろうインカムと投資リターンの可能性を逃してしまう。
債務不履行を回避するにはクレジット・リスクの選別が鍵
緩やかなレベルの関税は今後も続く可能性が高く、世界的な貿易摩擦が続く可能性がある。こうした緊張が最終的にどのような展開を見せるかは、予断を許さない。保守的で確率論的な枠組みを用いれば、ハイイールド社債はあらゆる成長シナリオに対応できる最良の資産クラスの一つであると考える。
この不安定な環境では、業種とクレジットの選別が重要になる。デフォルトの波が押し寄せる可能性はあるが、格付けが低い銘柄以外ではそのような事態は起きないと思われる。他方、CCC格の債券は、一般的にハイイールド社債のデフォルトの大部分を占め、特にリスクが高いと考える。しかし、CCCより高い格付けの債券でも、成長が鈍化し、市場のボラティリティが高まれば、特に景気循環に敏感な発行体はリスクが高くなる可能性がある。
これとは対照的に、高格付けでデュレーションの短い証券は今、魅力的に映る。期間の短いハイイールド社債に投資することで、投資家は金利変動リスクを軽減することができる一方、不確実性が高まる環境下で高水準のインカムと魅力的なリスク・リターンを得ることができる。
アクティブ運用はリスク管理に役立つ
市場の不確実性が今後も続くと予想される中、投資家は今日特有の難局を乗り切るために、アクティブ運用に注目すべきだとABでは考える。慎重なファンダメンタル・リサーチを通じて、アクティブ運用マネジャーはミスプライスを見極めながら、景気低迷の影響を受けにくい業種をターゲットにすることができる。
関税の悪影響と消費者心理の悪化は、特に注視が必要だ。新たな関税環境では、他の企業よりも苦戦を強いられる企業もあるだろうし、借入コストが高く、貿易摩擦が高まっている米国経済は、かつてのようにショックに耐えることはできない。FRBは、低成長環境下で関税がインフレ圧力を煽る場合、どの程度の金融緩和が可能かを見極めなければならないだろう。
しかし、このような時こそ、ハイイールド社債は他の資産クラスをアウトパフォームする可能性を秘めている。投資家にとって、ハイイールド社債は、リターンの可能性を犠牲にすることなく、ポートフォリオ全体のリスクを軽減する賢い方法であるとABでは考える。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら
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