堅調な住宅市場と連邦政府による政策支援は、米国住宅ローン担保証券(MBS)の追い風となる可能性がある。

米国住宅市場の好不況は、時として見分けが難しいこともある。足元における中古住宅在庫のひっ迫と住宅価格の安定は、住宅市場が堅調であることを示している一方、住宅の販売件数は減少しており、住宅価格の上昇ペースも鈍化基調にある。これらを総合すると、今の住宅市場はどのような状況にあるといえるのだろうか?アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の見方では、米国の住宅市場は底堅く、市場要因と公共政策の相互作用が米国MBSの追い風になると考えられる。

公共政策が政府系MBSの需要拡大につながる可能性

MBS市場を動かす可能性のある要因のひとつ目は、米ホワイトハウスによる住宅政策である。トランプ大統領は2026年1月、住宅ローン金利の引き下げを目的として、2,000億米ドル相当の政府系MBSを購入するよう政府支援機関(GSE)のファニーメイとフレディマックに指示した。その結果、政府系MBSのスプレッド(米国債に対する上乗せ利回り)は、その後まもなく縮小する展開となった。

一方、その波及効果は関連セクターにはまだ十分に及んでおらず、非政府系MBSと政府系MBSのスプレッドの差は現状、過去の平均を依然上回っている(図表1)。それでも、こうしたゆがみを投資家が捉えるにつれ、非政府系MBSのスプレッドは今後徐々に縮小していくとABは見ており、非政府系MBSにはむしろ価格上昇余地があると考える。

トランプ政権はまた、住宅ローン金利を下げるとともに、住宅購入をより手の届きやすいものとするため、別のアイデアもいくつか打ち出している。そうしたアイデアの中には、例えば住宅ローンに早期返済ペナルティを導入することや、借り手が既存の住宅ローンを別の住居に移行できるようにすること、さらには退職資金を住宅購入に充てられるようにすることや、住宅売却時の譲渡益非課税枠を拡大することなどがある。

仮に実現した場合、これらのアイデアは住宅市場、ひいてはMBSへの追い風となる可能性がある。その一方で、住宅政策によって住宅の値ごろ感がどこまで改善するかについては疑問もあり、いわゆる「ロックイン」効果の存在がその主な理由となっている。

「ロックイン」効果とは、住宅所有者の多くはパンデミック期に超低金利の固定金利型住宅ローンを借り、今もそれに縛られていることから、身動きが取れない状況にあるということを指す。当時の住宅ローン金利は極めて低く、そうした低金利の住宅ローンを抱えた住宅所有者が住宅を売却しようと考えることはほとんどなく、そのため中古住宅在庫が低水準にとどまり(図表2)、住宅価格が維持されてきたのである。

こうした理由もあり、2026年の住宅価格については、横ばいか若干の上昇をABでは予想している(図表3)。

それによって住宅の値ごろ感が大きく改善することはないかもしれないものの、良好な住宅市場のファンダメンタルズはMBS投資への追い風となる可能性がある。なぜならば、住宅価格の高止まりは、LTV比率(不動産評価額に対する借入金の比率)の低下というかたちで住宅所有者の純資産を増加させることが多く、デフォルトの発生確率の低減につながるためである。

加えて、既存の住宅ローン金利が低いということは、借り換えや期限前返済リスクが抑えられていることも意味する。ABの見方では、期限前返済はやや増加すると考えられるものの、借り手の大半は5%よりも低い金利での借り換えを望んでおり、住宅ローン金利が再びそうした水準まで低下することは当分ないと思われる。

一方、変化のタイミングを見極めるのは難しく、仮に住宅ローン金利が低下し、住宅の値ごろ感が改善するようなことがあれば、住宅在庫は一時的に増加する可能性もある。それでも、それによって市場が活性化し、それまで様子見をしていた住宅所有者が再び住宅の買い手になるようなことがあれば、住宅在庫の水準も再び低下し、それが住宅価格とMBSの下支えになるとABは見ている。

もちろん、金利以外にも重要な要素はある。例えば、住宅建設業者は戸建て住宅と集合住宅のいずれについても建設を抑えており、そうした動きは住宅供給の増加を妨げてきたと考えられる。

FRBの利下げが高めるインカム需要

ABの分析によれば、金融政策もまたMBSの追い風となる可能性がある。今回のサイクルでは合計175ベーシス・ポイントの利下げが既に実施され、米国の政策金利は3.5%を若干上回る水準にまで引き下げられた。ペースこそ鈍化する可能性はあるものの、今後もさらなる利下げが見込まれることから、米国のキャッシュ利回りはいずれ3%に近い水準まで低下するとABは見ている。

その結果、インカム志向の投資家は苦境に追い込まれる可能性があると言える。なぜならば、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期間中におけるキャッシュのリターンは、利下げ開始時点の利回りよりも低くなるのが通常であり(図表4)、より確かなインカムの源泉が必要になるためである。

ABの見方では、こうした環境でこそMBSはその強みを発揮すると考えられる。MBSの利回りは、ほぼどのような環境においてもキャッシュより高く、むしろハイイールド社債のようなよりリスクの高い資産と比べても遜色がない(図表5)。また、キャッシュの場合とは異なり、利下げ開始時点のMBSの利回り水準は、その後の中期的なリターンを予測する上で、信頼できる指標となることが多い。

トランプ政権が提案している住宅政策のうち、いくつが実際に法制化されるかはまだ分からない。それでも当面は、公共政策と住宅市場の堅調なファンダメンタルズによる相乗効果が、MBSの投資家にとって好ましい追い風をもたらすとABは考えている。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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