市場環境の変化は投資のチャンスを浮き彫りにする。

中東地域の緊張がくすぶり続け、世界経済がエネルギー価格の高騰に苦しむ中、ハイイールド社債という資産への投資家の関心は下がっているかもしれない。しかしながら、投資家は今こそハイイールド社債に目を向けるべきであるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考える。

ハイイールド社債のバリュエーションは依然として魅力的であり、投資開始時点の利回りは高く、やや悪化はしたものの企業ファンダメンタルズもまだ比較的良好な水準にある(以前の記事『2026年のクレジット市場見通し:大規模AI投資が加速する格差の拡大』ご参照)。また、堅調な需要に対して新規の発行は少なく、需給環境も引き続きハイイールド社債の追い風となっている。今日のような不安定な環境について言えば、ハイイールド社債はこれまで、経済の低成長局面において堅調を維持し、市場の下落局面で株式をアウトパフォームしてきたのである(以前の記事『ハイイールド社債:ボラティリティの高い環境でこそ真骨頂を発揮する』ご参照)。

こうした有利な環境下、今日のハイイールド市場においては、5つの投資機会とさらに1つの要注目分野が生まれているとABは見ている。

1. BB格債とBBB格債のクロスオーバー

ハイイールド社債のスプレッドは、直近の拡大を加味しても、歴史的にはまだタイトな水準にあると言える。それでも、スプレッドがこれほどタイトな状況下では、投資家は利回りをほとんど、あるいはまったく犠牲にすることなく、より高格付けの社債に投資をすることができる。こうした状況をよく表しているのが、BBB格社債とBB格社債の利回り格差であり、その差は過去に比べて低い水準にある(図表1)。

現状、BBB格債の約40%がBB格債並みの利回りで取引されており、投資家はBB格社債と同程度のインカムをより信用力の高い社債で追求することができる(図表2)。

あしもと、質の高い投資機会は、投資適格からハイイールドに格下げされた「フォーリン・エンジェル」のユニバースにも広がっている。信用格付けの変化動向は、現状、格下げが増える方向に傾いている。格下げ件数が格上げ件数を上回っていることから、「ライジング・スター」よりも「フォーリン・エンジェル」の方が多くなっている。そして過去を見ると、「フォーリン・エンジェル」はハイイールド市場に移行した後、他のセクターをアウトパフォームする傾向がある。

2. 確信度の高いCCC格債の銘柄発掘

ハイイールド・ユニバースの中でも最も格付けが低いセクターに投資をする際には、最も厳しいデューデリジェンスが必要になるとABは考える。現状、CCC格債の約4分の1がディストレスト水準、すなわち1,000ベーシス・ポイント以上のスプレッドで取引されており、デフォルト・リスクが高い状態にあると考えられる。その一方で、大半のCCC格債は利回り水準がクレジット・リスクに見合うかというと不十分であり、そのため、魅力的な投資機会を見極める上では、リサーチに基づく強い確信が必要になると言える。逆に考えると、個別銘柄のクレジット分析を深掘りすることによりCCC格からも割安な銘柄を特定することは、数こそ少ないものの確かに存在しているとみている。

3. 米国循環消費財セクター

エネルギー価格の高騰にもかかわらず、米国の個人消費は底堅さを維持しており、特に高所得世帯ではその傾向が強い。こうした消費者の存在は、他のセクターよりもゲームやホテル、あるいは小売りなどの循環消費財セクターに有利に働くと考えられる。また、そのような循環消費財セクターのスプレッドは、非循環消費財セクターよりも拡大した水準にあり、バリュエーションの面でもより魅力があると言えるだろう。とはいえ、投資家は銘柄選択を徹底する必要もある。

4. 通信及びテクノロジー・セクター

通信及びテクノロジー・セクターは構造的な逆風にさらされており、リスクに見合うスプレッド水準との評価は依然として難しいことから、バリュエーションは部分的に割高な水準にあるとABは見ている。通信サービス企業は契約者数の減少と重い債務負担に苦しんでおり、テクノロジー企業の多くもまた、成長が減速し、支払利息が増加する中、それでも負債を拡大させている。そのためこれらのセクターには慎重な姿勢が求められるとABは考える。

その一方で、ソフトウェア企業の中には例外も存在するかもしれない。ソフトウェア・セクターはここ最近、人工知能(AI)がもたらす破壊的な変革への懸念を背景に大きく下落しており(以前の記事『ソフトウェア株の大幅な下落:構造的なリスクとノイズを区別する』ご参照)、こうした市場のゆがみは、厳選された銘柄選別により、割安な債券を組み入れるチャンスになり得ると考えられる。

5. 北米及び南米のミッドストリーム企業とE&P企業

エネルギー価格が高止まりする中、ミッドストリーム企業と独立系のE&P(探鉱・開発・生産)企業については、どちらも詳細な検討に値すると考える。ABでは、中東の供給混乱の影響を受けにくい、北米及び南米のミッドストリーム企業を選好しており、それらの企業は原油価格の上昇やエネルギー需要の増加に加え、比較的緩い米国の規制環境の恩恵を受ける可能性もある。

また、独立系のE&P企業にも注目しており、そうした企業たちは新型コロナウイルスのパンデミック以降、時間をかけてバランスシートの強化に取り組んできた。その上さらに、エネルギー・セクターにおけるM&A活動の増加もまた、コーポレート・アクションの発生に伴うリターンの上昇を債券投資家にもたらす可能性がある。

もう1つの選択肢:欧州ハイイールド社債

ハイイールド市場への投資機会は世界中に広がっており、なかでも欧州ハイイールド社債市場の魅力は相対的に際立っていると考えられる。米ドルベースの投資家から見ると、米ドルへの為替ヘッジを行った欧州ハイイールド社債の最低利回りは、平均8.1%となっており、米国ハイイールド社債よりも70ベーシス・ポイント高い(図表3)。また、欧州ハイイールド社債市場は米国よりも高格付けセクターの比率が高く、米国に比べてBB格債が多い一方でCCC格債は少ない状況にある。

それでも、銘柄選択は引き続き極めて重要である。欧州の経済成長見通しは米国よりも厳しい可能性があり、景気サイクルの逆風を受けにくいディフェンシブな銘柄に着目する必要があるだろう。

ハイイールド社債の運用において、現在のキーワードは「選別」であると言える。今日の投資環境は良好であると同時に複雑でもあり、こうした時こそ、規律に基づくアクティブな銘柄選択が最も重要になり得るのである。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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