リスクが変化する一方、投資機会も広がっている。この環境をいかにチャンスとして生かすべきか。

債券市場でインフレ圧力が完全に払拭されていなかったところに、イラン戦争が勃発し、オイルショックをもたらした。中央銀行が利下げに向かいつつあったタイミングで、エネルギー価格の高騰によってインフレ懸念が再燃し、投資家は長期債保有のために求めるリターン水準を見直さざるを得なくなった。その結果、世界的に長期金利の上昇とイールドカーブのスティープ化が一段と進んだ状況だ。

紛争により供給が混乱し、主要海上輸送ルート周辺で緊張が長期化するリスクを織り込む格好で、原油価格は急上昇した。これがインフレ期待を押し上げて金融政策運営は一段と難しさを増している(以前の記事『What Does Higher Inflation Mean for the US Economy and Fed?』(英語)ご参照)。慎重に金融緩和へとかじを切っていた中央銀行は今や、再燃した物価上昇圧力と景気減速という、相反する要因の間でバランスを取らざるを得ず、政策見通しは不透明になっている(以前の記事『FRBの新たなトップ、政策方針を提示』ご参照)。

しかし、この調整はインフレだけにとどまらない。このショックにより、投資家は巨額の財政赤字と国債発行の増加に一段と関心を高めている。特に債券の長期年限では、国債の大量供給に対して需要が追いついていない状況にある。一方、人工知能(AI)インフラへの支出拡大は、米国の長期的な国民総生産(GDP)成長率、さらには中立金利に対する市場の期待を押し上げている(その期待が実現するかどうかは、なお見極めが必要である)(以前の記事『AIは持続的な成長をもたらすか?その真価にはさらなる検証が必要だ』ご参照)。

短期的な成長期待が失速しているにもかかわらず、利回りは急上昇しており、特に米国ではそうした動きが顕著だ。しかしながら、オイルショックによって短期的なインフレ懸念が高まった一方で、長期的なインフレ期待は比較的安定している。このことは、今回の金利上昇の主因が、実質利回りの上昇によるものであり、投資家が長期債の保有リスク(デュレーション・リスク)に対し、より大きな対価を求めていることが示唆されている。

クレジット市場では、発行体間の利回り格差が大きく拡大している。特に、原油の輸出国と輸入国(以前の記事『気候を巡るパワーゲーム:エネルギー・地政学とリスクの再評価』ご参照)、再生可能エネルギーを安価に確保できる発行体と変動の激しい化石燃料コストに影響される発行体(以前の記事『再生可能エネルギーが左右する新興国の投資機会』ご参照)、AIによる投資拡大の恩恵を享受できる発行体とそうでない発行体との間には(以前の記事『新興国債券:AIディスラプションの次なるフロンティアか』ご参照)、顕著な格差が見られる。

ポートフォリオの強化に向けた6つの戦略

地域間やセクター間、企業間のパフォーマンス格差の拡大が、投資家にチャンスをもたらすとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考えているが、一方で、こうした状況下では慎重さが求められる。機動的なデュレーション管理や、グローバルな分散投資、金利リスクと信用リスクのバランスを重視した戦略は、不確実性が増した今日、引き続き有効性が高いとみている。こうした戦略は、アクティブ運用の投資家が市場のボラティリティを吸収しつつ、新たな投資機会の出現を捉える上で役立つ(以前の記事『ポートフォリオ最適化ツールの活用により高度化する債券運用』ご参照)。

デュレーション源泉の分散:足元の環境を踏まえると、債券をポートフォリオの中核資産として維持し、デュレーションを確保することが重要だとABは考えている。もっとも、いったん構築したデュレーションのポジションをそのまま放置することは望ましくない。利回りが上昇(債券価格が低下)した際にはデュレーションを長期化し、利回りが低下(債券価格が上昇)した際にはデュレーションを短期化することが望ましい。また、忘れてはいけないのが、足元の高い利回りは、債券価格の下落に対するクッションにもなるということである。

加えて、ABの考えでは、幅広い地域の債券へ投資することでデュレーションを確保することも必要だ。デュレーションをグローバルに分散すれば、債券ポートフォリオの土台をより強化できる可能性があるためだ。またカーブ・ポジショニング(イールドカーブ上の年限別構成)も、金利変化にポートフォリオがどのように反応するかを左右する重要な手段となる。

国債は依然として最も純粋に金利変動への感応度を確保する源泉であり、ポートフォリオの流動性維持にも欠かせない。それでも、デュレーションを得る方法はほかにもあり、例えばエージェンシー住宅ローン担保証券などの証券化市場にも目を向けることで、投資家はデュレーションと追加的な利回りを同時に手にすることができる(以前の記事『好環境にある米国MBS投資に注目する』ご参照)。さらにABの分析では、証券化商品は一般的にエネルギー関連の混乱による影響を比較的受けにくい。

金利とクレジットのバランスを意識:安定性とインカムを兼ね備えた債券ポートフォリオを構築するには、金利とクレジットの両セクターにバランスよく資産配分することが重要だとABは考えている。最も効果的な戦略の一つは、国債をはじめとする金利感応度の高い資産と成長重視のクレジット資産を組み合わせ、1つのポートフォリオの中で機動的に運用する方法である。

この組み合わせは、テールリスク(確率は低いが発生すると大きな影響を及ぼすリスク)を軽減し、マクロ経済要因へのエクスポージャーを分散する効果がある。分散効果を発揮する異なる資産を組み合わせることで、金利リスクと信用リスクのバランスを管理しやすくなり、市場環境に応じてデュレーションとクレジットの割合を迅速に調整することも容易になる。

質の高いクレジットを重視:クレジット・スプレッドはイラン紛争の激化以降、それまでの極めてタイトな水準からは若干拡大したものの、依然として落ち着いた水準に収まっている。とはいえ、将来リターンの予測指標としては、スプレッド単独よりも利回り水準の方が信頼できるとABは考えている(以前の記事『ハイイールド社債:ボラティリティの高い環境でこそ真骨頂を発揮する』ご参照)。その点において、多くのクレジット関連セクターの足元の利回りは、魅力的な水準にあるとみている。

しかしながら、クレジットの分野では、投資対象の選別が鍵になるとABは考えている。地政学的動向や、AI主導の設備投資サイクルといった構造的テーマが、業種ごとに異なる投資機会や市場の不確実性、パフォーマンス格差をもたらしている。景気循環セクターや、デフォルトの大部分を占めるCCC格付け企業、さらには低格付けの証券化商品については、ぜい弱性が最も高いことからアンダーウェイトが妥当であると考えている。一方で、ハイイールド社債(以前の記事『ハイイールド市場における5つの投資機会』ご参照)や新興国債券(以前の記事『新興国債券:AIディスラプションの次なるフロンティアか』ご参照)、さらには証券化商品など、格付けの異なる比較的高い利回りの資産を組み合わせることで、ポートフォリオの分散をさらに高めることができる。

ハイイールド債による株式ボラティリティの抑制:過去の実績を見ると、ハイイールド債は株式よりもはるかに低いボラティリティで株式並みのリターンを上げてきた。中でも経済成長率がトレンドを下回る局面では、総じて株式をアウトパフォームしてきた。そのためハイイールド債は、期待リターンを大きく犠牲にすることなく、株式保有に伴うボラティリティを抑えたい投資家にとって、有力な補完資産になるとみている(以前の記事『バランスの追求:ハイイールド社債の組入れによる株式ボラティリティの低減』ご参照)。

システマティックなアプローチを活用:足元の市場環境では、銘柄選択を通じたアルファ(超過リターン)の獲得機会も拡大している。そうした機会を捉える上で、アクティブなシステマティック債券運用が役立つ可能性がある(以前の記事『クレジット市場での銘柄間格差拡大〜システマティック債券運用に好機』ご参照)。システマティック運用戦略は、伝統的な投資手法では効率的に捕捉することが難しい幅広い予測ファクターを利用した運用である。同戦略と伝統的なアクティブ運用戦略とでは、パフォーマンスの源泉が異なることから、両者のリターンは相互補完的な関係にあると考えられる。

インフレに対する防御:ポートフォリオ構築に際しては、インフレ対策向けの組み入れ比率の引き上げを検討すべきだと考える。将来的にインフレが加速するリスクと、その甚大な影響に備えるためだ。

混乱した環境下で規律を維持

上記のような戦略の組み合わせにより、より強固な債券投資の基盤を構築できるとABは考えている。デュレーションの源泉の分散、金利とクレジットのバランスの取れた配分、そして十分な流動性の維持により、投資家は不確実性を吸収しつつ、新たに生じた投資機会を機動的に捉える柔軟な運用が可能になるだろう。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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