ハイイールド社債の意外な万能性が、株式のボラティリティという投資家の悩みを和らげるかもしれない。
2025年4月を底に株式市場の上昇が続いている。とりわけ高リスク株やテクノロジー銘柄の人気が高いものの、そうした中には収益性が定かでない企業も含まれる。一方、経済成長は鈍化しており、貿易をめぐる不透明感もいまだ解消していない。ポートフォリオの見直しやリスク削減を図る投資家にとって、ハイイールド社債は株式を補完する魅力的な投資対象になり得るとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考える。
ハイイールド社債:ポートフォリオのボラティリティ低減に寄与する可能性
株式市場の強さは誰の目にも明らかだ。テクノロジー銘柄の比率が高い、ナスダック総合株価指数の過去1年の上昇率は20%を超えており、その一因は人工知能(AI)をめぐる熱狂にある。AIには企業の生産性を高め、コストを抑える力があり、その可能性は無限とも思われる(以前の記事『【ABIQ】AIの加速度的な普及をサステナビリティの視点から検証する』ご参照)。しかし、企業のAI導入率が高まる中、AIの持つ可能性を企業がどこまで利益に変えられるかは不透明なままだ(以前の記事『株式市場の見通し:警戒から安心へ?』ご参照)。ABの見方では、一部の銘柄のバリュエーションは、既に割高な水準にある可能性がある(以前の記事『AIブーム:バブルとチャンスの違い』ご参照)。
株式投資自体は続けながらも、高リスク株を削減したいと考える投資家は、株式から投資適格債券への入れ替えを図ることが多い。確かに、国債やクオリティの高いクレジット資産を分散されたポートフォリオに組み入れる意義はあるものの、特に足元のような市場環境下では、投資家はハイイールド社債についても検討してみるべきであるとABは考える。
債券の世界において、ハイイールド社債のリスクが低いと言われることは通常ない。それでも、資産配分全体における株式の補完役として見れば、ハイイールド社債にはポートフォリオのボラティリティを抑える力があると考えられ、その理由は以下のとおりだ。
ハイイールド社債はこれまで長い間、株式よりもはるかに低いリスクで、株式並みのリターンを上げてきた。ブルームバーグ米国ハイイールド社債指数の2000年以降の年率平均リターンは7.6%、同ボラティリティは7.1%となっている。一方、同じ期間のS&P 500株価指数を見ると、年率平均リターンは9.8%であったものの、同ボラティリティは13.8%と、ハイイールド社債の約2倍に上る(図表1、左図)。こうしたボラティリティの差は、特に市場の下落局面で強みを発揮し、ハイイールド社債のドローダウン(高値から安値までの下落率)の大きさはこれまで、株式の44%に抑えられてきた(図表1、右図)。

株式ポートフォリオの一部をハイイールド社債に入れ替えることで、投資家はリターンの犠牲を比較的小幅に抑えつつ、ポートフォリオ全体のボラティリティを大幅に低減できる可能性がある。さらに、ハイイールド社債と株式を比較するにあたり、あしもとのリターンとボラティリティのバランスは、債券利回りの高さと経済成長の減速を背景に、通常よりもハイイールド社債が魅力的な環境にあるとABは考える。
さらなる魅力:債券利回りの高さと経済成長の減速
米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和姿勢への転換にもかかわらず、債券利回りは高止まりを続けている(以前の記事『債券市場の見通し:収穫期に向けた6つの戦略』ご参照)。現在、ハイイールド社債指数の最低利回りは6.7%と、歴史的な高水準にある。トータル・リターンを重視する投資戦略において、高い債券利回りは魅力的なインカムの源泉となり得る。しかもそれは、リターン全体を犠牲にすることを意味しない。実際、ハイイールド社債の最低利回りはこれまで、その先5年間のリターンを示唆する、信頼できる予測指標として機能してきた(図表2)(以前の記事『ハイイールド社債:ボラティリティの高い環境でこそ真骨頂を発揮する』ご参照)。

投資家は現状、高リスク株をハイイールド社債に入れ替えることで、それまでと同じかそれよりも高いリターンを長期的に得られる可能性があるとABは見ている。ハイイールド社債はこれまで、経済の低成長局面で株式をアウトパフォームしており、現在はそうした局面の入り口にあると言えるだろう(図表3、左図)。また、歴史的に見て、現在のような高い株価収益率(PER)は、長期的には平均よりも低い株式リターンにつながっており(図表3、右図)、投資家がバリュエーションの上昇を懸念するのも当然と言える。需要のさらなる低迷と世界貿易の落ち込みを前提とすれば(以前の資料『世界景気バロメーター:2025年10-12月期』ご参照)、ハイイールド社債をポートフォリオに組み入れるには今が絶好のタイミングかもしれないとABは考える。

スプレッドの水準が気になる投資家にとっても、あまり心配することはないというのがABの見方だ。スプレッドはタイトであるものの、利回りの水準は依然として高く、利回りに占めるスプレッドの割合は小さい。さらに、ABの分析によれば、ハイイールド・クレジット市場は比較的健全な状態にあり、投資家はBB格債からBBB格債への入れ替えを通じて、利回りをそれほど犠牲にすることなく、ポートフォリオのクオリティを高めることもできる。
難局を乗り切る万能な投資対象
ポートフォリオのリバランスを考える投資家は、リスクを意識する必要があり、それは特にハイイールド社債のように多様で複雑な市場に当てはまる。とりわけ低格付け債市場では、格下げ件数が格上げ件数を上回っており、インタレスト・カバレッジ・レシオやEBITDA(利払い前、税引き前、償却前利益)マージンも悪化している。それでも、信用リスクの管理に長けたアクティブ運用マネジャーであれば、ファンダメンタルズの変化と信用の引き締めという混乱を乗り越え、最もデフォルトしやすい発行体を避けることはできる。
バランスを追求するポートフォリオにとって、株式は今後も必要不可欠な構成要素であると言える。その一方で、ハイイールド社債には、インカムの確保とより高い長期リターンの獲得を追求しつつ、株式がもたらすリスクを和らげる力があるとABは考える。株式市場の力強い上昇を受け、ポートフォリオのリバランスやリスク削減を検討している投資家にとって、ハイイールド社債は有力な投資対象となる可能性がある。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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