クレジット・スプレッドの格差が拡大した債券市場では、システマティックなアプローチによるアルファの創出に目を向けるべきである。

足元のクレジット市場は平均スプレッドがタイトな水準にあり、一見魅力がないように思えるものの、その一方で発行体間のスプレッドの格差は異例の拡大を見せている。こうした市場の二面性はリターンの源泉に変化をもたらすものだ。それはつまり、クレジット・ベータ(クレジット市場全体のリスク)からのリターンが期待できない環境下では、個別銘柄選択によるアルファの追求に注力すべきということである。そうした環境下では、システマティックなアプローチがひときわ存在感を放つと考えている。

足元のクレジット市場はリターン・ドライバーの変化を示唆

足元の投資環境は地政学的リスクがエネルギー価格の高騰に繋がってしまい、クレジット・スプレッドは依然としてタイトな水準にとどまっているにもかかわらず、確信を持って将来の見通しシナリオを立てることが難しい。債券投資には引き続き下支えがあると思われるものの、今は大きなクレジット・リスクを取ることでアルファを追求する局面ではないというのがアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の考えだ。

その一方で、いくつかの要因から発行体間のスプレッド格差は広がっており、個別銘柄選択の重要性が高まっている。なかでも、競争環境の破壊的な変革や継続的な資金流出と設備投資ニーズが高まる人工知能(AI)の影響を受けるセクターでは、個別銘柄選択が特に重要となる(以前の記事『AIインフラの拡大をクレジット投資の好機とするために考慮すべきポイント』ご参照)。またそうした理由から、発行体間のリターン格差もクレジット・セクター全体で今後広がっていく可能性が高く(以前の記事『2026年のクレジット市場見通し:大規模AI投資が加速する格差の拡大』ご参照)、個別銘柄選択によるアルファを追求する上での好機が訪れているとABは考える。

そうした好機を捉えるための最善の方法は、ボトムアップによる個別銘柄選択を重視した投資戦略を活用することであり、システマティック債券投資もそのひとつであると言えるだろう(以前の記事『債券投資の新たなフロンティア:システマティック戦略』ご参照)。システマティックなアプローチにおいては、伝統的な投資戦略とは異なるパフォーマンスの源泉が重視されている。そのため通常の環境下においても、システマティックなアプローチが生み出すリターンは、伝統的な債券投資戦略によるリターンを補完し、債券ポートフォリオの分散を高める役割を果たす。加えて、個別銘柄選択が重視される足元の市場環境下では、システマティック戦略そのものが持つ力がより発揮されやすいと考えられる。

隠れた投資機会を明らかにする細かな視点

市場全体の値動きを考えるならば、クレジット・スプレッドの平均値は重要な指標であり、債券市場のリスクに対してどれだけのリターンが期待できるかを判断する材料となる。しかしながら、個別銘柄選択による期待アルファの大きさを予測する上では、スプレッドの平均値を見るだけでは不十分である。

例えば、米国ハイイールド社債指数構成銘柄のスプレッドを見てみると、2014年の半ばには平均値付近への多くの銘柄が集中していた一方、足元では発行体間におけるばらつき(分散)が大きくなっており、クレジット・スプレッドの平均値はどちらも似たような水準にあるものの、状況は大きく異なっている(図表1)。

こうしたばらつきの全体像は、指数構成銘柄のスプレッドの標準偏差を平均スプレッドで割った、1つの数値で表すことができる。ブルームバーグ米国ハイイールド社債指数におけるクレジット・スプレッドのばらつきを示す同数値は、2014年の時点ではわずか0.75と、アクティブな個別銘柄選択を行うには選択肢が乏しい状況を示していた。一方、同数値は現状、2014年の4倍超の3.29となっており、アクティブな個別銘柄選択の余地が大きいことを表している。

このような分析を2012年まで遡って行うことで、今日の投資環境における課題とチャンスが明らかとなる。それはつまり、ハイイールド社債の平均スプレッドは2012年以降でほぼ最低の水準にある一方、スプレッドのばらつきは過去の危機的な局面を除けば歴史的に最も大きい水準にあるということだ(図表2)。

また、投資適格社債のスプレッドについても、現時点ではハイイールド社債ほど顕著なばらつきは見られないものの、ファンダメンタルズの悪化にAIの影響が加わることで、2026年は特にBBB格を中心にばらつきが拡大していくとABは見ている。

スプレッドのばらつきとアルファの関係性

足元の平均スプレッドがタイトであることは、単純にクレジットのベータをコントロールする戦略で高いリターンを得ることが、今の状況では相対的に難しいことを示唆している。投資開始時点の平均スプレッド水準とその後1年間のハイイールド社債の対米国債平均超過リターンの関係を調べると、スプレッドがタイト化したタイミングでスタートした投資期間では、ハイイールド社債の超過リターンが落ち込む傾向があることが分かる(図表3)。

また同様に、スプレッドがタイトな水準にある局面では、伝統的なアクティブ運用マネジャーのリターンにおいて、アルファが占める割合が高まることを過去のデータは示している(図表4)。

目的に合ったツールの選択

クレジット・スプレッドがタイトな水準にある現状を踏まえ、市場はアクティブな個別銘柄選択がより効果を発揮しやすい局面に入っている可能性があるとABは考える。そうした中、個別銘柄選択を重視するのであれば、例えばシステマティック投資など、極めて専門的なアプローチが投資家には求められるとも言える。

システマティックな投資戦略は、超過リターンの予見性があるファクターを利用して、投資判断を行うものである。市場のあらゆる債券を定量的なプロセスによってスコアリングし、超過リターンの予測力を高めるようランク付けした後、スコアの高い債券を選び、アルファの獲得を追求する戦略である。したがって、システマティックな投資戦略の本質は、個別銘柄選択によるアルファの追求にあると言えるだろう。

こうしたシステマティックな投資手法は伝統的なアクティブ運用アプローチとははっきり異なるものであり、後者は通常、デュレーション戦略に加えてクレジット市場全体へのエクスポージャーやセクター配分などに対してより大きなリスクを配分する傾向がある(図表5)。現在のような環境下では、1つの戦略に大きなポジションを取るよりも、システマティックなアプローチが何百もの銘柄に投資をするように、細かなポジションを積み上げる方がより良い結果につながる可能性があるとみている。

個別銘柄選択が重視される市場における補完的なリターンの創出

その上、システマティックなアプローチが重視するパフォーマンスのドライバーは他の戦略とは異なっており、そのためシステマティック戦略は、伝統的なアクティブ戦略とは特性が異なる、補完的なリターンを生み出す可能性が高い。

システマティック戦略が個別銘柄選択によって生み出すアクティブ・リターンは、ベンチマークの値動きや主なリスク・プレミアのどちらとも相関が低くなるよう設計されている。そのためシステマティック戦略は、債券ポートフォリオの分散を効果的に高めることができると考えられるのである。

高度なシステマティック戦略は、様々な市場環境において高い超過リターンを生むとともに、伝統的なアクティブ戦略を補完するようなリターンを投資家に提供することができるとABは考えている(以前のリサーチペーパー『システマティック債券運用の到来』ご参照)。ただそうした中でも、システマティック戦略がひときわ存在感を放つのは、クレジット・ベータからは高いリターンが期待しにくいが、個別銘柄選択による潜在的なアルファが大きい現在のような環境であると言えるだろう。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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