人工知能(AI)の台頭は、新興国における勝者と敗者を置き換えるする可能性がある。

AIにおけるリーダーシップは、もはや先進国の独占ではない。新興国にも独自のAIによる勝者が存在し、生産性向上が期待されている。債券運用の観点からは、AIのインパクトは国ごとに異なるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考える。注目すべきアングルは、産業構成、資本集約度、デジタルインフラ、AI導入のスピードなどが挙げられる。

新興国企業を評価する際には方法論が重要である

新興国社債(以前の記事『Emerging-Market Corporates: Renowned for Resilience』(英語)ご参照)の投資家にとっての重要な目標は、クレジットの差別化である。AIの出現は、コスト構造、競争環境、価格決定力を変化させることで、産業を強化するかもしれないし、弱体化もさせ得る。こうした影響を様々な産業を横串で一貫して評価するため、ABはクレジット結果にとって最も重要と考えるメカニズムに注目する。

  • 機能代替の可能性:AIは当該セクターの経済価値を脅かすか
  • 参入障壁の低下:AIは競争に対する構造的な障壁を破壊するか
  • マージン構造のぜい弱性:利益は希少性や情報優位性によって支えられているか
  • 構造的追い風の可能性:AIはコスト、需要、規模を通じてセクターの経済性を強化するか

マトリクス分析により、主要なエクスポージャー、ぜい弱性、機会を要約する(図表1)。

フレームワークの適用:セクター別のAIエクスポージャー

ABの評価では、AIにより機能が代替されるリスクが低く、構造的にAI活用のメリットを享受しやすい産業は、金属・鉱業からソフトウェア、ハイパースケーラーに至るまで幅広い。AI自身が資源を多く消費するため、銅鉱山やエネルギー生産など、エネルギー投入物に関わる企業は、マージン低下圧力に直面することなく、需要増加の恩恵を受けやすい。

一方、消費者向けデジタルサービスはぜい弱性が高い。メディア・エンターテインメントやオンライン・プラットフォームでは、AI主導の検索やエージェント型インターフェースが、既存の発見・広告モデルを脅かす。例えば中国の大手オンラインサービス提供者は、検索やプラットフォームを通じてユーザーのアクセスを確保するモデルから、AIが消費者をサービスに誘導するモデルへ移行することで、マージンが圧迫されるリスクを抱える。

金融サービスの発行体は両極の中間に位置づけられる。証券会社・資産運用会社・取引所は、情報及び分析の優位性にサービスが依存しており、AIがその一部を侵食し得る。ただし、ライセンス、規制、規模のメリットは依然として重要な参入障壁であり、競争圧力が強まる中でも、構造的に市場参加者が入れ替わる度合いは限定的である。

産業やマクロ経済の動向にかかわらず、個別社債発行体の評価は、キャッシュフローの持続性とバランスシートの耐久性に基づくべきであるとABは考える。

ソブリン向けのフレームワーク

国レベルのAI関連のリスク(以前の動画『What Will Shape the Next Phase of Emerging-Market Equities?』(英語)ご参照)と投資機会を評価するには、企業レベルとは異なる視点が必要である。ABのソブリン分析は、AIエコシステムにおける構造的な優位点、とりわけ重要なサプライチェーン内での役割に焦点を当てる。

  • どの国がAIサプライチェーンで構造的な優位点を有するか
  • AIのインフラとサービス展開を支える重要コモディティは何か
  • それらの生産・加工・供給を支配する国はどこか
  • AIエクスポージャーの高いサービスに依存する経済はどこか

短期的には先進国がAI成長を取り込みやすいように見えるが、主要サプライチェーンの要衝を戦略的に掌握することが、いくつかの新興国に長期的優位をもたらす可能性がある。

AIの構造的優位点が最も強い経済(図表2)には、AIインフラに不可欠な部品や製造能力を提供するアジアの新興国が多く含まれる。電力・熱管理やデータセンター部材など、目立たない「裏口」のエクスポージャーも、AIサービスの展開にとって重要である。

AIに不可欠なコモディティは新興国に集中している

AI技術とそれを支えるインフラの構築は、限られたコモディティと、それらを採掘・加工する能力に依存する。主要金属やレアアースを含む多くの素材は、新興国に集中している。結果として、新興国はAIに不可欠な投入物の採掘・加工で世界をリードし(以前の記事『AIの隠れたコスト:水がもたらすリスクと投資機会』ご参照)、上流サプライチェーンを通じてAI構築への構造的エクスポージャーを有する(図表3)。

ABの見方では、AIの活用と進歩が加速し、これら必須コモディティへの需要が高まるにつれ、中国、チリ、ブラジル、インドネシアなど一部の国は、経済成長と全体的な信用力の改善が見込まれる。

サービス主導型経済はAIによる産業破壊のリスクが高い

先進国の多くの定型的サービスやソフトウェア業務は新興国にアウトソースされており、AIによる産業破壊へのエクスポージャーが相対的に大きい。適応に失敗した場合、アジアのフィリピン、インド、マレーシアなど、サービス依存度の高い大規模経済は特に影響を受けやすい。中東欧の一部も、IT及びビジネス・サービスのアウトソーシング依存によりぜい弱である(図表4)。

AIのインパクトを注視し、エクスポージャーを分散する

AIが新興国の社債・ソブリン債に与える影響は、まだ完全には顕在化していない。しかし、エクスポージャーのメカニズムは明確になりつつある。AIの活用範囲が経済、産業、サプライチェーンに広がる中で、継続的な調査とモニタリングが不可欠である。

債券投資家にとって、新興国の地域、国、債券セクターにまたがる分散と選別は引き続き重要である(以前の記事『What Does the Iran War Mean for Emerging Markets?』(英語)ご参照)。ABは、新興国社債への資産配分が、新興国ソブリン債、及び米国クレジット投資のエクスポージャーを補完し(以前の記事『The Whys and Hows of Investing in Emerging-Market Corporate Bonds』(英語)ご参照)、国・発行体のカバレッジを広げ、クレジット・サイクルの異なる局面へのエクスポージャーを高め、場合によってはソブリン債に対するスプレッド・プレミアムを提供すると考える(以前の記事『ブレンデッド・ファイナンス:持続可能な開発に向けた新たなアプローチ』ご参照)。

AIの活用の範囲が広がる中、変化の速度を予測すること以上に、発行体信用力に対する一時的な影響と構造的インパクトを峻別することが重要になる(以前の記事『債券市場の見通し:オイルショックの影響はどこまで広がるか?』ご参照)。

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