拡大するこの市場セグメントは、プライベート資産の貸し手と投資家にさまざまな投資機会を提供している。
資産担保融資は実体経済に多額の資本を提供しており、投資家にとって魅力的な投資対象だ。しかし、それは具体的にどんなもので、他のプライベート・クレジット投資と何が異なるのだろうか?
それは、幅広い分野にまたがり取引も多い消費者セクターから始まった。消費者セクターは、米国や欧州を含む世界の多くの主要国における経済活動の3分の2以上を占めている。消費者は不動産の取得や、自動車・日用品の購入など、数多くの理由で資金を借り入れる。企業も資産担保融資を活用している。
プライベート クレジットの「新章」
実体経済のニーズを支える重要な資本は誰が提供するのだろうか?歴史的に見れば銀行がその役割を担ってきたが、過去数十年間で状況は変化した。金融危機、規制強化、金融イノベーション、業界再編による圧力が銀行のバランスシートを傷つけ、銀行は消費者や企業による資金需要の拡大に対応できなくなっている。
世界金融危機以降、そうした資金ギャップを埋めてきたのはプライベートの貸し手で、彼らはプライベート・エクイティ会社が所有する米国のミドルマーケットの企業に資金を供給してきた。今では、こうした形のプライベート融資は確立された市場となり、多くの貸し手が競争を繰り広げている。
そして今、プライベート融資における「新章」が始まっている。
銀行は依然として圧力にさらされており、実体経済の借り入れニーズに応じられずにいる。そして、プライベート・クレジットの投資家が再びその穴を埋めようとしている。特にスペシャルティ・ファイナンス機関をはじめとする新たに融資市場に参入した企業は、そのけん引役の一端を担っている。新たなテクノロジーを駆使し、金融市場の変化をうまく活用することで、これらのノンバンク貸し手は十分なサービスを受けられずにいた消費者や小規模企業に資本を提供してきた。
銀行とは異なり、スペシャルティ・ファイナンス機関は融資債権を保有できるほど大規模なバランスシートを持っていないため、プライベート・クレジット投資家など外部の投資家と提携している(図表1)。スペシャルティ・ファイナンスのプラットフォームはローンの調達、組成、サービスを担当し、プライベート・クレジット投資家は借り手の条件や担保の種類を定め、資本を提供し、融資債権を保有している。

資産担保融資 vs. 企業融資:比較分析
資産担保融資がプライベート・クレジット全体にどう組み込まれているのかを理解するには、企業融資を補完するものと考えてみればいい。
企業がプライベートローンを調達する際、そのキャッシュフローが利払いやローン返済の担保となる(図表2)。借り手企業が債務不履行に陥った場合、貸し手が回収できる金額は不透明で、解決には時間がかかる。

資産担保融資の仕組みは異なる。エネルギー関連インフラやリース航空機といった収入を生み出す実物資産や、自動車ローンや住宅ローンなど金融資産のプールが裏付け資産となる。これらの資産がローンの返済を保証し、独自のキャッシュフローを生み出すことになる。借り手が債務不履行に陥っても、通常はその担保資産によって強力かつ予測可能な回収が可能になる。
これらのローンは、裏付け資産の経済的要因が多様であるため、分散度が高くなっている。スペシャルティ・ファイナンス機関が組成する消費者ローンのプールには、何万件とは言わないまでも、何千件ものローンが含まれているケースが多い。
資産担保融資は元利均等での返済手法等が取られる特性があるため、元本は時間とともに徐々に返済され、返済が進むにつれてリスクが低下する。それは企業融資と明確に異なる点である。企業融資は時間をかけて返済されるが、元本はローン期間が満期を迎えるまで返済されない。また、資産担保融資には信用隔離性がある。つまり、スペシャルティ・ファイナンス機関のバランスシートの影響や債務不履行リスクから隔絶されている。
完全に開拓されていない成長市場
資産担保融資は、拡大しつつある投資機会へのアクセスを投資家に提供している。スペシャルティ・ファイナンスのエコシステムには6.3兆米ドルを超す債務が存在し、ストレスがかかっている銀行システムにはその倍以上の債務がある。こうした投資対象となり得る潜在的な市場規模は、ダイレクトレンディング市場と流動性の高いハイイールド市場を合わせた3兆米ドルをはるかに上回っている。
アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の見方では、これらの投資機会は投資家のアロケーションにまだ十分に反映されていない。おそらく、その理由はこの資産クラスが広範な範囲をカバーしており、すべてのプライベート市場の貸し手がそれを効果的に活用するノウハウを持っているわけではないためだと思われる。
資産担保融資の潜在的メリットを評価する
資産担保融資市場にアクセスする投資家は、魅力的な潜在リターンと分散効果を得られる可能性がある。これらの投資は、上場している類似証券よりも流動性が低いほか、融資契約が複雑であることから、利回りにプレミアムが上乗せされている。そのため、高水準のインカム収入が得られるほか、ディスカウント価格で取引されるケースが多いため、キャピタル・ゲインを得られる可能性もある。
資産担保融資は、企業による直接融資や、社債や株式など上場しているリスク資産への投資を補完する役割を果たすこともできる。ABは、これらが経済的な分散効果をもたらし、市場が下落または混乱した場合に、ポートフォリオへの影響を和らげる効果があると考えている。
当然ながら、潜在力を最大限に活用するには、それぞれの融資案件を評価し、投資機会とリスクのバランスを判断する専門知識が必要となる。プライベートの貸し手が適切な戦略を確立できれば、その恩恵を受ける可能性が高いとABは考えている。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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