足元の中東情勢を背景とした不確実性の高まりは、大きなリターンの可能性をもたらすか?

新興国市場株式はイラン紛争の開始以降、その影響に対する投資家の懸念を背景に大きく下落する展開となっている。その一方で、過去の歴史を見ると、市場のストレスが高まっている局面、つまり、ボラティリティが上昇し、不確実性がまだ完全には織り込まれていない状況は、新興国市場株式の投資家にとって魅力的なエントリー・ポイントであったことがうかがえる。

イスラエルと米国によるイランへの軍事作戦が地域紛争へと拡大する中、株式市場では神経質な展開が続いており、世界の原油輸送の約2割が通過するホルムズ海峡をイランが事実上封鎖したことで、エネルギー・ショックの長期化に対する懸念も高まっている。原油価格の高騰は、インフレの上昇や経済成長の鈍化、さらには企業収益の低下を加速させる恐れがあり、そうした懸念がグローバル株式市場の下落につながっている。このような環境下、3月のMSCIエマージング・マーケット・インデックス(米ドルベース)は11%の下落となり、2025年から2026年最初の2カ月にかけた堅調なパフォーマンスとは異なる動きとなった。

アジア経済を揺るがすオイルショック

イラン紛争の影響はアジア諸国の一部において最も顕著であり、ホルムズ海峡経由の原油輸送に大きく依存しているインドやタイやフィリピンでは、原油価格の上昇による影響を和らげるための対策が取られている。一方、例えばブラジルのように資源が豊富な新興国は、オイルショックの影響を比較的受けにくい可能性がある。それでも投資家が懸念しているのは、エネルギー・コストの上昇が企業の成長や収益性に及ぼす影響に対して、新興国企業が概してぜい弱に見える点である。

こうした不確実性はまた、市場ボラティリティが全体的に上昇している理由でもある。地政学リスクやマクロ経済リスクの拡大に投資家が頭を悩ませる中、米国株式市場のボラティリティを示し、ウォール街では「恐怖指数」としても知られるVIX指数の上昇が続いている。VIX指数の上昇は新興国市場株式の投資家にとって、歴史的に何を意味してきたと言えるのか。それを理解するためアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は、過去の月末時点におけるVIX指数の水準とその後の新興国市場株式のリターンとの関係性について、2001年まで遡って検証を行った。

VIX指数と新興国市場株式の関係:意外な反発シグナル

ボラティリティが極端に上昇することはめったになく、VIX指数が月末時点で40を超えたのは、過去24年間で9回のみである。その一方で、過去のそうした極端なVIX指数の上昇は、極めて高い新興国市場株式のリターンにつながることが多かった。以下のとおり、VIX指数が月末時点で40を超えていた場合、その後12カ月間の新興国市場株式のリターンは平均60%超と、先進国株式を優にしのぐ大幅な上昇を見せてきた(図表1)。

先進国株式よりもリスクが高いという新興国市場株式への一般的な評価を考えれば、そうした過去の動きは一見すると直観に反するように思われる。これに対して、その理由は市場心理にあるというのがABの考えであり、極端なボラティリティが続く環境においては、投資家が最悪シナリオを先読みしすぎてしまうことも多い。それはつまり、悪材料の大半は不安がピークに達した時点で既に市場に織り込まれており、大抵の場合は実際の結果が恐れていたよりも悪くないことが分かると、ポジティブなサプライズが発生し得るということでもある。

足元の環境は、極端な市場の不安心理を示すものでは今のところない。不確実性は高まっているものの、VIX指数の上昇は今のところ31で止まっており、過去に最も魅力的な新興国市場株式のリターンにつながったような水準のまだ入り口、あるいはトランプ大統領による包括的な関税措置の発表を受けて急上昇した2025年4月よりも低い水準にとどまっている。それでも、VIX指数が明確に30を上回ると、新興国市場株式の魅力がより高まる可能性があることは歴史が示している。

実際、足元の市場の動きも示唆に富んでおり、関税不安がピークに達してVIX指数が52まで上昇した2025年4月8日から2026年2月末にかけ、MSCIエマージング・マーケット指数は64%もの大幅な上昇を記録した(米ドルベース)。また、直近の下落を含めても、2025年のVIX指数のピークから2026年3月27日までの同指数のリターンは、依然として46%のプラスとなっている(図表2)。

中東情勢の今後の展開を予測することは誰にもできない。リスクは極めて高く、想定される結末も引き続きさまざまだ。その一方で、歴史は市場の転換点を正確に見極めることが極めて難しいことを示しており、投資家が市場の回復に乗り遅れないための最善の方法は、市場のストレス局面においても投資を続けることであると言えるだろう。さらに言えば、新興国市場株式はイラン紛争が始まるまで、企業の利益成長や人工知能(AI)の普及、さらにはガバナンス改革や米ドル安など、複数の要因による追い風を受けてきた。

長期的な視野を持つ投資家にとっては、堅実な経営基盤と質の高い事業を有し、インフレ圧力にも耐えられる新興国企業に着目することが、状況の落ち着きとともに発揮される可能性がある高い潜在リターンを追求する上で、有効な戦略であるとABは考える。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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