アクティブ運用のコア株式ポートフォリオにおいて、適度な超過収益を目指しつつ、より確実に長期的な運用成果を実現するにはどうすればよいか?
過去10年の大部分を通して、株式投資は豊富な機会に恵まれてきた。これまで市場の上昇を支えてきたのは堅調なベータや持続的なモメンタム、さらには一握りの主要銘柄群であり、投資家は株式市場に投資をしているだけで簡単にリターンを得られることが多かった。また、市場が二桁の上昇率を見せる中、リターンの安定性はほぼ当たり前のものであると考えられてきた。
しかしながら、そうした環境は今や変化しつつあり、投資家は期待リターンの低下や市場集中度のさらなる上昇に加えて、より不安定なファクターや投資スタイルのローテーションに直面していると言える(以前の記事『Factor and Style Risk: Taming the Hidden Hazard to Core Equity Returns』(英語)ご参照)。そのため多くのアクティブ運用マネジャーにとっては、ベンチマークを安定的にアウトパフォームすることがより難しくなっており、確信度の高いポジションを大きく取るリスクも高まっている。
では、そうした環境の中、過度なリスクを取ることなく、アクティブ運用のメリットを享受する方法はあるだろうか?アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の見方では、投資家は次の大きな投資機会を探るのではなく、さまざまな市場環境におけるリターンの再現性を追求したポートフォリオを構築すべきであると考える。また、期待リターンが低下した環境下では、たとえ短期的には大きくない超過収益であっても長期的な運用成果を大きく高めることが可能であり、パフォーマンスの安定自体がますます価値あるものになると考えられる。
・運用成果の実現を困難にする投資スタイルのボラティリティ
ベンチマークを安定的にアウトパフォームすることは、かつてないほど難しくなっている。eVestmentのグローバル大型株ユニバースではここ数年、アクティブ運用ファンドの67%がMSCIワールド指数をアンダーパフォームする結果となっている(図表1)。こうした傾向が見られた要因の一部は米国メガキャップ銘柄の圧倒的な影響力にあり、そのような環境下、アクティブ株式運用マネジャーが過度なリスクを取ることなく、ベンチマークからかい離したポジションを取ることは難しかったと考えられる。

投資スタイルのボラティリティもまた、運用成果の実現をより困難にしてきたと言えるだろう。グロース株式運用やバリュー株式運用など、伝統的なスタイルに基づく投資手法はこれまで、長期的なリターンの面では投資家にメリットをもたらしてきたとABは強く信じている。その一方で、投資家がそうしたメリットを享受する過程においては、長期にわたるパフォーマンスの低迷に耐えることが必要となる場面も多い。直近10年間のファクター指数間のリターン格差は、2005年から2015年までの10年間に比べて大幅に拡大しており、誤った局面で誤ったスタイルを選んでしまった投資家にとっては、そうした選択の代償が極めて大きかったことを表している。
・ファンダメンタル・リサーチと定量的なリスク管理の組み合わせ
では、そうした課題を投資家はどのように乗り越えるべきか?ABの考えでは、幅広いファンダメンタル分析と定量的なツールを組み合わせたアクティブ・ポートフォリオの構築が、安定性を実現する上での鍵となる。
こうしたアプローチは、次のようなシンプルな考え方に基づいている。まず、優れたファンダメンタル・アナリストは、長期的なアウトパフォームの可能性が高い、過小評価された銘柄の発掘に長けている。そして、定量的なリスク管理ツールは、ポートフォリオのリスクを管理し、ファクターの偏りを中立化することで、運用成果の安定性を支える役割を果たす可能性がある。これを言い換えると、投資家はそれらを組み合わせた戦略を採用することで、定量的なツールで最適なポートフォリオを追求しつつ、確信度の高いアクティブ・ポジションを取ることもできるということである。そしてそれはまた、ポートフォリオの運用を狂わせかねない投資スタイルのローテーションという不規則な風を、最終的に乗り越える上でも役立つ可能性がある。
・ファンダメンタル分析:引き続き重要な企業調査力
投資スタイルのローテーションに伴うリスクは今日、とりわけ顕著になっているように思われる。また、人工知能(AI)の急速な拡大は、ハイパースケーラー企業やその関連銘柄に桁外れのリターンをもたらす一方で、特に企業向けソフトウェアの分野は、破壊的な変革に対してリスクがあるとみなされ、株価下落要因となっている。そして足元では、地政学的なストレスの高まりもまた、そうしたさまざまなリスクに拍車をかけている。そのような中、徹底的な企業調査は投資家にとって、より幅広い市場分野で差別化されたポジションを構築する土台になり得るとABは考える。その一方で、コア株式ポートフォリオにおいて個別銘柄選択の精度を高めるためには、幅広い投資スタイルにわたって大規模なファンダメンタル分析を行える体制が必要になるとも言えるだろう。
バリュー株式運用、グロース株式運用、そしてコア株式運用の各スタイルにおいて、優れたマネジャーはそれぞれ異なる専門性を有している。バリュー投資家が求める投資対象は、事業の質が高く、さらなる改善の見込みもあるにもかかわらず、過小評価されている企業の株式である。そのためバリュー株式運用においては、企業ファンダメンタルズと株価バリュエーションのかい離が重視されると言える。それに対して、グロース株式ポートフォリオの目標は企業における成長の加速と収益性の拡大を捉えることであり、コア株式運用においては長期的なキャッシュフローの底堅さを背景に、複利的な成長を着実に続ける企業が評価される。このように投資スタイルが異なるファンダメンタル分析を組み合わせることで、株式運用戦略は最も確信度が高く、かつ補完的な特性を有する銘柄を選定し、ファクターのローテーションにも耐え得るバランスを手に入れることができるのである。
・ポートフォリオ構築における定量的な構成要素
しかしながら、ファンダメンタル面での魅力に応じてさまざまな銘柄を選ぶだけでは、リスク管理としては不十分である。定量的な分析も活用して次のような重要な問いに答えることで、ポートフォリオの運用成果は大きく変わる可能性がある。
ポートフォリオの各戦略の候補銘柄と保有銘柄の期待リターンはどの程度か?幅広い市場から選ばれた各銘柄は互いにどのような分散効果をもたらすか?ポートフォリオにおいて意図しないリスクや報われないリスクを抑えるためにはどうすればよいか?戦略全体のリスク・バジェットから考えて個別のポジション・サイズにも制限を設けるべきか?
定量的なモデルを使えばこれらの問いに答えることができ、その答えをポートフォリオ構築に活かすこともできる。優れた設計の定量分析ツールは、ポートフォリオのファクター・エクスポージャーを抑え、銘柄選択によるリターンを強化するとともに、組み入れ比率の調整を通じてリスクの分散を追求する上でも役立つ可能性がある。つまり投資家は、そうしたモデルを設計することで、保有銘柄の組み入れ比率を最適化し、バランスの取れた株式ポートフォリオを構築することができるのである。
・よりスムーズなリターンのパターンをもたらす強固な基盤
こうした運用の枠組みは、以下の3つの側面から、より安定した運用成果の実現を追求するものである。
第一に、投資家はこのような枠組みを採用することで、指数に特性が近いポートフォリオを構築することができる。それはつまり、ポートフォリオのボラティリティを高める要因となることが多い、特定のセクターや国、あるいはファクターへの大きな偏りを排除できるということである。
第二に、そうした偏りがもたらすポートフォリオのぜい弱性を抑えることで、投資家はリターンの大半を個別銘柄選択から得られるようになる。
第三に、これらを総合すると、こうした運用の枠組みは、適度なトラッキング・エラーで適度な超過収益の獲得を目指すものであると言える。こうした運用戦略は、高すぎるリターンを目指す代わりに、不安定な市場環境下でも投資家の信頼を損ないかねない大きなリターンの変動を抑えつつ、ベンチマークをアウトパフォームすることができるとABは考える。そして実際にABのリサーチは、長期的にはトラッキング・エラーが低いコア株式ポートフォリオほど、高いリターンを上げてきたことを示している(図表2)。

・当戦略の位置づけ
以上のような強みを有するポートフォリオは、株式への資産配分において独自の地位を確立しており、異なる投資目的を達成するためにパッシブ・ポートフォリオやアクティブ・ポートフォリオを補完する役割を果たし得る。
近年はパッシブ・ポートフォリオの人気が高まっているものの、多くの投資家は市場の集中リスクや将来的なリターンの低下を懸念している。仮に米国メガキャップ銘柄の圧倒的な影響力が弱まり、より幅広い銘柄が市場のリターンをけん引するようになれば、巨大テクノロジー企業の比重が大きいパッシブ・ポートフォリオは苦戦を強いられる可能性がある。また、株式市場からのリターンが小さくなる環境下では、アルファの創出機会が過去数年よりもはるかに重要になる可能性もある。そのためパッシブ運用の投資家は、適度なアルファを生む力のある戦略をポートフォリオに加えることで、そうしたシナリオに備えることを考えてもよいだろう。
伝統的なアクティブ株式戦略の投資家にとっては、市場の集中も厄介な問題を引き起こしており、そうした投資家の多くは期待外れの超過収益に頭を悩ませている。アクティブ運用の銘柄選択の有効性は信じているものの、アンダーパフォームのリスクは抑えたい投資家は、アクティブ・ポートフォリオの一部を見直し、リスクを抑えた上で安定的なアウトパフォーマンスを追求するような戦略に入れ替えることも可能だ。
安定したリターンを生み出す重要性は、近年ますます高まっている。本稿で説明したような株式ポートフォリオを規律正しく運用することで、投資家はパッシブ運用に近いリスク特性と、時間とともに複利で着実に積み上がる控えめながらも重要なアルファという、2つのメリットを同時に得ることができる。そして今日のような市場環境下、そうしたリターンの安定性は、より良い長期的な運用成果を上げるための基礎になると言えるだろう。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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