人工知能(AI)は投資機会を創出しているもののリスクは山積みだ。投資家は様々な結果を想定して備えなければならない。

2026年4-6月期には、AI投資サイクルへの信頼感が高まったことを受け、グローバル株式が反発した。7-9月期が始まった今、市場はAIの構築がスムーズに進んで収益をもたらすことを既に織り込んでおり、期待とかい離する余地はほとんどないように見える。一方6月のマグニフィセント・セブン銘柄の急落は、AIの構築がほぼ滞りなく進むと想定してAIトレードに集まっていた多数の投資家の心理が急速に変化するリスクを浮き彫りにした。

株式投資家は、1-3月期に起きたイラン攻撃に伴うオイルショックを短期間で消化した。4-6月期にはグローバル株式で構成されるMSCI オール・カントリー・ワールド指数(ACWI)が米ドル建てで14.9%上昇し(図表1)、1-3月期の下落分を相殺して、上期としては11.2%の上昇となった。新興国株式と米国小型株式がアウトパフォームした。米国大型株式はグローバル・ベンチマークを小幅にアウトパフォームして4-6月期の取引を終え、欧州株式は堅調なリターンを上げたもののアンダーパフォームした。

とは言え、株式市場は一本調子で回復したわけではない。株価は5月に上昇した後6月には弱含み、4-6月期末にかけてボラティリティが上昇した。市場ではマクロ経済に対する警戒とAI銘柄に関する確信という相反する投資家心理がせめぎ合っており、この不安定な値動きは、そうした株式市場の二極化を反映していると見られる。

セクター別に見ると、最も軟調だったのはエネルギーであり、米国とイランの交渉成立によってホルムズ海峡の封鎖が解除され、エネルギー供給のボトルネックが解消されるとの期待から原油価格が急落したことで、1-3月期から反転して下落した(図表2)。テクノロジー・セクターは6月に上げ幅を縮小したもの、市場をアウトパフォームした。マグニフィセント・セブンが急落したこの6月の値動きを踏まえ、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は、より幅広いエクスポージャーを取るべきとの見方を強めた。スタイル別のトレンドも投資家心理の変化を反映している。4-6月期には世界的にグロース株がアウトパフォームしたものの、上期全体で見ると依然としてバリュー株の伸び率の方が高くなっている(以前の記事『バリュー株復活は続くのか-キャッシュフローが示す投資妙味』ご参照)。4-6月期の大半を通じて市場のボラティリティは比較的低水準で推移したが、不透明感が続いていることを表すように、銘柄間のばらつきは拡大した。

AIの構築:設備投資は利益をもたらすか

AIを取り巻く熱狂は、4-6月期の大半を通じて市場をけん引し、マクロ経済の長期的な成長期待を押し上げている(以前の記事『AIは持続的な成長をもたらすか?その真価にはさらなる検証が必要だ』ご参照)。その一方で、AIの構築に関する懸念も高まりつつある。投資家にとっての根本的な問題は、「大規模な設備投資が最終的に魅力的なリターンをもたらすか」だ。

競争の激化を背景に、米国のハイパースケーラーはすべての資金を競争優位の確保に注ぎ込んでいる。ABのリサーチによると、設備投資額上位5社(アマゾン、マイクロソフト、アルファベット(グーグルの親会社)、メタ・プラットフォームズ、オラクル)によるAI関連の投資額は、2027年に1兆米ドルに達する見通しだ。これは2026年の推定投資額を33%上回り、わずか5年前の960億米ドルを大きく上回っている。

市場の期待は、テクノロジー業界全体の新たな設備投資の水準を既に反映しているように思われる。とは言えABは、株式のバリュエーションにとっては設備投資の絶対的な水準よりもその成長率の方が重要と考える。設備投資成長率は年内にピークを迎えると見られる(図表3)。伸び率が鈍化すれば、投資家は企業が期待どおりの利益やキャッシュフローを上げられるかに一段と注目するようになるだろう。

キャッシュフローは圧迫されている。ABの予想では、ハイパースケーラーのフリーキャッシュフロー(FCF)は2027年に初めてマイナスに転じると見られる。AI関連の収益が急拡大しているとは言え、これほど大規模な設備投資を相殺するには時間がかかる。こうしたトレンドは、いずれ企業の収益性を損ね、バリュエーションの逆風となる恐れがある。各企業がAIへの期待を投資家のリターンに転換できるかどうかは、こうした問題への対応によって決まる(以前の動画『Has the AI Trade Gone Too Far?』(英語)ご参照)。

記録的水準のIPO:次の段階のための資金調達

また投資家は、AI関連企業の相次ぐ新規株式公開(IPO)を慎重に吟味している。ここでも鍵となるのは、将来の利益予想に照らして期待が妥当かどうかだ。

AIテクノロジー大手のアンソロピックとオープンAIの2社は2026年内に上場する見通しだが、未だ利益を上げていない。両社のIPOに対する投資家需要は、AI構築の次の段階に資金を投じようとする投資家の意欲を測る試金石となるだろう。

4-6月期に実施された2件の大型IPOは、市場心理を浮き彫りにした。6月前半、アルファベットは増資によって850億米ドルを調達し、その一部をバークシャー・ハサウェイが引き受けた。AI関連の資金調達の場が公開市場に移るのに伴い、規律ある資金調達や投資家にとって信頼に足るストーリーが、技術力と同じく重要になるだろう(以前の記事『Funding as the New AI Bottleneck: What Alphabet’s Move Reveals』(英語)ご参照)。

6月中旬、イーロン・マスク氏率いるスペースXは記録的なIPOによって750億米ドルを調達し、その後同社の時価総額は2.6兆米ドルのピークに達した。この一件は、たとえまだ目に見える利益を上げていなくても、変革的技術の潜在的可能性に割高な対価を支払う意欲が投資家にあることを明らかにした。だがIPO後の不安定な値動きは、投資家心理が急速に変化する可能性を思い起こさせた。

IPOの熱に押されて規律を軽視すべきではない

投資家が有名なIPO銘柄に引きつけられるのは自然なことだ。だがIPOに参加するかどうかは、ポートフォリオの理念、規律あるリサーチ、当該企業の長期的な価値の評価に基づいて判断すべきである。ポートフォリオが異なれば、異なる観点からIPOを評価しなければならない。最終的には、企業のファンダメンタルズとバリュエーションが投資戦略と合致しているかどうかに基づいて投資判断を下す必要がある。

大型IPO銘柄が主要指数に採用される場合は、ベンチマークについても検討が必要になる可能性がある。この場合、ポジションをアンダーウェイトとするのであれば、その銘柄を避けることが正しいという確信と、相対的なリスクとのバランスを反映させなければならない。

市場のテクニカル・リスクにも注意が必要

銘柄固有のリスクのほかにも、IPOの波は市場に新たなリスクをもたらす可能性がある。何年もの間、自社株買いは株式の新規発行と投資家による売却を吸収する役割を果たしてきた。それにより株価収益率(PER)を支え、ボラティリティを抑制してきた。債券や株式の発行が増える一方でFCFが減少すれば、正味の自社株買いは減少する可能性がある。IPO、追加売り出し、株式ロックアップの解除(IPOから180日後)による大量の新規供給により、投資家が吸収すべき株式の量は近年を大幅に上回るかもしれない。

長い目で見れば、市場のリターンをけん引するのは通常、利益と経済成長である。だが、需給関係の変化が市場の転換期の動向に影響を及ぼす可能性はある。新規発行が加速する一方で、正味の自社株買いが減速した場合、株式の重要な追い風が失われる恐れがある。売り手が多く自然な買い手が少ない市場は、悪材料によって生じるボラティリティの上昇、PERの低下、急激な反応に対してぜい弱であり、ファンダメンタルズが堅調な場合でも大きな反応が起こる可能性がある。

利益を取り巻く環境は依然として有利

今のところ、ファンダメンタルズの指標は底堅さを保っている。テクノロジー・セクターのほかにも、素材、金融、ヘルスケアなどのセクターは堅調に利益を伸ばしている(図表4)。そのためアクティブ運用マネジャーは様々なセクターや地域の中から豊富な投資機会を見いだすことが可能だ。株式の長期的なリターン機会を捉え、リスクを軽減するために、質(クオリティ)の高い企業に対する幅広いエクスポージャーが重要であることに変わりはない。

ABはクオリティ企業を、資本コストを上回るリターンを持続的に創出可能な企業と定義している。競争優位性、健全な財務状況、価格決定力、優秀な経営陣が依然としてクオリティ企業の特徴であるのはそのためだ。とは言え、クオリティ企業に該当する企業の性質は変わりつつあるのかもしれない。例えば資本財・サービスや素材など多くの資産を抱えたセクターの企業は、以前は確実性で劣ると見られていたが、AI支出の増加によって質の高さが向上している。

それでも、クオリティ銘柄は適正な価格で取得しなければならない。4-6月期末時点で、予想PERは米国株式を中心に幅広い市場で上昇していた(上記図表4)。しかし均等加重S&P 500指数、米国以外の先進国株式(EAFE)、新興国市場のバリュエーションは比較的低水準である。ABは、株式ポートフォリオはバリュエーションに注目し、割高な市場セグメントで人気になっているトレードには慎重であるべきと考える。

マクロ経済の圧力が高まりつつある

一方で、マクロ経済の大きなリスクは依然として解消されていない。原油価格が下落してもインフレ圧力はまだ後退せず、国内総生産(GDP)見通しは不安定であり、金利の上昇は株式の高いバリュエーションの逆風となる可能性がある。米国とイランは中東紛争の終結に向けて交渉を行っているものの、地政学的緊張や政策の不透明感が引き続き見通しに影を落としている。

足元の景気の底堅さは、部分的に資産価格の上昇によって支えられている。市場の調整局面が長引けば資産効果は薄れ、経済全体に対する逆風が強まる可能性がある。

株式投資の成功は、銘柄ごとのファンダメンタル・リサーチにかかっている。だが投資家は、特に今日の二極化した市場において、企業が事業を営んでいる全体的なマクロ環境を無視することはできない。

日々変化する市場の中で意図的な配分を行う

足元の市場は堅調だとは言え、投資家は先行きを慎重に検討する必要がある。特にインフレが根強く続いている局面では、株式は長期的な配分に不可欠であるものの、新しいリスクにも注意を払わなければならない。

こうした環境の中、株式投資家はどこでアクティブ・リスクを取るのかをより慎重に考える必要がある(以前の記事『意識的な投資配分:市場の変化を捉えるアクティブ株式戦略』ご参照)。AIの構築は投資機会をもたらすものの、高いバリュエーション、株式発行の増加、金融政策の不透明感を考えれば、小さなミスが失敗につながりかねない。期待が変化すれば、ボラティリティが高まる恐れもある。そして、主要指数のリターンをけん引する企業へのエクスポージャーを持つパッシブ運用であっても、リスクが排除されるわけではない。

AIの重要性は高いとしても、株式投資の計画は一面的なものであるべきではない。ポートフォリオでは、AI構築が無条件で成功することを前提とせず、持続的なリターンの源泉を追求すべきである。このことは、ベンチマークかい離リスクをよりよく管理した上で、ばらつきの大きい市場、ベンチマーク集中度の低い市場、目に見えないファンダメンタルズの変化が起きている市場でアクティブなポジションを追加することを意味する。AIに関しては、ファンダメンタルズ的価値に基づいて企業を評価すべきと考える。いずれは株式のリターンにとって、野心的なAI支出計画そのものよりも計画の遂行、資本配分、利益実現の方が重要になるだろう。

下期を迎えるに当たり、投資家はよく注意を払う必要がある。過去を振り返ってリターンを得ようとするのではなく、ポートフォリオの潜在的リスクを精査しなければならない。つまり、AIへのエクスポージャーのストレステストを行い、人気トレード以外にも投資対象を広げ、資金配分における各ポートフォリオの役割を明確化する必要がある。AIブームが期待外れとなる余地がほとんどない市場では、単にこれまでの延長線上でポジションを維持するのではなく、より幅広いシナリオを想定して慎重に備える必要がある。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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