退職後に確実な収入が得られるか心配する確定拠出年金(DC)プラン加入者が増えるのに伴い、収入を保証するソリューションへの需要が高まっており、プランスポンサーはその選択肢について検討している。そのメリットを測るには数多くの方法があるが、イン・プラン型(DC内でそのプランにあった保証を設計すること)やデフォルト商品など、一部のアプローチには明確な優位性がありそうだ。

新型コロナウイルスが途方もなく大きな経済的影響をもたらしたことを受け、多くのプランスポンサーは、一時的に職を失った加入者への対応や緊急分配の実施など、重要な優先課題への取り組みを強化してきた。状況が徐々に通常に戻るのに伴い、今後は最も高い関心を集めている退職所得の保証に取り組むためのプラン設計が再び焦点となりそうだ。

終身にわたる給付への需要が高まっているが、導入は遅れている

退職後の確実な収入を求めるプラン加入者からの強い需要は、プランスポンサーにとって、次のステップに取り掛かかる上で十分なインセンティブとなる可能性がある。

アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)が実施したDCプラン加入者向けの調査によると、ターゲット・デート・ファンド* を利用しているプラン加入者の約87%が、年金 など何らかの形での給付保証の選択肢が魅力的だと考えている。プランスポンサーも同様で、ABの最新調査によると、96%のプランスポンサーが、給付保証付のターゲット・デート・ファンドを選択肢に追加することにある程度の魅力を感じていると回答した。だが、実際にそれを近々実施する計画だと答えたスポンサーははるかに少なく、わずか38%にとどまった(図表)。

多くのスポンサーは給付保証の選択肢を好んでいるが、実際に導入しているプランは少ない.png

給付保証に明確なメリットと需要があるとすれば、その関心が行動に結びつかない理由は何だろうか? 多くのプランスポンサーにとって、これらのソリューションを提供するためのプロセスは、その必要性ほど明確になっていない。また、これらのソリューションの評価や実施方法を巡る不透明感が消えていないことも、依然として導入のハードルとなっているようだ。

ただ、給付保証の高い魅力と導入率の低さのギャップは縮小しつつあるように見える。

2019年終盤に「退職貯蓄制度強化法(SECURE法)」が成立したことは、プランスポンサーにとって、根強く残っていた大きな問題の一部を明確化することにつながった。例えば、この法律では、DCプランの中で給付保証を提供する保険会社の選定に対して、セーフハーバー(免責条項)が定められた。それにより、終身給付を取り入れる受託者を保護する道が開かれたため、導入に踏み切る受託者が増えると思われる。

イン・プラン型アプローチの利点

給付保証に対する規制面の後押しはあるものの、プランスポンサーは依然として給付保証を提供するための具体的な形態を決める必要がある。その際に考慮すべき最も重要な点が2つある。1つは、イン・プラン型とアウト・オブ・プラン型どちらの形態で提供すべきかであり、もう1つは、加入者が運用指図をしない場合、掛金が自動的に投資される適格デフォルト商品(QDIA)の中で提供すべきか、それとも退職時に加入者自身が選べるようにすべきか(オプト・イン型)、という問題である。

どんなタイプの給付保証を追加してもプランを強化できるが、イン・プラン型のデフォルト商品は、より幅広い加入者に提供できるほか、コスト効率も優れているなど、多くの利点があるとABでは考える。例えば、イン・プラン型のソリューションは規模が大きく、リテール向けに販売されている個人年金に比べ実質的に有利なプライシングができる。自動的に投資されるQDIAとして導入すれば、給付保証を最も多くの加入者に提供することが可能となるため、広く活用されている。DCプランは、加入者の貯蓄を増やし、潜在的な退職所得を拡大するために、自動加入、自動掛金引き上げ、その他の行動経済学に基づくツールを活用しており、それらとも整合的である。

また給付保証には、加入者が好きな時に自分が望む条件で退職できるという心の安らぎを与えてくれるなど、大きな影響をもたらす利点もある。ABの調査では、加入者の56%が貯蓄の最優先目標は退職後の収入を確保することだと答えており、自分で管理できるイン・プラン型の給付保証は、雇用主にとって人材を採用及び維持するための効果的なツールにもなり得る。

受託者の観点では、加入者の現役時代を通じて老後の給付に対するソリューションを提供するプランスポンサーは、退職時にプラン外から提供されるものとは違い、加入者からの評価や信頼を得ることができる。また、イン・プラン型の収入保証は長期にわたって加入者に提供されるため、プランスポンサーは継続的な教育やガイダンスを提供することによって従業員をサポートし、彼らが貯蓄戦略をカスタマイズするのを支援することができる。

DCプランの目的は貯蓄か、それとも退職所得か?

退職後の寿命が延びるのに伴い、多くのスポンサーがDCプランの目的を見直し、本質的な問いを投げかけている。プランは単に貯蓄を補うものなのか、それとも加入者が生涯にわたって十分な退職所得を得られるように支援するものなのだろうか?

明らかに、終身給付に対するニーズは強く、しかも拡大している。この方向に向かおうとしているプランスポンサーは、すべての加入者に適したカスタマイズ可能な収入ソリューションを提供したいとすれば、多くのことを考慮しなければならない。

例えば、市場が下落した場合の資産保護機能を強化し、長期的に給付保証を「買い入れる」ことができるようにするなど、プラン設計の柔軟性が重要になる。また、特に加入者が何を保有し、それがどのように役立つのか理解しようとしている場合には、加入者によるプランへの関与もカギを握る。一般的に、個人年金に対する認識は賛否両論あるが、年金の持つ特性が長生きリスクや市場リスクにどう対処しているかや、インフレや金利変動、その他の懸念要因について加入者を教育するだけで、彼らに心の安らぎを与えることができるかもしれない。

加入者が自分の口座から資金を引き出すのを助ける戦略へのニーズが高まり、業界がそれに対する取り組みを強化する中、従業員とスポンサーの双方が圧倒的に給付保証に魅力を感じていることがますます明確になっている。加入者はまた、シンプルで確実性があり、コントロール可能な商品が望ましいとの考えを示している。これまで見てきたように、プランスポンサーはそうしたソリューションについて真剣に検討すべきである。

*あらかじめ目標とする年(ターゲット・イヤー)を決め、最初は積極的な運用を行い、ターゲット・イヤーに向けて徐々に積極的な運用から保守的な運用に移行するファンド

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