退職後の生活設計では従来、貯蓄額をできる限り増やすことに焦点が当てられてきた。しかし、実際の目標が生涯にわたって十分な年金を得ることであれば、確定拠出年金(DC)プランの加入者に、将来DCプランから受け取れる年金額の見通しを示すことで、今から望ましい貯蓄習慣を促すことができるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では考えている。

退職後に備えた貯蓄は米国の労働者にとって長年にわたる課題だが、DCプラン加入者の主な関心事は、どれだけ貯蓄できるかということから、どれだけ多くの年金を確保できるかという点に移りつつある。DCプランへの加入を促し、ニーズを満たすサービス、マッチング拠出の提供、そして健全な投資商品ラインナップを提供することは強力な基盤となるが、プランスポンサーは、加入者に生涯にわたる年金を提供することも必要だろう。

将来の年金額の見通しが分かれば、貯蓄不足を回避できる可能性が高い

退職に向けた目標はずっと先のことのようにみえるかもしれないが、多くのプラン加入者は安心して自分なりの老後を過ごすため、正しい道を歩んでいることを確認したいと考えている。加入者の現在の貯蓄額を将来受け取ることのできる年金額の見通しに置き換えることで、より具体的で適切な情報を得ることができ、結果的に、正しい道を歩んでいるかどうかを確認できる。

望ましい貯蓄行動を促すことや、将来の年金額を目に見えるようにすることは、特に退職間際または退職時にタイミング悪く市場が下落した場合に、プラン加入者の蓄えが足りなくなる可能性を回避するのに役立ち得る。しかし、そうするには、貯蓄から年金への変換が信頼性と透明性を備えていなければならない。退職のかなり前から積み立てを始める終身年金のような収入保証型のDCプランが、こうした年金額の「プレビュー」を提供する基盤となるのは、それが理由である。

将来の年金額を把握する必要性が高まっていることを受け、2019年に米国で「退職貯蓄制度強化法(SECURE法)」が制定され、プランスポンサーに対して終身給付した際の内容を開示することが義務づけられた。制定に携わった人々は、加入者は年金額を把握する(そして計画を立てる)必要があり、DCプランは定期的にロードマップを提供しなければならないと主張した。この開示はやや基本的なものだが、自分の退職に向けた貯蓄が、将来どの程度になるのか(あるいはどのくらい不足するのか)といった非常に重要なことに対する問題意識を高めている。

年金額に対する意識は行動や貯蓄の拡大につながる

プランスポンサーやサービス・プロバイダーにとって、新たな情報開示義務はより多くの作業が必要になることを意味するかもしれないが、年金を重視する考え方が広がれば大きなメリットが生じることは明確に確認されており、努力する価値があるように見える。

ABのリサーチに基づけば、例えば、年金が意識の焦点にあれば、プラン加入者はより積極的に貯蓄に取り組むようになる。実際、収入保証の商品(イン・プラン 型:DCプラン内で保証するタイプ)を提供しているABのDCプランに加入している75,000人のうち、年金を戦略に直接取り入れている加入者はそうでない加入者に比べ、貯蓄額が7年間で12%も多くなった。

もっと早くから貯蓄を始める必要があるというのは目新しい考え方ではないが、今、退職する人々こそ、その重要性を強調している。ABがプラン加入者向けに実施した調査によると、「機会があるうちにもっとお金を貯めていればよかった」と答えた人は約47%で、「退職までの間にもっと自分の健康に留意すればよかった」と答えた人の倍近くに達した(図表1)。

退職者が「こうしておけばよかった」と思うこととは?.png

米国政府による新たな指針には明確なメリットがあり、プラン・スポンサーにとって、焦点を貯蓄から年金に切り替える方法を探るインセンティブとなる。それを加入者が望んでいることも同じくらい重要な意味を持つ。Employee Benefits Research Institute の調査によると、こうした教育やアドバイスが役立つと答えた労働者の割合は80%以上に達した(図表2)。

労働者は年金に関する意識を高めている.png

年金を個人のニーズに合わせていつでも変更できる柔軟性も同様に魅力的である。少なくとも、逆効果をもたらす傾向がある据置年金のような「取り消せない」商品に比べれば、取り扱いやすいだろう。一部の年金は加入者に複雑な決断を迫る結果、加入者が行動を先延ばししたり完全に中止したりするケースも多く、長期的な貯蓄を妨げることになりかねない。

今日では人々の寿命が伸び、退職後もより活動的で健康的な生活を送っているため、引退後の資金を長持ちさせなくてはならない。市場のボラティリティやインフレに関するリスクも考慮する必要がある。人々が人生の終盤で予想もしていなかったような事態に陥ることのないようプラン・スポンサーが支援したいと考えるなら、そもそもなぜプランを提供しているのかといった、原点に立ち返った新たな哲学が必要になるかもしれない。それらの目的は加入者の拡大、貯蓄の増大、波乱に富んだ市場における安定した資産運用、そして年金の確保であり、これらは全て、安心して退職するための重要な要因になるとABでは考えている。

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