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カーボンオフセットはESG投資の新たなフロンティアになるか?

                                                                                                                                                                     

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サラ・ロズナー(写真)
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
責任投資ディレクター-環境リサーチ・エンゲージメント
 
 
 
  
サッティヤジット・ボーズ
コロンビア大学 サステナビリティ・マネジメント・プログラム
アソシエイト・ディレクター
 
 
 
  
 

2022年7月29日

 
 
カーボンオフセットが環境・社会・ガバナンス(ESG)問題に占める役割は比較的小さいが、炭素排出ネットゼロの目標を掲げる国や企業が増える中、炭素削減を加速させるツールとして、投資家から着実に注目を集めている。需要拡大を背景に、一部の市場では取引されるクレジットの価格が過去最高水準に達している。
 
企業は何十年にもわたり、実質的な炭素排出の回避や削減のためカーボンオフセットを活用してきた。カーボンオフセットは「キャップ・アンド・トレード」(コンプライアンス)市場と長い結びつきがあり(以前の記事『カーボンオフセットの利用に関する6つのベストプラクティス』ご参照)、義務づけられた排出枠を守るために企業間で取引される排出権として、または自発的な取り組みで構成されるボランタリー市場におけるさまざまな削減活動の一環として、世界的に取引されている。カーボンオフセットは、産業と自然という大まかな2つの領域において生み出される。例えば、太陽光発電や風力発電は炭素排出を避けるための産業活動であり、植林は自然の力を活用して炭素除去を目指す取り組みである(図表1)。
 
オフセットは炭素排出の回避及び除去に貢献.png
 
現在のところ、世界中に68のコンプライアンス市場があり、それは世界の温室効果ガス総排出量の約23%を占めている。現時点では旺盛な需要が供給を上回っており、一部の市場では価格が過去最高水準に達している。2021年の世界のカーボンプライシング収入は約840億米ドルで、前年の530億米ドルから大幅に増加した。さらに、必ずしも規制との関係がない炭素削減イニシアティブから企業がクレジットを購入するボランタリー市場では、より急速な伸びが見込まれている。実際、世界銀行によると、ボランタリー市場のオフセット活動は、2021年に初めて1兆米ドルに達した。
 

市場のルールが定まりつつある

カーボンオフセットは引き続き独自の資産クラスとして進化を続けている。規制当局や他のグループがカーボンオフセットに関するルール作りを協力して進めており、市場は好ましい形を整えつつある。
 
例えば、気候変動に関する機関投資家グループ(Institutional Investors Group on Climate Change)は、企業のエンゲージメントや資本配分に関するベストプラクティスを明確に示す指針の作成に取り組んでいる。先ごろ開催された第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)では、取引基準に関する初の多国間合意が成立した。この合意には、先進国と新興国の司法管轄区域にまたがる裁定を容易にするための明確なルールが盛り込まれており、取引価格の正当性を高め、世界的な普及を促す上で重要な役割を果たすと考えられている。
 
米国では、証券取引委員会(SEC)が提案している気候変動の影響に関する開示規則案の中で、年次報告書でカーボンオフセットに関する報告を義務付ける考えが示されている。これは、透明性と説明責任の向上に向けた大きな一歩となる。この動きは多くの関心や議論を呼び起こし、SECは珍しく意見募集の期間を延長した。
 

ESGにおけるカーボンオフセットの役割に投資家の関心が集まっている

気候変動問題に取り組む企業のコミットメントが重視され、より多くの解決策が提示されるようになるのにともない、カーボンオフセットに対する投資家の関心も着実に高まっている。今後はESGに関する株主の活動が急速に活発化する見通しで、特に「E:環境」には強い圧力がかかると思われる。この流れの中で、カーボンオフセットが企業のキャッシュフロー、評価、法的立場などにどんな影響を与えるかについて、強く意識する投資家が増えている(図表2)。わずか100社の企業が世界の温室効果ガス排出量の71%を占めているとするカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)の報告を受け、株主は効果的な対策を求める声を高めている。カーボンオフセットに関するこうした進展は、今後ますます株主の議決権行使に反映されていくことになりそうだ。
 
カーボンオフセットはなぜ投資家にとって重要なのか.png
 

質のコントロールには依然としてギャップがある

新たなガイドラインや投資家の意識の高まりは、カーボンオフセットの普及を後押ししている。しかしアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では、質と量の両方に焦点を当てることが重要だと考えている。カーボンオフセットの一部は、オーストラリアのカーボン・ファーミング・イニシアティブや米国のカリフォルニア大気資源局のような規制機関や政府公認の認証機関によって認証されている。また、ゴールド・スタンダード、Verra、アメリカン・カーボン・レジストリー、クライメート・アクション・リザーブといった非営利の認証機関による認証を受けている場合もある。
 
しかし、カーボンオフセットがより普及するためには、投資家はさらに多くの指針を必要とするだろう。例えば、投資家はカーボンオフセットが実際の炭素削減に貢献するのかどうか、判断できるだろうか?それとも、企業が排出を拡大する際にその影響を評価するための基準にすぎないのだろうか?2021年には世界で370億トンのCO2が排出され、ハワイのマウナロア天文台の観測記録がある過去64年で最高水準に達した。カーボンオフセットによって世界の温室効果ガス排出量に影響を与えたいと考えるあらゆる投資家が、自分たちが本当に問題を解決しているかどうかを判断するための、信頼できる基準を必要としている。
 
それに加え、投資家にとっては、カーボンオフセットが幅広いステークホルダーに与える影響を評価することが重要である。地域に副次的な利益(雇用創出、生物多様性の保全)をもたらす炭素削減活動は、地域のステークホルダーに歓迎されるとみられる。そうした副次的な効果の評価は、コストがかかる可能性はあるが、カーボンオフセットをより持続的で正当なものにするだろう。
 
新たな評価基準の一部は有望に見える。ESGデータプロバイダーの中には、ネットゼロに移行する企業の取り組みを評価するため、複数の気温上昇シナリオを用いているところもある。学界もそれに一役買っている。コロンビア大学クライメートスクールはABと提携し、カーボンオフセットや他の気候に関する問題について、投資家やポートフォリオマネジャーへのトレーニングを提供している。また、カリフォルニア大学バークレー校のクールクライメート・ネットワークは、包括的な評価フレームワークを公開している(図表3)。そこで注意すべき問題の1つとして取り上げられているのは、会計ルールの不明瞭さのためによく生じている二重カウントである。例えば、企業が同じカーボンオフセットさまざまな地域に重複して割り当てたり、同じクレジットを何度もカウントしたりすることがある。しかし、カーボンオフセットの会計的な管理を世界的に統一しようとする計画(これはCOP26で得られたもう1つの成果である)が、将来的に二重カウントを防ぐと期待される。
 
カーボンオフセットの評価.png
 
一般の投資家にとって、カーボンオフセットがアセットアロケーションの選択肢となるまでにはまだ時間がかかりそうだ。しかし、透明性や価格設定などの基準が改善されてきたことで、カーボンオフセットは資産として注目を集めている。ABは、幅広いESG投資の枠組みの中で、積極的に投資を探る価値がカーボンオフセットにはあると考えている。カーボンオフセットがさらに普及すれば、特に発展途上国のステークホルダーへの資金流入を促し、幅広い分野における国際連合の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に寄与すると思われる。カーボンオフセットが世界中で正しく用いられれば、地球温暖化との戦いを支える上で重要な役割を果たす。炭素排出の削減が一夜にして実現できるものではなく、時間のかかる戦いであることを考えれば、その役割は一段と重要なものになる。
 
 
 
 

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

 

 

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当資料は、2022年6月28日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 

 

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