資本を必要としている地域社会に投資することで、社会や環境、またはその両方など、重要な分野に変化をもたらしたいと考えるならば、インパクト投資はその1つの方法となる。

米国地方債のマネジャーは、自分たちをインパクト投資家と呼ぶかもかもしれない。だが、中には環境・社会・ガバナンス(ESG)投資を装うものの、単なるグリーンウォッシングやソーシャルウォッシングにすぎないアプローチだったり、インパクトに関する目標を達成するためのロードマップや経験、リソースを持ち合わせていなかったりするケースもある。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)はそれらをふるいにかけるため、5つの厳しいチェックリストを作成した。

1. 米国地方債市場におけるESG投資について、どんなアプローチをとっているか?

その答えには、ESG要因の組み入れ(インテグレーション)、スクリーニング、またはその両方が少し含まれているかもしれない。それらは有効なアプローチだが、インパクト投資と必ずしも同じではなく、それぞれがESGに対して異なる取り組みを行っている(以前の記事 『A Guide to ESG Strategies for Municipal Bond Investors』(英語)ご参照)。インテグレーションは、ポートフォリオ全体の潜在的なリスクとリターンを正確に把握するため、全ての保有銘柄についてESG要因を評価する。ESGに関するスクリーニングでは、タバコ、ギャンブル、石油など、投資家が回避したいと考えている発行体を除外する。

もしも、投資の目的がさらなるリスク要因の評価やネガティブ・スクリーニングを通じた投資リターンの向上だけにとどまらないとすれば、インパクト投資が最善の答えとなる。

2. インパクト投資をどう定義しているか?

社会全体に貢献する地方債セクターへの投資のみを根拠にインパクト投資を定義するといった大雑把な回答には注意する必要がある。こうした回答は有意義な効果を特定しておらず、もっと具体的な定義が求められる。

むしろ、具体的な目的や成果を念頭に置いたプログラムやプロジェクトを通じて社会と環境の改善を促すには(以前の記事 『米国地方債の「インパクト投資」は、地域の社会貢献をピンポイントに担う』 ご参照) )、投資収益がどのように使われているかを具体的に把握しなくてはならない。そのカギを握るのはインテンショナリティ(意図)で、これはインパクト投資において投資哲学や投資規律と等しく重要だ。インパクトをもたらすには、あらゆる学校債に投資するのではなく、根本的な問題に取り組んでいる学区に投資することが重要になる。例えば、メンタルヘルス、医療、歯科治療、栄養食品、安全な遊び場やコミュニティセンターなど、包括的なサービスを生徒に提供している学校などが挙げられる(以前の動画 『Municipal Impact Investing: Making an Impact on Education』ご参照)。

インテンショナリティというのは、インパクト投資を1つの目的に過度に縛るものでもない。なぜなら、さまざまな地方債の発行体が、その中核的な目的に沿った特定の社会的格差を縮小するため、さまざまなプロジェクトを進めているからだ(図表)。

3. インパクト投資の焦点はどのように選んでいるのか?

あるマネジャーは、特定のセクター(アルコール、化石燃料、銃器)を排除することが、インパクト投資の指針になると言うかもしれない。しかし、主観に基づいて特定セクターを除外することがインパクト投資ではない。むしろ、インパクト投資はインクルージョンの基準を通じて機能する。それは何かに反対するだけでなく、何かを支持することを意味する。

インパクト投資のユニバースに何を含めるかについて、マネジャーの基準を確認しなくてはならない。環境、社会、そして経済面から生産的な投資であることは1つの要素となる。しかし、歴史的に軽視されてきた地域社会に焦点を当てれば、より大きなインパクトをもたらすことができる。学術的な成果、クリーンな水、経済発展、ヘルスケアなどの分野における格差縮小を目指しているとすれば、なおのことそう言える。

次に、明示されたインクルージョンの中核的基準を確認する必要がある。マネジャーは、発行体がそれぞれの分野で満たすべき最低限の基準を設定し、それを最も必要としている地域社会をターゲットとしていることを確認しなくてはならない。例えば、教育債を評価する基準として、少なくとも60%の生徒が無料または低価格で食事を提供されていることなどが挙げられる。同様に、発行体が病院の場合には、総収入の20%以上をメディケイドの患者やチャリティーケアから得ていることが基準となり得る。さらに、地域の人口統計やニーズに応じて投資ユニバースを絞り込むこともできる。

4. 真のインパクトを与えていることを、どうやって確認しているのか?

データが標準化されていないため、実際のインパクトを測定するのは大変な作業となる。そのため、それは単純なプロセスだとか、大まかな基準で定められていると主張するマネジャーには注意する必要がある。マネジャーはむしろ、それぞれのインパクト債のセクター固有の主要パフォーマンス指標(KPI)を特定した上で、その目標に向けた発行体の進捗状況を把握しなくてはならない。

例えば、公共交通機関の場合、温室効果ガスの排出量、機器の故障、低所得者層の利用率などが、地域社会の発展に大きな影響をもたらす。これらの要素を改善することで、真のインパクトを生み出すことができる。

5. リサーチ以外に、インパクト投資向けにどんなリソースを活用しているか?

地方債投資の基本原則を一貫して適用することが極めて重要である。それは、分散投資をしっかり守り、徹底した定量・ファンダメンタルリサーチを行うことを意味する。テクノロジーも重要で(以前の記事 『Technology Enables Municipal Investing at the Speed of Alpha』(英語)ご参照)、特に今日のかなり細分化された地方債市場では、迅速に行動すればするほど、超過収益の創出や税負担の軽減につながる。

インパクト投資に関しては、マネジャーが過去の評判にあぐらをかいて投資行動を怠けるような事態を許してはならない。思慮深さや豊富な経験があれば、グリーンウォッシングと、リソースの少ない地域社会を力強く活性化することをはっきり区別することができる。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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