2023年を迎え、執ようなインフレと世界経済の減速見通しがクレジット市場に重くのしかかっている。世界中の中央銀行がインフレの抑制を目指す中、当面は利上げが続く見通しであり、積極的な金融引き締めが世界の金融市場に影響を与えている。

投資適格社債やハイイールド社債の投資家にとって幸いなことは、世界金融危機以降、多くの発行体のクレジット指標が歴史的な水準に比べ力強く推移していることである。こうした発行体は景気減速への耐性が備わっているが、マクロ経済をめぐる不透明感が一段と高まる中、投資家は選別的な投資を意識する必要がある。

利回りとスプレッドは高水準に

2022年3月に始まった長期にわたる利上げ局面を経て、社債利回りとスプレッドはどちらも数年ぶりの高水準へ上昇・拡大した。過去1年間に利回りがどれほど上昇したかを認識するには、2021年第3四半期にユーロ建て(以下、欧州)投資適格社債の約半分は利回りがマイナスだったことを思い出せばよい。現在、米ドル建て(以下、米国)投資適格社債の利回りは世界金融危機以降で最高水準にあるほか、欧州の投資適格社債の利回り(以前の記事 『European Fixed-Income Outlook: Stay High Quality in 2023』(英語)ご参照)はユーロ・ヘッジ・ベースで、米国の同等債券の利回りをさらに上回っている。

利回りの上昇により、固定利付き社債の利回りは株式の配当利回りを大幅に上回っているほか、リスク資産の下値余地を抑える役割を果たしている。また、高水準の信用スプレッドは、将来の景気後退リスクをある程度織り込んでいるとみる。

世界的に執拗なインフレが続いているため、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)のグローバル経済チームは2023年の早い時期にさらなる利上げが実施されると予想しているが(以前の記事 『2023年金融市場見通し:テーマが移行する年』ご参照)、中央銀行は世界的な成長鈍化を受け、引き締めペースを緩める可能性が高い。そのプロセスが完了し、投資家が金利の方向性と企業業績について明確な見通しを持てるようになるまでは、市場のボラティリティと同様に、利回りが高止まりすると予想される。

企業のファンダメンタルズは健全

幸いなことに、多くの企業は健全な財務状況の中で2023年に入った。米国と欧州企業のファンダメンタルズは(以前の記事 『債券市場の見通し: 均衡点を見つけ出す』ご参照)、新型コロナウイルスのパンデミックで受けた痛手から回復し、一部に影響を及ぼしたコモディティ価格も下落している。収益性を測る指標や、財務レバレッジ、インタレスト・カバレッジ・レシオといった主なクレジット指標は、大半のセクターで世界金融危機以降のレンジ内で良好な水準にある(図表)。こうした状況は、企業のファンダメンタルズがはるかにぜい弱だった過去の景気減速局面とは対照的である。

米国のクレジット指標は強力

ファンダメンタルズが強力なのは、新型コロナウイルスのパンデミックで保守的な財務運営が必要になったことが一因で、多くの企業が健全なバランスシートの維持を目指すようになった。また、景気敏感なコモディティ関連企業が供給ひっ迫と高い価格を追い風に、潤沢なフリーキャッシュフローを生かして負債を金融危機以降で最低水準まで削減してきたことも、安定したファンダメンタルズ見通しの背景となっている。

世界経済の成長が2023年に鈍化する場合、強力なバランスシートと資金調達余力を確保した企業は、経済成長の鈍化に伴う需要の減少や信用悪化を乗り切ることが容易になる。

また、ハイイールド社債の発行体の多くは2023年も低クーポンによる恩恵を受け続けることが出来ると見る。その理由は、前倒しでのリファイナンス等により、足元の高い金利水準で債券を発行せざるを得なくなる「満期の壁」が近づいていないからだ。実際、2025年末までに満期を迎えるハイイールド社債は全体の20%に過ぎず、多くは2026年から2029年にかけて満期が到来する。たとえ今後4年間に利回りが上昇したとしても、2026年初頭までは、クーポンがコロナ禍以前の水準である6%台に戻ることはなさそうだ。

信用力の悪化圧力は高まる可能性があるが、デフォルト急増は想定しづらい

米国では、ハイイールド社債のデフォルト率が2020年10月に6.3%でピークを迎え、投資可能なユニバースから最もぜい弱な企業が排除された。それに加え、多数の「フォーリンエンジェル(以前は投資適格等級だったがハイイールド等級に格下げされた社債)」が、ハイイールド社債市場においてBBの格付けを得ている債券比率を50%にも押し上げ、ハイイールド社債市場全体のクオリティが改善した。

同様に、欧州のハイイールド社債市場でも、BB格の債券比率が63%に上昇した。欧米の双方のハイイールド社債市場で、BB格の債券比率は、世界金融危機以降に約10%ポイント上昇している。その結果、米国と欧州のハイイールド社債市場は全体として信用力が高まっており、過去の景気減速局面に比べ、市場のストレスに対する耐性が高まったと見る。

欧米のハイイールド社債市場は、今後1年間にストレスが高まる可能性を織り込んでいるが、デフォルトが大幅に増加することまでは織り込んでいない。これは、今後12~18カ月に信用格付の引き下げとデフォルトがわずかな増加にとどまるというABの予想と合致している。マクロ経済環境が予想以上に悪化した場合、ストレスが高まる可能性はあるが、企業のバランスシートの出発点と保守的な財務運営の方針を踏まえれば、社債発行体への影響は全般的にさほど深刻なものにはならないと思われる。

テクニカル要因はクレジットをサポート

テクニカル要因はクレジットを支える要因となっているようだ。欧州中央銀行(ECB)は複数の債券購入プログラムを終了したが、投資適格社債の保有資産から得た償還資金を引き続き再投資している。一方、ユーロ圏の投資適格社債市場では発行額が減少しており、比較的好ましい需給バランスが保たれている。

米国では、ハイイールド社債のテクニカル要因が大きな勢いをつけながら2023年を迎えた。2022年末に投資家が大挙して市場に戻ってきたため、ハイイールドのミューチュアルファンドへの資金流入額は2022年11月に、月間ベースで2020年7月以来の高水準に達した。こうした旺盛な需要は2023年まで続く見通しで、バリュエーションにも追い風になるとみられる。投資適格社債は、高い利回りが様子見姿勢を取っていた投資家を惹きつけ、次に大きな人気を集めると予想される。

魅力的な利回り、堅調な企業ファンダメンタルズ、多額の資金が流入する可能性を踏まえれば、2023年は社債投資家にとって大きな可能性を秘めた年になりそうだ。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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