信用サイクルの終盤では、金利リスクと信用リスクの適切なバランスを取ることが望ましい。足元はこれがまさに当てはまる局面にあるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では考える。

なぜ現在が信用サイクルの終盤にあたるといえるのか?この1年半、過去40年間で最も急ピッチの世界的な金融引き締めや、米国の地方銀行3行を破綻に追い込んだ銀行危機に投資家が直面してきたことを考えてみればいい。米国経済は今のところ、どうにか景気後退を回避している。労働市場が引き続き好調に推移しているものの、インフレ率は40年ぶりの高水準からはさすがに鈍化の兆しを見せている。

一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレ率を長期的な目標である2%まで押し戻すことに注力する考えを示しているが、インフレ抑制に時間がかかるほど、景気後退に陥る可能性が高まることになる。FRBは2023年6月、政策金利を据え置いたものの、年内に再び利上げに踏み切る考えも示している。

全天候型の債券戦略

その結果、米国の信用サイクルは転換点に近づきそうだ。だが、その時期を特定するのは容易ではなく、今日の複雑な市場環境ではとりわけ難しい。そのため、インカム志向の投資家にとっては、国債や他の金利感応度の高い債券と、成長に敏感なクレジット資産を組み合わせ、ダイナミックに運用する単一ポートフォリオの構築を検討すべき時期だとABでは考えている。

特に、インフレと金融引き締めが利回りを押し上げている今は、どちらのタイプの債券にも優れたインカム創出のポテンシャルがある。金利リスクと信用リスクのバランスを取る分散型の「バーベル」戦略を取り入れれば、投資家はそれぞれの時点で、金利リスクか信用リスクのどちらかにポジションを傾けることができる。これは、下値リスクをしっかり抑えながら高水準のインカムを創出できるアプローチだと考えている。

ABはそのアプローチを全天候型戦略だと考えているが、特に、今後数カ月のうちに2024年の利下げを正当化できるほど成長が鈍化するようであれば、今はバーベル戦略のままリスクテイクを引き上げる理想的なタイミングかもしれない。

金利と信用リスク: 異なる方向に動く

信用リスクに対するバーベル戦略が伝統的にうまく機能してきたのは、2つの主な債券リスクが負の相関関係を示す傾向があるからだ。国債は通常、成長が鈍化し、インフレが冷え込み、市場が金利低下に備え始めた場面で好調なパフォーマンスを示す。そのため、国債はハイイールド債やエマージング債からは信頼できる分散投資先となってきた。社債やエマージング債は株式と同様、経済が力強く成長し、金利が上昇している場面で最も魅力が高まる。

2022年はこの関係が崩れ、両者が足並みをそろえて価格下落した。一部の投資家は、負の相関関係を示す時代は終わったのではないかと疑問を感じ始めた。だが、そうではなかった。国債と株式の動きを見る限り、負の相関関係は2023年になって再び明確になった(図表1

長期的には、歴史的なパターンが再現されるとABは予想している。過去30年にわたり、国債とクレジット資産が連動して売り込まれることは滅多になかった(図表2)。しかし、両者がそろって価格下落した場面でも、バーベル型の戦略は打撃を最小限に抑える上で役立つ可能性がある。金利に敏感な資産とクレジット資産を別々のポートフォリオに分離したり、それぞれの運用を別のマネジャーに任せたりしている投資家は、そうした状況では、双方の資産で損失限定のためリスクテイクが不十分になり収益機会を逸するおそれがある。

綱渡り

最後に、足元の債券投資戦略についてABの考えをまとめる。

まず、金融引き締めが成長を抑制するとみられるため、2023年後半には信用サイクルが転換し始めると思われる。景気後退に陥る可能性が高まり始めれば、投資家は流動性を維持し、金利変動への感応度を示すデュレーションを一定以上の水準に維持したいと考えるだろう。国債はその両方を満たす優れた資産と言える。

同時に、ハイイールド債や一部の新興国社債、商業用不動産担保証券(以前の記事『米国商業用不動産市場の見通し:CMBSでは高いクオリティの投資機会を追求』ご参照)などの「スプレッド・セクター」へのエクスポージャーは、ポートフォリオにバランスをもたらし、マネジャーはインカムを得る可能性を高めることができる。しかし、現在は信用スプレッドが過去平均を下回る水準であるため、景気の下降局面でとりわけぜい弱性が高まる格付けがCCCの社債については、特に慎重に対処することが重要である。

今日の市場環境は複雑で、特に低ボラティリティや低金利環境が長期にわたって続いたパンデミック以前と比較するとその難しさが際立つ。不透明感が高い場面で投資家ができる最善のことは、準備を怠らず、さまざまなシナリオに備えることである。インカムを創出するバランスの取れたアプローチは、その一助になるとABは考えている 。


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