選別的な投資を維持すれば、2024年の新興国債券市場は良好な収益機会に恵まれるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考えている。

高金利、地政学的な不安定さ、中国の景気低迷にもかかわらず、新興国の債券市場は2023年に力強いリターンを上げた。2024年も多少の逆風が続く可能性はあるが、緩和的な金融政策、インフレ率の低下、米ドルの下落がこのセクターを支える要因となりそうだ。より仔細にこれらの材料をみてみよう。

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財政状況は改善しつつある

新興国の経済は2023年に先進国と足並みをそろえて減速したが、2024年は安定した成長を遂げ、先進国の成長ペースを上回る見通しで(図表1)、これは新興国の債券価格を押し上げる可能性がある。米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げがある場合、世界的な金融環境の緩和につながるほか、新興国の中央銀行はインフレ率の低下を背景に金融緩和を継続することができそうだ。

加えて、注目すべき点は財政見通しだ。ABの分析では、新興国の財政状況はここ数年、全般的に悪化してきたが、2024年には特にソブリン格付が低い国々が回復に向かい始める可能性がある。アルゼンチンやウクライナといった信用力がとりわけ低い国の財政状況は改善する見通しで、低格付のソブリン債が最近混乱に陥っていただけに、それは投資家にとって歓迎すべきニュースとなる。また、ナイジェリアやトルコなど、他の数ヵ国でも構造改革を通じて改善が進みそうだ。財政が健全化されれば、債券市場へのアクセスも改善され、ソブリン格付けの引き上げにつながる可能性もある。

ABはカバーしている新興国ユニバースの70% 以上について、2024年は財政が安定または改善すると予想している。効果的に財政政策と金融政策のバランスを取ることができる国はアウトパフォームする可能性が高い。コロンビア、ハンガリー、インドネシアのソブリン債市場は大規模で流動性が高く、2024年は財政の安定及び健全化が金融緩和を補強する好材料となりそうだ。

逆風が和らぎ、追い風が強まる

中国は新興国市場に大きな影響力を及ぼしているため、これまでは中国経済の減速が新興国債券市場にとって強い逆風となってきた。ABは、2024年の中国の見通しはまちまちだと考えている。

苦境にあえいでいる中国の不動産セクターは引き続き成長を圧迫しているが、政策当局者は景気刺激策を強化している。その結果、2024年の中国経済は、新興国市場の成長をけん引することはできないにせよ、足かせにもならないと予想される。しかし、政策当局者の継続的な取り組みは綱渡りを強いられる見通しで、微妙な均衡を維持するにはさらなる政策の緩和が必要となりそうだ。

明るい材料は、中国の成長が鈍化しても、インドなど他の主要新興国にその穴を埋める機会がもたらされることだ。実際、2024年の世界各国の成長率予想では、インドがトップに立っている。

一方、テクニカル面では、新興国債券セクターへの追い風が強まっている。発行額は2年連続で過去の平均を大きく下回り、償還額を差し引いた社債の純発行額はマイナスとなっている。同時に、新興国債券市場からは多額の資金が流出しており、2022年と2023年の流出額は年間ベースで過去最大に達した。

限定的な発行額や多額の資金流出により、投資家は新興国債券の保有額が過少な状態にあるとABは考えている。リターンが高くなれば、歴史的に資金が流入してくる傾向があるため、こうしたテクニカルな要因は、2024年についてのABの見通しをしっかり支える役割を果たしそうだ。

現地通貨建て債券:米ドルはどうなるのか?

現地通貨建て債券は為替相場の影響を受けるが、ABの分析では、直近の米ドルは基本的に過大評価されてきたように見える。2024年には米国のさらなる金融緩和が予想されていることから、この過大評価は徐々に解消され、新興国の現地通貨建て債券を支える要因となりそうだ。ABが予想するソフトランディング・シナリオの下では、その可能性が最も高くなると思われる(以前の記事『【ABIQ】世界経済は減速へ。それでもソフトランディングに変わりなし』ご参照)。

いずれにせよ、現地通貨建て資産の見通しは、過去40年間に大きな変動が見られた米ドルの相対的な強さに再び左右されることになるだろう(図表2)。

2024年は米ドルが下落するとABは予想している。しかしながら、2023年の米ドル相場はわずかに下げただけだった。ドルの調整が引き続き小幅にとどまり、不安定な展開が続けば、投資家は為替リスクのヘッジに工夫をこらす必要がありそうだ。それはアクティブ・マネジャーに任せるのが最善で、ダイナミックな為替ヘッジを通じて為替変動の影響を抑えることができると考える。

リスクに直面しながらもアクティブな姿勢を維持する

選挙の観点からは、2024年は重要な年になる。11月の米国大統領・議会選挙に加え、南アフリカ、パナマ、メキシコ、その他多くの国で重要な選挙が予定されており、市場に影響を与える可能性がある。確かに、政治的な不透明感が投資家の味方となることはほとんどないが、新興国債券にとっては好ましい環境が整っているため、政治動向が世界の成長やインフレのトレンドに混乱をもたらすことは考えにくい。

だからと言って、サプライズが起きないとは限らない。米国経済が予想を上回る成長を遂げたり、地政学的な問題が再燃したり、あらゆるサプライズが起こる可能性がある。だが、2023年は米国における地方銀行の破綻など多くのサプライズがあったものの、新興国債券は引き続き力強いリターンを生み出したことを忘れてはならない。2024年も同じような展開になる可能性がある。アクティブ・マネジャーは、こうした不透明感に包まれた環境においても投資家から託された資金を適切に運用することができるだろう。

ABは2024年の金融政策がさらに緩和されると予想しているが、先進国市場の政策当局者が過去のサイクルほど迅速に利下げするとは限らない。しかも、2023年と同様、2024年も利下げのタイミングや規模をめぐり、FRBと市場参加者で見解が対立する可能性がある。そうなれば、市場のボラティリティが高まる可能性があると同時に、アクティブ・マネジャーにとって魅力的な価格で長期的なポジションを構築する機会が生じるかもしれない。

いずれにしろ、投資家が選別的な姿勢を維持すれば、2024年は新興国債券にとって好ましい市場環境が生まれると予想される。新興国債券は多様性に富んだ巨大な資産クラスである。これまでと同様、投資家は慎重に投資対象を選択し、資産を配分することが重要になる。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら

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