商業用不動産からの安定したキャッシュフローを求める投資家にとって、不動産デットへの投資は検討に値する。

インカムを重視する欧州の投資家にとって、商業用不動産(CRE)はなじみ深い資産クラスである。10年近くにわたって指標金利がゼロ以下で推移し、投資適格債の利回りも1%を下回る中、欧州の年金基金、保険会社、そして大手事業会社は、コア不動産への投資を通じてインカムの獲得を追求してきた。

そうした戦略は合理的であり、借り入れを大きく増やし、その資金を質の高いコア不動産に投資することで、投資家は高水準かつ安定的なインカムを獲得することができた。

2000年代初め以降、コア不動産に投資するエクイティ・ファンドは年率6.7%の平均リターンを上げてきたが、それを可能にしたものは何か。答えは借り入れ金利の低さであり、それが不動産投資家のリターンを高める役割を果たしてきた。

高金利環境下でのデット投資へのシフト

足元、CREローンの参照基準金利は大きく上昇しており、簡単に言えば、レバレッジ(借り入れによるてこ)はもはや安価ではなくなっている。それどころか、借り入れ金利がコア不動産の利回りを上回るケースもあり、借り入れは投資家のリターンを低下させる可能性もある。

借り入れ金利の上昇が不動産からのキャッシュフローを圧迫し、エクイティ投資家の分配金利回りが低下したことで、目標リターンの実現は不動産価格の上昇により大きく左右されるようになっている。しかし、現在のような高金利環境において、目標リターンが実現する保証はない。

デット投資家への恩恵

これは、インカムを重視する投資家にとっては悩ましい問題である。それでも、問題を解決できる可能性はあり、そのような投資家にとっては今がCREデットに投資対象を分散するタイミングではないかとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考える。金利の上昇は、レバレッジを利用するエクイティ投資家にとってはリターンの低下要因となる一方、デット投資家には恩恵をもたらす。

足元の金利環境下、デット・ファンドは高い利回りを実現しており、その水準はコアCREエクイティ・ファンドの一時期の利回りに匹敵するか、それを上回っている。さらに、デットは企業の資本構成においてエクイティよりも上位に位置し、デフォルト時にはデットの返済が優先されることから、デット・ファンドのリスクはエクイティ・ファンドよりも低い。

市場の不確実性が高く、それが不動産価格の上昇にも逆風となっている現在の環境を踏まえると、安定したインカムの確保を追求する投資家にとって、CREデットはより安全な選択肢になるとABは考える。

以下の図表は、欧州コア・エクイティ・ファンドの分配金利回りと国債利回りの差(利回りスプレッド)を示しており、その大きさは直近では100ベーシス・ポイント未満と、10年ぶりの低水準にある。

不動産投資における安定したインカムの追求

投資家は今日、金利の上昇、経済成長の減速、根強いインフレ、地政学的な紛争、さらには世界経済の状況変化など、様々なリスクや不安に直面している。

こうした状況において、不動産価格の上昇を当てにするのは望ましくない。インカムを重視する不動産投資家にとって、デット投資へのシフトは、魅力的なインカムの獲得と市場の下落に対するプロテクションの強化を実現する、またとないチャンスとなる可能性がある。今こそ安定したインカムにシフトすべき時かもしれない。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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