プライベート・クレジットは今や長期的に不可欠な資本形成の構成要素になりつつある。

プライベート・クレジットはもはや資本市場におけるニッチ分野ではない。それは今や銀行融資やパブリック・クレジット市場と並び、グローバルな資本形成において中心的な役割を果たし、企業の資金調達や資産を担保とした投資の拡大を支えている。

また、市場の成熟に伴い、今ではより幅広い投資家がプライベート・クレジット市場にアクセスできるようになっている。ただし、そのリターン格差は広がっており、それが市場の拡大と競争の激化がもたらした副作用であるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考える。

ABの見方では、2026年は以下の4つの長期的なトレンドがより鮮明になるだろう。

アルファ(超過リターン)の源泉は、スプレッドの獲得からソリューションの提供能力にシフトしており、セクターや資産クラスに特化した専門性に加えて、ストラクチャリングの専門知識や充実した運用体制が、主なリターンの原動力となるだろう。

運用パフォーマンスの差が拡大し、運用体制のクオリティやオリジネーション能力の高さ、さらにはあらゆる市場環境における複雑性への対応力がその要因となるだろう。

透明性への考え方が変化し、付加価値を生み出すために必要な不透明性と、機関投資家が求めるガバナンス、運用報告、規律とのバランスが図られるだろう。

流動性ソリューションが充実し、プライベート・クレジット市場の成長と成熟に伴い、より多くのツールや選択肢が投資家と運用会社に提供されるだろう。


これらの動きを合わせて考えると、プライベート・クレジットのエコシステムはもはや単に拡大しているだけでなく、グローバルな資本形成にとって、長期的に不可欠な構成要素へと成長しているというのが、ABの見方である。

1)アルファの源泉はスプレッドからソリューションへ

市場成長の初期段階においては、低流動性プレミアムや超過スプレッドがプライベート・クレジットの主なリターンの源泉となっていた。しかし、そうした期待リターンの一部は、市場における競争が激化し、融資条件の標準化やデータ開示の改善も進んだことで、徐々に失われていく結果となった。

プライベート・クレジットの超過リターンは今日、「ソリューションによるアルファ」によってもたらされるケースが増えているとABは考える。それはつまり、セクターや資産クラスの専門知識、ストラクチャリング能力、さらには充実した運用体制を生かして借り手の課題を解決することが、アルファにつながるということである。

また、そうした傾向が見られるのは、投資適格市場も非投資適格市場も同じである。信用力の高い借り手であってもプライベート・クレジット市場を利用することはあり、その理由は融資のスピードや確実性のほか、借り手の長期目標に沿ったストラクチャーのカスタマイズにある。

プライベート市場の中でも、「ソリューションによるアルファ」が最も顕著なのは、資本よりもスキルが求められる分野である。例えば、アセットベースの複雑なエコシステム、インフラストラクチャーのような投資、さらにはセクターの知識やビジネスモデルの複雑性が重要な事業会社などがその一例だ。これらの分野では、資本も必要であるものの、それだけでは決して十分ではない。豊富な経験とストラクチャリングの専門知識が、運用会社の主な差別化要因になるためである。その結果、プライベート・クレジットの超過リターンは今後より一層、充実した運用体制とストラクチャリングの専門知識があり、大規模な複雑性にも対応できる運用会社に集中していくであろう。

2)スキルに応じたパフォーマンス格差の大幅な拡大

プライベート・クレジット市場が成熟するにつれ、そのパフォーマンスはマクロ経済全体の状況よりも、運用会社のスキルに左右される度合いが大きくなると考えられる。別の言い方をすると、プライベート・クレジットのパフォーマンスを左右するのは、多角的な運用体制のクオリティであり、クレジット・サイクルではないということだ。

オリジネーションのクオリティや融資の引き受け規律、さらには運用プロセス管理がパフォーマンスに与える影響は、ますます高まっているとABは考える。それは例えば、デフォルトやストレス・イベントの発生はいかなるクレジット・サイクルにおいても自然な現象であり、借り手と早くからコミュニケーションをとり、投資元本の保全に向けて積極的に行動する貸し手ほど、市場サイクルを通じて投資の価値を維持できる可能性が高いということだ。

また、こうしたパフォーマンス格差の存在は投資家にとって、運用会社選びの重要性を改めて認識させるものでもある。成熟した市場に関して言えば、パフォーマンス格差の存在は欠点ではなく、むしろ特徴のひとつであると言えるだろう。

3)変化するプライベート・クレジット市場の透明性

透明性、あるいは透明性の欠如は、プライベート・クレジット市場の弱点とされることが多い。しかし、そうした批判は正しくないとABは考える。現実はより複雑であり、プライベート・ローンは通常、分かりにくいことを前提としたものであるためだ。プライベート市場においては、個別の条件交渉やストラクチャーのカスタマイズが可能なことで、貸し手と借り手の利益の一致、リスク管理機能の強化、さらには確実な融資の実行が担保されているのであり、標準化されたパブリック市場ではそうしたメリットの実現は難しい。

その一方で、市場が成熟するにつれ、意図的なものではなく単に慣例的な不透明性は、次第に許容されなくなっている。そのためプライベート市場においても、バリュエーションの枠組みやポートフォリオの運用報告、さらにはリスクの集計やガバナンスの基準が、機関投資家のニーズに合わせて進化を続けている。ただし、そうしたニーズはパブリック市場と同じ開示環境をプライベート市場にも求めているわけではなく、仮にそうであれば、プライベート市場の柔軟性が失われてしまう可能性がある。

4)プライベート市場の成熟に伴い流動性も向上

プライベート市場の成長とともに、流動性ソリューションも進化を遂げてきたと言える。それは、かつてはプライベート市場の大部分が長期のクローズド・エンド型戦略であったものの、現在は潜在的な価値の創造を妨げることなく、より多様な方法で流動性を提供するエコシステムが存在しているためである。

例えばプライベート・エクイティ市場では、これまで多くの流動性ツールが開発され、セカンダリー市場や継続ファンドが投資家の選択肢を広げるとともに、運用会社にとってもクオリティの高い資産への投資を維持する上で役立ってきた。そして現在、こうしたツールの重要性はますます高まっており、プライベート・クレジット市場にも徐々に浸透しつつある。

また同時に、プライベート・クレジット市場においては、NAVレンディング(ファンドの保有資産を担保とした融資)やGPレンディング(ファンドのジェネラルパートナーへの融資)、さらにはその他の構造的な流動性ツールなど、ファンドレベルでのソリューションがより標準的になっている。そしてこれらの仕組みは、ポートフォリオの投資先企業や投資先資産の将来的な売却の代わりではなく、市場取引が少ない局面における柔軟性の確保や市場サイクルを通じた資本効率の向上など、ファンドの運用を補完する役割も果たしているのである。

ABの見方によれば、市場の深化とともにこうした流動性ソリューションはさらに拡大し、グローバルな資本形成の持続的かつ長期的な構成要素というプライベート市場の役割についても、今後さらに強まっていくと考えられる。

結論

プライベート・クレジット市場は成長の初期段階を脱し、今や金融市場において重要な役割を担う存在となっている。そしてその期待リターンはスキルに基づくソリューションによって決まるケースが増え、運用会社間のパフォーマンス格差がさらに広がっている。また、市場のエコシステムが進化するにつれ、流動性の確保手段もその深みと多様性を増している。

市場の次なる成長ステージにおいては、こうしたエコシステムを資金面で支え、借り手の複雑な課題を解決するとともに、規律あるガバナンスを通じて安定した運用管理と信頼関係の構築を実現する能力が、最も重要になるとABは考える。それはつまり、低流動性プレミアムを享受するだけの時代は終わりつつあるということでもある。プライベート・クレジット市場の未来を担うのは、深い専門知識と柔軟な対応力を兼ね備えた、経験豊富な運用会社である可能性が高いと言えるだろう。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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