プライベート・クレジットにおける流動性の制約は、この資産クラスが機能するために不可欠である。
プライベート・クレジットは、パブリック・クレジット市場や銀行のバランスシートと並び、債務による資本の形成を支える重要な柱である。しかし、その価値提案の重要な要素の1つは、パブリック市場と比べた相対的な低流動性にある。これは借り手にとっても、最終投資家にとっても同様である。この違いは意図的に設計されたものであり、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は、維持されるべきであると考える。
最近の報道は投資家の不安をかき立て、非上場の一部のビジネス・デベロップメント・カンパニーやインターバル・ファンドにおいて、償還請求(テンダー)が通常より多く発生している。こうした不安の多くは、潜在的な信用損失や、人工知能(AI)が主導する破壊的な変革に対する懸念と結び付いている。これらの懸念は、パブリック市場(以前の記事『ソフトウェア株の大幅な下落:構造的なリスクとノイズを区別する』ご参照)とプライベート市場(以前の記事『プライベート・クレジットの魅力はまだ失われていない』ご参照)の双方において投資家に影響を及ぼしている。
運用会社の対応は一様ではない。純資産総額の5%という既存の四半期ごとのテンダー上限を維持している運用会社もあれば、その上限を超えるテンダーに応じている運用会社もいる。中には、全額に応じたケースもある。
ABの見解では、事前に定められた上限を超えてテンダーを受け入れることは、プライベート・クレジット投資の根幹を成す要素を損なう前例を作るリスクがある。投資家は、非流動性プレミアムを獲得することを目的の1つとして、この資産クラスに資金を配分している。そのプレミアムを提供するためには、運用会社が投資家資本のデュレーションと、裏付けとなる投資の長期的な性質とを整合させる必要がある。
プライベート・クレジットにおいて、流動性制限が重要である理由
ダイレクト・コーポレート・レンディングを含むプライベート・クレジット戦略において、ABは、低流動性を欠点ではなく特性であると捉えている。投資家は、あらかじめ定められた期間にわたり資本を拘束する代わりに、同等のパブリックな債務と比較して、より高い利回りと低いボラティリティを享受している。加えて、個別に設計されたストラクチャー、交渉に基づく法的契約、そして借り手と貸し手のダイレクトな関係を通じた、下方リスクの抑制効果を得る可能性がある。
一方、こうした取引における借り手は、通常、利払い前、税引き前、償却前利益(EBITDA)が1,000万米ドルから7,500万米ドルの範囲にあるミドルマーケット企業である。これらの企業は、迅速かつ確実な実行を重視している。また、ニーズに合わせて柔軟にストラクチャーを設計できる、単一の貸し手、もしくは考えを同じくする少数の貸し手との連携に価値を見出している。
ストラクチャーを尊重
しかし、プライベート資産に「ただ飯」は存在しない。非流動性プレミアムを享受しながら、同時にいつでも流動性を提供することは不可能である。四半期ごとのテンダーを純資産総額の5%に制限することで、運用会社は流動性を必要とする投資家に対して定期的な換金機会を提供しつつ、すべての投資家にとってポートフォリオの健全性を維持することが可能となる。
こうした上限は、既存ローンの投げ売りに頼るのではなく、実現したキャッシュフローを用いて償還請求に対応することを可能にする。仮に請求が5%を超えた場合でも、運用会社は四半期ごとに上限まで対応し、そのプロセスを継続することで、投資を継続したい投資家に不利益を与えることなく、売却を希望する投資家を最終的に全額償還することができる。
ABの見解では、四半期の上限を超えるテンダーは、この資産クラスにおいて非流動性プレミアムを提供する能力を損なうものである。非流動性プレミアムは、投資家にとって数ある魅力的な価値提案の1つである。
確かに、プライベート・クレジットはパブリック市場のクレジットに比べて透明性が低い。その点は一部意図された設計でもある。しかし、不透明であってはならない。機関投資家の間で依然として主流である、従来型のプライベート・エクイティのクローズドエンド型ファンドの方式とは異なり、セミ・リキッド型のストラクチャーでは、ファンドの存続期間を通じて、投資家は1口当たりの純資産価格での購入及び売却が可能である。このため、ローン価値の極端な評価減のリスクを抑制するには、評価方針とその厳格な運用が一層重要となる。
市場のディスロケーションは、規律ある投資家にとって機会となり得る
ボラティリティはしばしば不安を生み出す。それは人間の本性である。しかし、ノイズの中からシグナルを見極めることができる投資家にとって、市場のディスロケーションは、プライベート・クレジットに関する深い専門性と、投資家からの安定した資本基盤を有する運用会社にとっての機会を生み出すことが多い。
資産運用会社にとって、基礎となる戦略、リターン特性、そして顧客の目的を達成するために必要な流動性条件について、投資家と明確にコミュニケーションを取ることは、常に極めて重要である。足元で見られた一連の動きは、プライベート市場において、この重要性を改めて浮き彫りにしたにすぎない。過去10年余りにわたるプライベート・クレジットの成長は、利回りと分散を求める投資家の需要と、資本市場に存在する数兆米ドル規模の資金供給ギャップとを結び付けるという、その重要な役割によって支えられてきた。
ABの見解では、市場参加者がこの資産クラスの発展を支えてきた原則に引き続き根差している限り、プライベート・クレジットは今後も重要な役割を果たし続けるであろう。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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