中東紛争の激化を受け、インフレ・ショックへの懸念が高まっている。こうした中、ディフェンシブ銘柄は投資家にとって一定の支えになるかもしれない。
イラン紛争がエネルギー価格とインフレに及ぼす影響への懸念が高まる中で、株式市場は下押し圧力にさらされている。ボラティリティと物価上昇からの避難先を求める投資家にとっては、ディフェンシブ銘柄の保有が一定の下支えになるかもしれない。事実、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)のリサーチによると、1973年以降のすべての主要な原油価格急騰局面において、ディフェンシブ銘柄は市場全体をアウトパフォームしてきた。
総合インフレ率は上昇基調
インフレ圧力の高まりは容易に見て取れる。2026年4月21日時点で、ブレント原油先物は1バレル=100米ドル弱で取引されており、年初来の上昇率は60%を超えている。また米国では、無鉛ガソリン1ガロン(約3.8リットル)当たりの平均価格が4年ぶりに4米ドルを上回った。
また、総合インフレ率以外にも警戒すべき兆候はある。
例えばコモディティ市場では、銅価格を金価格で割った「銅金比率」がこの1カ月で4.5%低下した。銅価格は長らく景気の先行指標として注目されており、金相場と比較して銅相場が下落する場合、成長見通しの悪化を示唆していることが多い。また、(インフレ調整後の)債券の実質利回りは上昇しており、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げを見送り、原油価格と株価の動きにはかい離が広がりつつある。これらはすべてインフレ・ショックの典型的な兆候である。
エネルギー価格の上昇が続けば、インフレ率が押し上げられる可能性があり、そうなれば市場の利下げ期待が後退し、金利見通しは一段と複雑なものになり得る。インフレは経済成長の足かせとなり、インフレ率の加速と失業率の上昇が同時に発生するスタグフレーションにつながる可能性もある。スタグフレーションは頻繁に起きる現象ではないが、発生時には経済に深刻な影響を及ぼす(以前の記事『世界景気バロメーター(2026年4-6月期)』ご参照)。
中東紛争の開始以来、株価は不安定に推移
2026年2月末のイラン紛争開始以来、世界の株式市場は乱高下に見舞われている。世界の原油の5分の1が通過する要所であるホルムズ海峡を巡る緊張が高まったことで、株式市場は何度も下落してきた。4月7日に2週間の停戦が発表されると株式は上昇したものの、エネルギー市場を巡る不透明感とリスクを再評価する動きが継続している。
足元のような不安定な環境では、投資家が不安を感じてポジションを手仕舞いしたくなるのも無理はない。だが、目先のニュースに反応して売買のタイミングを計ろうとするのは賢明な投資戦略とは言えない。市場の転換点を正確に見極めて売買することはほぼ不可能であるため、むやみに株式のエクスポージャーを縮小することは逆効果になりかねない(以前の記事『Staying the Course: Resisting Temptation in Volatile 2025 Markets』(英語)ご参照)。重要なのは、ボラティリティの上昇局面を乗り切り、その後も投資を継続しやすい戦略を見つけることだ。
エネルギー・ショック局面におけるディフェンシブ銘柄のパフォーマンス
ABの見方では、インフレを乗り切るための最も有効なアプローチの1つは、確かなディフェンシブ特性を備え、魅力的な上昇余地があり、インフレによる悪影響を克服してきた実績がある銘柄を特定することである。具体的には、クオリティが高く、ベータが低く(市場との相関が低く)、バリュエーション面でも魅力度が高い銘柄が候補になる。ABはこれらの特徴を、質(Quality)、安定性(Stability)、価格(Price)の頭文字を組み合わせて「QSP」と呼んでいる。QSP銘柄の例としては、銀行や食料品小売チェーン、防衛関連企業、製薬会社などが挙げられる。
QSP銘柄はインフレ局面において特に堅調なパフォーマンスをあげてきた実績を持つ。過去4回の原油価格急騰局面では、ディフェンシブ銘柄が市場全体を平均で9.5%アウトパフォームした(米ドルベース)。加えて、アウトパフォームの水準とインフレ率の間には密接な相関関係が見られ、消費者物価指数(CPI)で測定したインフレ率が高いほど、ディフェンシブ銘柄はS&P 500指数を大きくアウトパフォームしていた(図表1)。

とはいえ、ディフェンシブ銘柄のリターンは常にプラスだったわけではない。例えば、2022年にロシア・ウクライナ戦争が勃発した際は、ディフェンシブ銘柄の累積リターンはマイナスであった。それでも、ディフェンシブ銘柄は市場全体を約8%アウトパフォームしていた(米ドルベース)。
ディフェンシブ銘柄の強みはインフレ耐性にとどまらない
イラン情勢が沈静化し、インフレ懸念が後退した場合にはどうなるだろうか。ディフェンシブ銘柄に投資していた投資家はポジションを手仕舞いしなければならないのだろうか。必ずしもそうではない。ABのリサーチでは、インフレ・ショック以外の局面でもディフェンシブ銘柄が市場全体をアウトパフォームしていたことが示されている。エネルギー・ショック局面を除外した場合、ディフェンシブ銘柄の6カ月リターンと12カ月リターンは、それぞれS&P 500指数を2.1%と4.5%、アウトパフォームしていた(米ドルベース)(図表2)。

ディフェンシブ銘柄がアウトパフォームしてきた要因の1つとして、市場の下落局面で相対的に値下がりしにくいことが挙げられる。つまり、下げ幅が小さい分、市場の回復局面で損失を取り戻すために必要な上げ幅も小さくて済む。また、ディフェンシブ銘柄は下落後も比較的高い水準から再スタートできるため、その後の上昇局面ではより有利な状況でリターンを積み上げることができる。ABの分析では、こうした銘柄を厳選して組み込んだディフェンシブ株式戦略は、長期にわたり比較的安定したパフォーマンスをあげる可能性が高い。
インフレ率がどこまで上昇し、それがどの程度の期間続くのかは不透明だが、今回の原油価格急騰による影響は消費者と企業の双方に及ぶとみられ、インフレはすぐには収束しそうにない。だが投資家は、ボラティリティとインフレの両方に対する耐性を備えたディフェンシブなポートフォリオを構築することで、今後の物価上昇を自信を持って乗り切ることができるだろう。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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