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電気自動車業界におけるエンゲージメント ~電池から完成車まで、サプライチェーン全体への働きかけ~

                                                                                                                                                                     

サリマ・ラムドゥアー
アライアンス・バーンスタイン・リミテッド
サステナブル債券 ポートフォリオ・マネジャー
 
 
 
パトリック・オコネル
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
債券運用 責任投資 リサーチ・ディレクター
 

2022年1月4日

 
 
【ESGに関する取り組み】
電気自動車(EV)への移行はサプライチェーン全体の大きな変化を意味しており、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する複数の問題を伴っている。自動車業界が持続可能な事業慣行を模索する中、投資家は変化のプロセスを促進及び加速させるため、政府や企業と協力していく必要がある。
 
電気自動車_エンゲージメント目標.png
 
自動車業界では、EVへの移行が急速に進んでいる。それは、自動車の組み立てメーカー、部品メーカー、資源産業、そして責任ある投資家に極めて大きな影響をもたらしている。
 
EVへの移行はサプライチェーン全体の大きな変化を意味している。EVのエンジンは内燃機関エンジンに比べて必要な部品がはるかに少ないが、バッテリーは非常に重く、複雑な構造をしている。そのため、多くの種類の鉱物が大量に使われており、その使用量は従来型の車に比べて約6倍に達する。これらの鉱物の採掘や精製は、ESGに関するさまざまな問題を伴っている。
 
ABのリサーチやエンゲージメント・プログラムは、EVのサプライチェーンの各段階で収益と責任ある行動の双方を追求している企業を把握するには、総体的なアプローチが必要であることを示している。
 

EV導入の拡大で浮かび上がるESGに関する問題

世界の自動車メーカーやその下請け企業は新たなEV生産計画を実行に移しており、EV業界はニッチな製品のプロバイダーから量産メーカーへと急速に変化している。鉱物の需要は急拡大しており、それがESGに与える影響も高まっている。しかし、倫理的な問題を抱えているのは採鉱業界だけにとどまらない。自動車部品の製造、自動車の組み立て、関連するエネルギー・インフラ(電力会社や充電ポイントのプロバイダーなど)全体で、サプライチェーンが責任を持って管理され、資金が賄われていることを確認することが重要である。
 

鉱物の採掘や加工は懸念すべき最大の問題だが・・・

EVのエコシステム全体で見れば、6種類の鉱物の需要が著しく拡大すると予想される。それらは銅、アルミニウム(例えば、電力網のアップグレード、EVの配線、エンジン、バッテリーケースなどに用いられる)、コバルト、リチウム、ニッケル(EVのバッテリーを構成)、レアアース元素(電気モーターに使用される金属元素と化学的に類似している)である。その結果、EVへの移行が環境や社会にもたらすメリットが、鉱物の採掘や加工の増加によって生じる廃棄物や水質汚染、高水準の排出で相殺されるリスクが高まることになる。
 
だからこそ、責任ある投資家は、これらの産業にとりわけ大きな注意を払い、生産者だけでなく政府とも連携していく必要がある。一方、政府当局は業界の持続可能な発展を導くために必要な政策フレームワークを構築しなければならない。 
 

・・・EVは幅広い新テクノロジーも必要としている

EVのバリューチェーンは、まず鉱物の採掘と加工から始まる。次に行われるのは、バッテリーセルの製造(加工した鉱物で電力源を作り出す)、バッテリーパックの組み立て(個々のバッテリーセルを複合体に組み立てる)、そしてEV本体の製造(バッテリーの搭載を含む)である。
 
それぞれの段階でテクノロジーの進歩が必要になる。そのため、サプライチェーンを構成するそれぞれの企業が十分な研究開発資源を持ち、責任ある形でそれを活用することが重要である。例えば、フォルクスワーゲン・グループ(VW)は、今後5年間に電動化、ハイブリッド・パワートレイン、デジタル技術に約730億ユーロを投じる計画で、それは欧州の同業他社をはるかに上回る金額である。最近では、ゼネラルモーターズ(GM)が2025年までに350億米ドルを投じる方針を表明した。
 

オートモーティブ2.0を伴うEV時代

EVへの移行は、自動運転時代に向けた幅広い「オートモーティブ2.0」プロジェクトと密接に関連している。このイニシアティブは、車の経済的な利用やプラトーニング(燃費効率の高い車両集団を一定の速度でスムーズに走行させること)などの技術を通じ、炭素排出を著しく削減できるとみられる。また、自動車事故の件数や死者の減少にもつながる可能性がある。
 
テクノロジーの観点から見れば、オートモーティブ2.0は次世代自動車の 「頭脳」を作り出すことを目的とした膨大な量のデータやデータ処理能力、そしてより高度なソフトウェアを必要とする。こうした新たな能力は車の走行体験を変えるほか、発注元のブランド製品のメーカー(OEM)のブランド戦略、収益化、顧客関係にも変化をもたらす可能性がある。投資家は、企業との対話を通じて、経営陣がこの一連の新たな事業機会を把握し、陳腐化を回避する準備ができているかどうか確認する必要がある。
 

エンゲージメントは持続可能な事業慣行を促す

ABは、リサーチや全社的なエンゲージメント・プログラムを通じて、責任ある事業慣行をうまく取り入れて変化を目指している企業もあれば、出遅れている企業もあることを認識している。また、経営陣との度重なるミーティングを通じ、投資家の建設的なエンゲージメントに企業が前向きに対応しようとしている明確な証しが見える。サプライチェーンのすべての分野において責任ある企業を特定するにはまだ道のりが遠いが、ABはこの目標を達成するために真剣な取り組みを続けており、順調に前進している。
 

ケーススタディ

● チリにおけるサステナビリティ改善に向けたトップダウン型アプローチ 
 
チリは世界最大の銅生産国で、炭素排出を抑えるために野心的な目標を掲げている。その結果、チリは鉱山セクターの持続可能な慣行を作り上げる上で世界をリードできる可能性がある。コデルコはチリの国営鉱山会社で、世界最大の銅鉱山会社である。
 
ABはエンゲージメント・プロセスの一環として、2021年初めにチリ政府に対し、炭素排出削減に関して国が決定する貢献(NDC)目標について助言し、カーボンニュートラルを達成するために炭素吸収源に頼ることに反対の立場を示した。その代わりに、エネルギー生産における脱石炭を加速させることや、持続可能な採掘方法の導入など、他の炭素削減手段を促した。また、低炭素経済への移行に向けた取り組みが加速するのに伴い銅の需要が増加する中で、鉱山が高い環境・社会基準を遵守できるよう、トップダウン型の政策を求めた。それに加え、グリーンファイナンスのネットワークを改善し、将来のフレームワークを欧州連合(EU)のタクソノミーに合わせることの重要性について強調した。
 
さらに、ここ数年はコデルコや他の大手鉱山会社と脱炭素化計画について直接対話し、事業のサステナビリティを改善するよう促してきた。
 
ABの取り組みは好ましい成果を後押ししている。
 
・ 2020年9月、コデルコは2030年に向けたサステナビリティ目標を発表し、汚染や炭素排出の削減のほか、さまざまな社会的問題に対処するために幅広くコミットメントする考えを表明した。
・ 2021年7-9月期、チリ鉱業省はサステナビリティに焦点を当てた国家鉱業政策ガイドラインを公表した 
 
ABはチリのNDC実現に向けた進捗状況を引き続き監視していきたいと考えている。また、持続可能な資金調達フレームワークやサステナビリティを巡る他の問題について、さらなるエンゲージメントを計画している。
 
● SQM: 持続可能なリチウム生産 
 
SQMは世界第2位のリチウム生産会社で、2025年までに生産能力を倍増することを目指している。同社は環境に配慮した生産と、事業全体におけるサステナビリティ改善に向けた取り組みの双方で高い評価を得ている。例えば、SQMは水の使用量を50%削減するほか、2030年までに最大の事業部門でカーボンニュートラルを実現することを目指している。
 
2021年4月、ABの債券チームと責任投資チームは共同でSQMの経営陣と電話会議を行い、2つの重要なトピックについて議論した。その結果は次のとおりである。
 
・ SQMは同社の生産プロセスがなぜ環境への負担が小さいのかを説明し、想定し得る環境へのリスクについて明確に説明した。SQMはブライン(塩水)の蒸発プロセスを利用してリチウムを生産しており、それは、必要なエネルギーの90%以上を再生可能エネルギー(主に太陽光発電)で賄っていることを意味する。同社の経営陣によると、ブラインは飲料水と明確に区別されており、現場では不透水性の粘土バリアで分離されている。そのため、地域社会にとって希少な飲料水の供給に変化が生じても、ブラインの抽出とは無関係である。SQMはブラインの使用について、できる限り透明性を高めようとしている。例えば、ブラインの使用量をウェブサイトで公開しているほか、ブラインや水のレベルが変化した場合は環境当局に報告している。SQMはこうした透明性を通じ、ステークホルダーに十分な情報を提供するとともに、同社のビジネスに悪影響を与えかねない政策を防ぐことができると考えている
 
・ ABはさらに、ガバナンスや経営陣の報酬に関する問題についても議論した。SQMからは独特な株主構成、現地の状況、競合状態等を踏まえて、報酬やガバナンス体制の正当性に関する明確な説明を得ることができた 
 
2021年10-12月期には、英語版の年次サステナビリティ・レポートを発行したばかりの同社経営陣と、環境とガバナンス双方のトピックについて再び意見交換を行う予定である。
 
● VW: 持続可能なEV生産に向けた包括的な計画 
 
VWは車の生産をすべてEVに切り替えることを約束している。また、中核分野における独立性を確保するため、バッテリーの自社生産を目指して投資している。その結果、VWは業界における勝者と敗者を決定づける要因となりそうな貴重な鉱物のリサイクル計画を通じ、サーキュラーカー(利用時だけでなく生産時の二酸化炭素排出も排除された自動車)の設計で優位に立てる可能性がある。それに加え、VWの乗用車ラインナップは業界で最も低い価格帯からスタートしており、広範かつ迅速なEV導入を促している。
 
2019年6月、ABはVWの経営陣とミーティングを開き、事業戦略とESGに関する課題について議論した。2020年4-6月期には、VWがグリーンファイナンスに関するフレームワークを発表したことを受け、さらなるエンゲージメントを行った。
 
ABはフレームワークについてフィードバックを行い、さらなるESGデータの開示を求める理由を説明した。それには、例えばサプライチェーンにおいて現代奴隷のような問題が生まれるリスクの評価をより行いやすくすることなどが挙げられる。また、経営陣の脱炭素化戦略と長期戦略ビジョンの進展を称賛するとともに、科学的根拠に基づく目標を設定し、VWの活動がEUタクソノミーにどの程度合致するか事前に示すよう求めた。
 
その後、VWは2020年6月に、2030年に向けたサステナビリティ目標を定め、パリ協定や科学的根拠に基づく目標設定イニシアティブ(SBTi)に基づき気温上昇を2度以下に抑えるために必要な炭素排出削減量を決定した。
 
ABはEV戦略に関するVWとのオープンな対話を継続するとともに、VWとのエンゲージメントで得られた成果を他の自動車メーカーとのエンゲージメントでも活用し、特にグリーン・ボンドのフレームワークについて協力したいと考えている。
 
これらのケーススタディは、ABが現在進めているエンゲージメント活動のわずかな事例に過ぎない。今後も、送電システムから充電ポイントのプロバイダー、そして先進国から中国を含む新興国まで、さまざまな業界や地域で建設的な対話を行っていく計画である。
 

EVへの移行にはグリーンファイナンスが必要

ABはまた、責任ある経営に加えて、責任ある資金調達を促している。特に、強力な主要パフォーマンス指標(KPI)を備えたグリーン・ボンドやサステナビリティ連動債(以前の記事『進化するESG債市場』ご参照)は、それらの基準がEUタクソノミーで明確に定められていることから、EVへの移行を促進する上で効果があると考えている。
 
ABはすでに、EVへの移行をさらに後押しする幾つかの興味深いESG債券を目にしており(リチウム生産能力拡大のための資金調達を目的にSQMが最近発行したグリーン・ボンドなど)、ベストプラクティスの例に従うよう働きかけるため、他の潜在的な発行体とも対話している。
 
グリーン・ボンドやKPIに連動した債券がさらに発行されれば、広範なグリーン・ボンド市場で分散化が進み、投資家がよりバランスのとれた投資ポートフォリオを構築する上でも役立つことになる。
 

エンゲージメントの拡大はパフォーマンスの改善につながる

自動車のサプライチェーンは巨大で複雑である。EVへの移行に伴い、特にバッテリーの製造や充電インフラに特別な要件が求められるようになったことで、ESGの視点からの投資要件や投資機会が増えている。
 
政府や企業はサプライチェーン全体に持続可能な手法を組み入れようと努めており、ABのエンゲージメントが好ましい影響をもたらしている。世界中の投資家がエンゲージメントへの関心を高めていることから、それが自動車業界やサプライヤー全体の改善を加速させる要因になると確信している。
 
 
 
 
 
 

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

 

 

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当資料は、2021年10月22日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 
 
 

 

 

 

 

 

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