米国を中心に割高なテクノロジー株が売られ、株式投資家にとって厳しい年明けとなった。この株式市場の調整は不安材料ではあるが、クオリティが高く、持続可能な事業を有する企業が際立つことにつながり、より健全な回復への道を開く可能性があるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では考える。

2021年末に過去最高水準の上昇を遂げたS&P 500指数は、2022年1月26日までに8.7%下落した。ハイテク株の比率が高いナスダックは13.4%暴落した。欧州株と日本株の下落幅はそれよりは小さく、新興国株式は比較的底堅く推移して1.6%の下落にとどまった。バリュー株は、米国をはじめ世界的にグロース株よりも良好なパフォーマンスを示している。MSCIワールド・バリュー指数は1月26日までに現地通貨建てで2.4%下落したのに対し、MSCIワールド・グロース指数は12.9%下落した。(特に記載のない限りすべて米ドルベース)

市場の急激な下落は常に不安をもたらすものであり、投資家は株式の配分に疑問を持つかもしれない。しかし、調整局面というのはよくあることで、ほとんどの年は、市場が年内に急落した場合でも、S&P 500指数はプラスのリターンを記録している(図表1)。ボラティリティが生じた場合、何が不確実性を高めているのかを把握し、市場が落ち着いた際に回復の可能性を最大限に活かすにはどのようなポジションを取ればよいかを理解することが重要だ。

株価は通常、年内に調整局面があった場合も年間で見ると上昇している.png

何が不確実性を高めているのか?

2022年が明けて、投資家は見通しの厳しい環境に直面した。マクロ経済の成長見通しは堅実に見えたが、2021年に比べて成長ペースは鈍化すると広く予想されていた。同様に、収益の伸びも、経済や企業が2020年のパンデミックによる急激な景気後退から回復していた2021年よりも緩やかなペースで続くとおおむね予想されていた。

金融政策の変更も視野に入っていた。米国連邦準備制度理事会(FRB)は、すでに利上げと量的緩和策の縮小の意向を示していた。このような環境下では、成長株全般、特にバリュエーションが非常に高い高成長株が圧力を受けるのは当然のことだ。金利上昇は、キャッシュフローがバリュー株よりも将来に発生する傾向のある成長株のバリュエーションを過度に圧迫する傾向がある。

不確実性が高い年になることは予想していたが(以前の記事『株式市場の見通し~2022年もサプライズに備えよう~』ご参照)、下落の速さ、強さ、幅広さには目を見張るものがある。では、不確実性が高いことがわかっていたにもかかわらず、なぜ株式はこれほどまでに急激に売られたのだろうか?

金融政策と成長への不安

ABの見解では、不確実性の原因は実際には利上げの回数ではない。むしろ、高いインフレ率と不透明な成長見通しという複雑なマクロ経済の状況、特に新型コロナウイルスの混乱が続いていることから、投資家は、FRBや他の中央銀行が微妙な政策のバランス調整をうまく行えないのではないかと懸念している。言い換えれば、中央銀行がインフレへの対処に失敗した場合、国内総生産(GDP)の成長を鈍化させ、経済を不況に導く可能性があると懸念しているということだ。2023年に景気が減速するのか、それとも健全な成長に向かうのかは、政策を正しく理解しているかどうかで決まる。

企業の収益は天秤にかけられている。現在のボラティリティは、マクロ経済や政策への懸念によるものかもしれないが、長期的な株式リターンは、主に収益とキャッシュフローによって左右される。1月26日の米国の不安定な取引は、この緊張感を物語っている。序盤は、マイクロソフトの業績及び業績予想がコンセンサス予想を上回ったことが好感されて株価が上昇した。しかし、FRBの声明がタカ派的な政策転換を示唆し、インフレ状況が悪化した場合には引き締め政策に移行する可能性を示したことから、株価は下落してその日を終えた。

このような綱引き状態は、株式投資家にとって厳しい環境を作り出している。しかし、長期的に見れば、株式は依然として魅力的なリターンを提供する可能性を秘めているとABでは考える。また、短期的には、市場の上下にタイミングを合わせようとするのはリスクの高い戦略であり、ほぼ成功しないと考える。

クオリティ重視の姿勢が重要

現在の市場環境では、強力なファンダメンタルズと妥当なバリュエーションを備えたクオリティが高い株式に焦点を当てることが重要だとABでは考える。このような株式は、市場が下落しているときにはリスクを軽減するのに役立ち、回復が現実のものとなったときには好調に推移する可能性が高いとみている。

投資家は、株式市場の極端な動きを取り入れるべきではないとABでは考える。割高な高成長株に投資した投資家は、現在の市場の調整ですでに打撃を受けている。しかし、その反対に、割安なバリュエーションと引き換えにクオリティが低い企業に投資を行うことも、間違いであると考える。過去にも割安さだけを基準にした投資が増えることによる「ジャンク・ラリー」が起こったことはあるが、それは金融危機や深刻な不況の後、広範囲にわたる倒産の脅威が後退した後に起こったたもので、現在とは全く異なる状況だった。

クオリティが高い株式は、市場が危機に直面している際にも、また長期にわたっても、比較的良好なパフォーマンスを示す傾向がある(図表2)。ABは、クオリティに関する規律は、バリュー株とグロース株のすべてのタイプの株式に適用されるべきだと考えている。どちらの場合も、回復力のあるバランスシート及び質の高いビジネスを有する堅実な企業に注目する。

クオリティが高い株は良い時も悪い時も利益をもたらす.png

バリュー株と収益性の高いグロース株のどちらを探すかで異なる特性がある一方で、どちらにも共通する特性もある(図表3)。例えば、価格決定力はインフレ環境では重要な特性であり、収益性の高い再投資は、企業が将来に向けて戦略的に備えていることを示す良い兆候だ。足元は、過去2年間に収益を膨張させたり圧縮させたりしたゆがみが、ビジネス環境の正常化に伴ってどのように作用するかを理解することも重要だ。

リスクが高い環境ではクオリティに集中.png

市場の不確実性はすぐには解消されることはなく、インフレ圧力と新型コロナウイルスの混乱の継続が収益に影響を与える可能性がある。金融政策の動向は、マクロ経済と市場のセンチメントに影響を与える。また、ロシアによるウクライナ侵攻を巡る脅威などの地政学的問題は、さらなる不安要因となるだろう。

現在のボラティリティは、アクティブ運用を行う運用会社にとって、過度に売られた銘柄を見極める機会となっている。相対的に魅力的なバリュエーションを持つ、クオリティがより高い企業に戦略的に焦点を当てることで、ポートフォリオは、乱気流が緩和され、企業のファンダメンタルズが再び注目されるようになったときに実現するであろう、より強い回復の可能性を捉えることができるとABでは考える。

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