2024年に予想される経済のソフトランディングや利下げは、地方債市場にとって望ましい環境となりそうだ。

地方債市場は明るいムードで2023年を終えたが、2024年の見通しも同じように好ましい。

2023年の大半を通じ、地方債市場は月ごとに急落や急上昇を繰り返した。それでも、ブルームバーグ地方債指数の年間リターンは6.4%に達し、ブルームバーグ1-3カ月米国短期国債指数の税引き後リターンである3.1%を大幅に上回った。

だが、多くの投資家は地方債市場の激しい値動きを目にして市場に戻るのをためらっており、6兆米ドル弱に上る資金がマネー・マーケット・ファンドにとどまっている。慎重な投資家は相場の上場に乗り遅れたと考えているかもしれない。

しかし、歴史的に見て高い利回り、長期にわたり金利を上げてきた米連邦準備制度理事会(FRB)による金融緩和見通し、魅力的な信用スプレッドといった好材料のおかげで、地方債の魅力が今ほど高まっていることは滅多にない。 

金利は低下に向かう

FRBはインフレとの戦いにさらなる勝利を収める必要があるとして、2023年12月に政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利を据え置いた。しかしFRBは具体的な政策転換時期については約束しなかったものの、2024年に最大3回の利下げを行う可能性を示唆した。

FRBの緩和サイクルは、いったん始まれば引き締めサイクルよりもはるかに急速に進む傾向がある(以前の記事『Muni Investors, Take Heed of Fed Pause』(英語)ご参照)。例えば、過去における利上げサイクルは平均10.1カ月だったのに対し、その後の金利据え置き期間は約4カ月、緩和サイクルは7.6カ月で完了した。しかも、利上げ休止後の12カ月間に、地方債は税引き後の米国短期国債(Tビル)を大幅にアウトパフォームした(図表1)。FRBは現時点ですでに一時停止モードに入っており、投資家は模様眺めをやめて、すぐに市場に戻るべきタイミングにきているとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では考える。

地方債市場が輝く時期に

ABの分析によれば、地方債市場は2023年10月終盤から上昇が続いているにもかかわらず、さらなる上昇余地がある。現在の利回りを踏まえると、金利が現在の水準で推移すれば、地方債は引き続き税引き後の米国3カ月国債をアウトパフォームすると予想される。

利回りがABの予想どおり低下すれば、地方債の潜在的なリターンはさらに押し上げられる。債券の利回りと価格は逆の関係にあるため、米国国債の利回りが現在の高い水準から低下すれば、地方債がその恩恵を受けることになりそうだ。

例えば、米国国債の利回りが今後1年間に50ベーシス・ポイント(bps)低下しただけでも、地方債の価格は2%近く上昇する見通しで、トータル・リターンは約5.0%になる計算だ。米国国債の利回りが100bps低下すれば、地方債のトータル・リターンは約6.9%に達する。それとは対照的に、高水準の利回りがもたらすインカム収入が価格下落で帳消しになるには、米国国債の利回りが100bps上昇する必要があるが、今日の経済環境を踏まえれば、そうしたシナリオは考えにくい(図表2)。

テーラーメード型の2024年の地方債戦略

ABの見方では、現在の状況には疑問が付きまとう。投資家は何を待っているのだろうか?今日のような環境では、地方債を最大限に活用するために有効な戦略がいくつもある。

デュレーション目標を長期化する:ABが予想するように2024年に利回りが低下すれば、長いデュレーションは債券価格にとりわけ大きな恩恵をもたらす。

バーベル型の満期構成を検討する:全ての市場環境に適した全天候型の満期構成戦略はないが、現在の環境では、満期構成をバーベル型にすれば、金利リスクを高めることなく現在の逆イールドをうまく活用することができる(以前の記事『Harnessing the Inverted Municipal Yield Curve』(英語)ご参照)。例えば、1年物と15年物の地方債に同額ずつ投資した場合、8年債よりも高い利回りが得られる一方で、金利変動に対する感応度は同じ程度だ。

地方債のクレジットに目を向ける:これには、高格付け債よりも利回りがかなり高いBBB格の債券が含まれる。そのスプレッドはここ数ヵ月で若干拡大しており、長期的な平均に比べ依然として魅力的である。しかし、発行体のファンダメンタルズはそれぞれ異なっているため、銘柄を選別する必要がある。

多くの州や都市は税収難に直面しており、財政的に厳しい様子が伝えられている。しかし、地方債の発行体を全般的に見れば、ここ数十年で最も健全な財政状態にある。現時点では景気後退は予想していないが、各州は景気後退への備えができているようだ(以前の記事『地方債:景気後退への備えはできているか?』ご参照)。また、州はもともと財政難を乗り切る力を持っているため、地方債の発行体がデフォルトに陥ることは滅多にないと想定している(以前の記事『米国地方債のデフォルトが滅多に起きない5つの理由』ご参照)。

柔軟なスタンスを維持する:地方債価格が大幅に上昇する際には、地方債の投資家は米国国債へのシフトを検討すべきである。一部の満期では、米国国債の税引き後の利回りが地方債よりも高いからだ。地方債と米国国債の関係はかなり変わりやすいため、地方債が米国国債に比べ割安になった場合には、再び地方債に切り替える準備を整えておくことが望ましい。

地方債はこのところ好調な動きを見せているが、まださらなる上昇余地がある。投資に完璧なタイミングは滅多にないが、今日の地方債の高い利回りは、ソフトランディングや利下げに対する期待とともに、長期的な視野で投資する投資家によい投資タイミングをもたらしている。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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