魅力的な債券利回りと幅広い株式市場からのリターンは、マルチアセット・インカム戦略の効果を高める重要な要素である。

2025年は2つの局面に分かれるだろうとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は見ている。年前半は2024年からの良好な経済環境が続いた一方、年後半に向けては、米国の関税措置による影響が次第に現れてくると考えられることから、不確実性の高まりを想定している。

2025年のスタートは順調ではなかった。米国の関税政策が予想よりも早く発表され、さらにはより極端な内容となったことで、市場は4月に乱高下する展開となった。またそれと同時に、より成長を重視した財政政策の実施や利下げの見通しについても、年後半に先送りされた格好となっている。

年後半に目を向けると、マクロ経済の主なドライバーになるのはおそらく、米国の財政・貿易政策の方向性、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策スタンスと将来的な利下げのタイミング、さらには地政学関連の不確実性の継続などであると考えられる。

景気後退もテールリスクとしては引き続きあり得るものの、その可能性は比較的低いと見ている。世界の貿易環境が今後どうなるかにもよるものの、経済成長の緩やかな減速がABの基本シナリオである(以前の記事『2025年年央のマルチアセット市場の見通し:選別が重要』ご参照)。そうした中、潜在的な利回りの向上だけでなく、より高い不確実性への対応も期待できるマルチアセット・インカム運用は、現在の環境にふさわしい戦略であるとABは考えている。

ボラティリティを踏まえ「基本姿勢」を維持する

2025年前半は、政策の転換によって市場のボラティリティ、とりわけ米国市場のボラティリティが極度に上昇した(以前の記事『債券市場の見通し:地域分散が有効な局面へ』ご参照)。なかでも米国国債と米ドルの乱高下が続いた一方、米国株式の取引時間中の値動きも2008年の世界金融危機以降で最大を記録した(図表1)。こうした環境下では、市場のタイミングを狙った過度に機動的な戦略よりも、戦略的な資産配分がもたらす分散効果を信頼する方が、最良の結果につながるとABは考える。

良好な環境にあるクレジット市場

米国による関税措置の発表に伴い、クレジット・スプレッドは数週間にわたり拡大したものの、その後は縮小に転じ、現在は長期平均に近い水準にある。こうした動きは、比較的良好なマクロ経済環境を反映していると言える。年初来のクレジット市場は、極めて底堅く、株式市場より堅調に推移しており、マルチアセット戦略においてもインカムと分散の双方を追求する重要な役割を果たしている。

足元のスプレッド(バリュエーション)は割高に映るかもしれないが、利回りの水準に着目することがより重要であるとABは考える。実際、今後3~5年のリターンを予測する指標としては、スプレッドよりも最低利回りの方が優れており、それは債券市場が最も厳しい環境にあっても同じことである。そして今日、クレジット市場全体の利回りは、高く魅力的な水準にある。ABでは現在、BB格などのクオリティの高い発行体を低格付け債よりも選好しており、それがテールリスクの管理にも役立つと考えている。

イールドカーブのスティープ化に備える

マルチアセット・インカム戦略にとって、デュレーション(金利変動に対する感応度)は分散のための重要なツールであると、ABは引き続き考えている。米国については、関税の影響が現れる7-9月期はインフレ率がピークに向けて上昇する一方、その後は雇用や賃金の動向が落ち着くことで、FRBも年末までには利下げを再開できる状況になるとABは見ている。

その一方で、金利の動きは金融緩和の見通しと長期債の利回り上昇との間でいまだ揺れており、それがイールドカーブの着実なスティープ化をもたらしている。そのため、債券のなかでは、利回りと金利リスクのバランスがより魅力的な、短中期債を選好することが賢明であるとABは考える。

株式市場にも視野を広げる

ABの見方では、貿易戦争に伴う市場の混乱は、おそらくその最悪期を過ぎた。そして、米国の関税率については、年初よりもやや高い水準で落ち着く可能性が高いと見ている。安心するのはまだ早いものの、数カ月前よりも政策の透明性がやや高まったことで、企業にとっては今後の計画が立てやすくなったと言える。また、労働市場や製造業とサービス業の活動水準、さらには企業利益についても、底堅い動きが見られる状況にある。

ABは引き続き「米国例外主義」(米国経済の傑出した強さ)を支持する考えであり、米国ならではの強みはこれからも、他国にはない多様で魅力的な投資機会を生む力になると見ている(以前の記事『【ABIQ】関税よりも大きな変化:新たな投資環境に向けたポジショニング』ご参照)。しかしその一方で、株式市場や債券市場においては、グローバルな分散投資にも多くのメリットがあると考えている。

2025年の世界株市場は、4月のボラティリティにもかかわらず、年央には過去最高値を付ける展開となった(以前の記事『2025年後半の株式市場見通し:不透明感が続く中でも維持すべき原則とは?』ご参照)。そして、そうした堅調なリターンは、業績が好調な一部の米国テクノロジー銘柄に集中することなく、幅広いセクターや地域の企業へと、引き続き広がりを見せている(図表2、左図)。また、グロース、バリュー、高配当などのファクターで見ても、堅調なリターンの広がりがうかがえる(図表2、右図)。こうした事実は、幅広い株式市場の組み入れがマルチアセット・インカム戦略の効果を高めるという、ABの考え方を裏付けるものであると言える。

現時点では、米国大型株、グローバル高配当株、さらには一部の景気敏感株の魅力が高いと思われる。ABから見て、これは強力な組み合わせであり、そこには米国市場をけん引してきたテクノロジーの成長やイノベーションへのエクスポージャーが含まれる。そして、それらを補完するのが欧州企業のバリューやインカムの魅力であり(図表3)、なかでも欧州の銀行セクターは、金融政策の正常化がより多くの地域で進むにつれて、その恩恵を受けると考えられる。幅広いエクスポージャーはまた、様々な成長ドライバーにリスクを分散する上でも役に立ち、そうしたドライバーには利益の再投資や自社株買いのほか、配当や企業の価格決定力などがある。

マルチアセット・インカム戦略と市場全体の見通し

2025年後半は経済成長が減速し、その度合いは関税問題の進展に左右されると見ている。また、マクロ経済の主なドライバーには、関税以外にも追加利下げのタイミングや地政学的な不確実性、さらには選挙に関連した不透明感などがあるだろう。それでも、米国の「1つの大きく美しい法案(One Big Beautiful Bill Act)」に盛り込まれた大型減税など、成長を重視した財政政策がそうしたマイナス要素の一部を相殺すると考えられることから、リセッションの可能性は低いとABは見ている。

幅広い市場やファクターを組み入れたマルチアセット・インカム戦略は、これまで市場の不確実性を効果的に乗り切ってきた。市場の環境は急速に変化することもあり、投資家には今後も柔軟な姿勢を維持することが求められる。その一方で、投資家は環境変化への対応に優れたマルチアセット・インカム戦略を活用することで、柔軟性及び魅力的なリスク調整後リターンの可能性を手にすることもできるとABは考える。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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