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中国の規制強化がクレジット市場に及ぼす影響とは?

                                                                                                                                                                     

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ジェニー・ゼン
アライアンス・バーンスタイン・香港・リミテッド
アジア太平洋債券 共同ディレクター
 
 
 
  
 

2021年8月5日

 
 
中国の教育機関やハイテク企業に対する規制強化の動きを受けて、足元は、中国の株式に始まり(以前の記事『Can Onshore Stocks Offer Shelter from China’s Market Storm?』(英語、日本語版作成中)ご参照)、オフショアの人民元やクレジット市場にまで売りの連鎖が発生した。予測不可能な政府の介入に対する投資家の懸念は理解できるが、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では今後についての明るい兆しも見出してる。
 
中国の規制について留意するポイントは、第一に、政府の警告を受けた中国企業は、以前よりも監視の目が厳しくなり規制も強化されることを覚悟していた点だ。次に、北京からのシグナルを無視した企業は悲惨な結果に直面する可能性があるが、政府の警告に耳を傾けて政府目標に合わせて業務を遂行した企業は、より厳しいが不透明性は後退した規制環境の下で繁栄する可能性が高い点だ。全体観としては、クレジット投資にとって健全な環境であると考えている。
 

中国の規制は、急速に対象を広げ、かつ厳格化している

今回の市場の動揺は、急成長を遂げている中国の民間教育産業に対する新たな規制がきっかけとなった。中国の規制当局は、放課後の学習塾の営利事業を禁止したため、民間教育企業の株式が暴落し、市場に衝撃が走った。
 
この規制導入は、電子商取引、フードデリバリー、ライドシェアリングなどの他の高成長業界に対する規制強化に続くものだ。これらの新しい事業分野は、規制の緩さ、テクノロジーの進歩、ライフスタイルの変化、人口動態の変化などを背景に、不動産、金融サービス、インフラといった中国の伝統的な他業種を追い抜いてきた。
 
投資家にとって、中国の新しい規制の速さと厳しさは驚くべきものかもしれない。しかし、中国の規制当局が懸念していることは、必ずしもこの国に特有の事象とも言い切れない。実際、米国や欧州の政治家や規制当局も非常によく似た懸念を抱いている。
 
例えば、大手ハイテク企業は、その巨大な規模、消費者を囲い込むビジネスモデル、消費者データの管理、金融リスクを生み出す潜在的なリスクなどから、あらゆる場所で注目されている。中国政府の対応と他の国の政府の対応の違いは、中国の統治システムでは、より早く、より強力に行動することが可能だという点だ。
 

中国で留意すべき規制リスクは何か

ABでは、中国の規制リスクを大きく4つのカテゴリーに分類している。
 
1) 独占禁止法。消費者や立場の弱い従業員を守るため、政府は市場を寡占するような行為を取り締まっている。これは、電子商取引、フードデリバリー、ラストワンマイルの物流・宅配サービスなど、わずか2〜3社のプレーヤーが独占している分野に特に影響を与える。通常、企業が払う罰金は一回限りであるものの、継続的に発生する高いコンプライアンス・コストは、その後も企業の利益を圧迫する。それでも、これらの企業は存続しており、人々の生活を向上させ、雇用を創出し、調和のとれた社会を育むために必要不可欠であると考えられている。
 
2) コンテンツ規制。中国のコンテンツ規制当局は、動画ストリーミング、コンテンツプロバイダー、ソーシャルメディア、さらにはゲームに至るまで、公共の場での自由な意見発信を統制している。企業にとっての問題は、政府が許容する表現の定義が速いペースで進化しており、企業側がそれに適合し続けることが難しくなっていることだ。
 
3) より高度な改革。中国政府は野心的な改革課題を掲げており、これは単に現状打破を目指す意図もあるが、社会的、環境的(以前の記事『中国のカーボンニュートラル計画を読み解く』ご参照)、政治的などより長期目線に基づく目標の達成も視野に入れたものである。これは、教育やフィンテック分野など、改革に深く関わる分野の企業にとって、2つの理由から特に対応が難しい。
 
第一に、初期段階では、政府側はビジネスの許容範囲を再構築することを目的とした大枠のガイドラインを設定するものの、具体的にどの事業がそれに該当するか明示しないことが多い。その結果、企業は警告を十分に理解せず、既存の問題を悪化させる可能性がある。第二に、政府は社会的・政治的目標を達成するためには、高い経済的対価を支払うことを厭わない。大きい目標のためには、企業のビジネスモデルが犠牲になる可能性についても、不透明感が拭えないことになる。
 
4) 革新的な個別企業。企業規模が非常に大きく、規制のシグナルに耳を傾けようとしない企業は、より深刻な問題に巻き込まれる可能性がある。例えば、ライドシェアアプリ「Didi」は、市場を独占していたため、当初は反トラスト法の規制リスクだけを受けていた。しかし、国家安全保障に関する政府の警告を無視したため、顧客データの不正使用についてさらに厳しい監視を受けることになった。中国政府は革新的な技術を受け入れることはできるが、企業が革新的な行動をとることはそれとは別の問題だ。
 

中国企業は岐路に立たされている

2021年7月1日に創立100周年を迎えた中国共産党は、これまで以上に自信を持って中国の経済と社会を次のレベルに引き上げようとしている。その目標は、すでに単純な国民総生産(GDP)成長率の数値目標ではなく、政治・社会・経済・環境の複数分野に関わるものに移り変わっている。
 
中国企業は進むべき道を選択しなければならない。北京と同じメンタリティに適応する企業は報われる可能性が高いが、「古いやり方」の成長にこだわる企業はより深い危機に直面するかもしれない。
 
結論から言うと、中国の企業は、トップラインの成長を促進するために過剰な設備投資や不必要な規制上のリスクを取るといった選択を再考すべき段階にある。それよりも、安定したキャッシュフローの創出、透明性とコンプライアンスの向上、環境・社会・ガバナンスに対する意識の向上に注力すべきである。
 
そして、このようなフレームワークを念頭に置くことで、中国の厳しい規制環境の中でどのような企業が成功する可能性が高いのかを投資家はより正確に見極めることができるはずだ。
 
 
 
 

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

 

 

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当資料は、2021年6月29日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 

 

 

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