AllianceBernstein アライアンス・バーンスタイン株式会社

knowledge openspace 知の広場

knowledge openspace 知の広場

米国不動産の投資機会④:穏健なリスク・テイクで好利回りが期待できるCRT証券とCMBS

                                                                                                                                                                     

Akira_Nakao_WA2.jpg
中尾 尭
アライアンス・バーンスタイン株式会社
運用戦略部 シニア・インベストメント・ストラテジスト





 

2019年11月14日

 
 
米国不動産市場の投資機会を捉えるさまざまなアプローチを紹介する当シリーズでは、これまで優先リート普通リートなどを用いた投資について説明してきた。第4弾となる本稿では、新しい不動産関連証券として注目を浴びているクレジット・リスク・トランスファー証券(CRT証券)と、足元で魅力度が高まっている商業用不動産担保証券(CMBS)をご紹介したい。
 

CRT証券:リターンの源泉となるリスクに注目

CRT証券はここ5年ほどの間で投資家の間に広がりを見せている新しい証券化商品である。ファニーメイ(連邦住宅抵当公庫)やフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)といった米国の政府支援機関(Government Sponsored Enterprise:GSE)が発行する、住宅ローンを裏付け資産とする住宅ローン担保証券(MBS)である。
 
通常、GSEが発行するMBSの元利金払いには発行体の保証が付いているが、CRT証券の元利金払いには発行体の保証がない。これは金融危機後の米国住宅金融市場で「納税者を損失から守る」という理念が重視されるようになったことを反映したものであるが、その分、CRT証券はより高い利回りとなっている(図表1)。さらに、CRT証券は一般に変動利付証券として発行されることから、金利変動の影響を受けにくい点も魅力だ。
 
GSEからのリスク移転がCRT証券の収益源泉.png
 
CRT証券の発行によりGSE側は住宅ローン担保債券を保証する負担が軽減される。他方、投資家はCRT証券を通じて米国の住宅ローンの信用リスクを収益源泉にすることができる。では、そのリターン(リスク)の源となる現在の米国住宅ローンの質、そしてその住宅ローンの借り手である米国家計のファンダメンタルズはどうなっているのだろうか。
 
実は、金融危機以降、金融機関が貸出基準を厳格化したため、現在の住宅購入者の信用力は危機以前より大きく改善している。その結果、政府機関住宅ローンのデフォルト率は劇的に低下しており、米国の住宅ローンの質は非常に健全な状態にある(図表2左図)。
 
さらに、ローンの担保価値という観点から住宅市場の動向にも目を向けると、供給面では中古住宅の在庫がひっ迫している。需要面では、ミレニアル世代(米国におけるベビーブーマーの子供世代にあたり、一般に1980年代~1990年代生まれの世代を指す)がこれから住宅購入を検討する年齢に差し掛かることから、潜在需要の見通しも良好である(図表2右図)。ABでは向こう数年にわたって住宅価格は年率2-3%程度の上昇が続くと見ている。
 
住宅ローン担保証券のファンダメンタルズ.png
 
また、米国の家計部門全体のファンダメンタルズが良好である点も注目すべきである。雇用環境は改善が続いており、消費者信頼感指数などの消費者心理サーベイや実際の支出額の推移を見ても、個人消費の底堅さは損なわれていない。
 
このようにファンダメンタルズが良好な米国家計の信用リスクに投資する手段として、CRT証券はここ数年にわたり優れたパフォーマンスを示してきた。低金利環境下で企業の負債増加傾向が続いていることを踏まえると、社債セクター対比でもCRT証券には投資妙味があると言える。
 

商業用不動産担保証券(CMBS)

CMBSは、ショッピング・モールやオフィスビルなどの商業用不動産に対して融資されたローンをプールし、それを担保として発行される証券化商品である。CMBSの裏付け資産となるローンは商業用不動産を担保としたノンリコースローンであるため、CMBSのリターン(リスク)の源泉となるのは、融資対象の物件価値およびその物件が生み出すキャッシュフローということになる。したがって、CMBS投資家の主たる興味は商業用不動産市場の見通しにあるということになる。
 
これに関しては、近年のEコマースによる小売革命によって実店舗需要が減退し、現存する商業用不動産の価値が大きく損なわれるのではないかという懸念をもつ市場参加者は少なくない。しかし、ABではこの見方に賛同していない。
 
例えば、米国の従来のショッピング・モールは、中核に百貨店を据え、中小の専門店がその脇を固める形で展開されるのが一般的であった。Eコマースの台頭により百貨店は苦戦しているが、百貨店依存からの脱却に成功した事例も少なくない。こうした例では、より実店舗需要の強いディスカウント・ストアや生鮮食品を扱うスーパーマーケットが新たな中核店舗としての役割を果たしている。小売業者も、買い物1回あたりの金額や再訪率は実店舗の方がオンラインに比べ高く、「ついで買い」を喚起できる実店舗は収益性が高いことを認識しており、実店舗を維持するインセンティブがある。
 
また、消費者ニーズの変化に着目した店舗入れ替えも進められている。いわゆるミレニアル世代は「モノ」より「コト」を重視する傾向があり、新しい靴やバッグよりも、ヨガ教室やパーソナル・フィットネス・トレーニングといった体験型消費を求めてモールを訪れる。こうした消費性向の変化に対応して、かつては7割近くを占めていた衣料品店舗を4割台まで引き下げ、映画館やレストラン、フィットネスクラブを増やすような転換が進んでいる。モールを、ただ買い物をする場所から地域における娯楽の中心へと変容させる動きが加速しているのだ。
 
投資の観点からは、市場は小売セクターを過度に悲観的に評価する傾向があるため、上述のようなビジネスモデルの改革を実行できるモールは今後も収益を創出するチャンスがある。実際にバリュエーションを見ると、CMBSは格付が同等の米国社債に比べて魅力的な利回りを提供している(図表3)。
 
もちろん、CMBSの裏付資産となっている不動産はショッピング・モールだけではなく、オフィスビルやホテルのほか、Eコマースの広がりにより急激に需要が増している産業用倉庫といった物件も含まれ、魅力ある収益機会の掘り起こしと収益源の分散が可能な投資対象である。
 
 
米国社債とCMBSの利回り.png
 

グローバルな地政学リスクの影響を受けにくい

足元の市場では、米中貿易摩擦を中心とする地政学リスクの高まりが投資家心理に影響を与えているのは疑いがない。CRT証券やCMBSを始めとする米国不動産関連証券は、グローバルな地政学リスクからは距離を置いた投資として有効である。
 
2018年は米中貿易問題や原油価格動向、新興国通貨安などの影響を受けて、米国株をはじめとしたリスク資産の値動きは激しかったが、米国経済は減税政策の効果などから、個人消費がけん引する形で堅調に推移し、2018年の実質GDP成長率は3%に迫る強さを見せた。こうした中で、CRT証券やCMBSは社債などと比べ非常に安定したパフォーマンスを示してきた。
 
この先の市場環境を見通せば、グローバルな地政学リスクが急に収束するというシナリオは想定しづらい。米中貿易問題は本質的には世界の覇権争いであり、双方共に簡単に妥協するわけにはいかないからだ。一方で米国経済に関しては、大規模な財政政策を打った2018年ほどの高成長は見込めないまでも、米連邦準備制度理事会(FRB)が景気下支えのための利下げに転じたことで、景気後退のリスクは低下したとABでは見ている。さらに、グローバルな相対感という視点からは、経済の対外依存度が低く、さらなる金融・財政政策を打ち出す余地も
ある米国や中国よりも、既にマイナス金利に突入していることから政策余地が限られ、貿易依存度も高い欧州や日本の方が地政学リスクの影響が深刻化する可能性が高い点も見逃してはならない。こうした観点からは米国経済の相対的な優位性は継続すると考えられる。
 
以上のように、ABでは、債券利回りが歴史的な低水準にとどまり、リスク資産市場全般のボラティリティが高止まりする中、CRT証券とCMBSは、それ自体のファンダメンタルズの健全性や外部環境を考慮した上での相対的優位性などから、引き続き投資妙味があると考えている。
 
 
20190930付 無登録格付に関する説明書(SP、ムーディーズ、Fitch).png
 
 
 
 
 
 
当資料は、2019年10月29日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン株式会社が作成した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 
 

 

当資料についてのご意見、コメント、お問い合せ等はjpmarcom@alliancebernstein.comまでお寄せください。

運用サービス

  • 債券
  • 株式
  • マルチアセット
  • オルタナティブ
  • リスク抑制
  • リターン追求
  • 更なる分散

アライアンス・バーンスタイン株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第303号 
【加入協会】一般社団法人投資信託協会/一般社団法人日本投資顧問業協会/日本証券業協会/一般社団法人第二種金融商品取引業協会
http://www.alliancebernstein.co.jp

 当資料についての重要情報

当資料は、投資判断のご参考となる情報提供を目的としており勧誘を目的としたものではありません。特定の投資信託の取得をご希望の場合には、販売会社において投資信託説明書(交付目論見書)をお渡ししますので、必ず詳細をご確認のうえ、投資に関する最終決定はご自身で判断なさるようお願いします。以下の内容は、投資信託をお申込みされる際に、投資家の皆様に、ご確認いただきたい事項としてお知らせするものです。

投資信託のリスクについて
アライアンス・バーンスタイン株式会社の設定・運用する投資信託は、株式・債券等の値動きのある金融商品等に投資します(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)ので、基準価額は変動し、投資元本を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されているものではありません。投資信託の運用による損益は、全て投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金と異なります。リスクの要因については、各投資信託が投資する金融商品等により異なりますので、お申込みにあたっては、各投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等をご覧ください。


お客様にご負担いただく費用:投資信託のご購入時や運用期間中には以下の費用がかかります
● 申込時に直接ご負担いただく費用 …申込手数料 上限3.3%(税抜3.0%)です。
● 換金時に直接ご負担いただく費用…信託財産留保金 上限0.5%です。
● 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.068%(税抜1.880%)です。

その他費用:上記以外に保有期間に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認ください。

上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、アライアンス・バーンスタイン株式会社が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。

ご注意

アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略や商品は、値動きのある金融商品等を投資対象として運用を行いますので、運用ポートフォリオの運用実績は、組入れられた金融商品等の値動きの変化による影響を受けます。また、金融商品取引業者等と取引を行うため、その業務または財産の状況の変化による影響も受けます。デリバティブ取引を行う場合は、これらの影響により保証金を超過する損失が発生する可能性があります。資産の価値の減少を含むリスクはお客様に帰属します。したがって、元金および利回りのいずれも保証されているものではありません。運用戦略や商品によって投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なります。また、ご投資に伴う運用報酬や保有期間中に間接的にご負担いただく費用、その他費用等及びその合計額も異なりますので、その金額をあらかじめ表示することができません。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。

戻る