- 債券市場では国・セクター・発行体間のばらつき(ディスパージョン)が拡大しており、アクティブ運用による超過収益機会が広がっている。
- システマティック運用を活用した銘柄選択と、機動的かつグローバルに分散したデュレーション管理が有効とされる。
- クレジット投資では平均的なスプレッドではなく個別発行体の分析が重要で、AI関連投資の恩恵を受ける企業とぜい弱な企業の見極めが必要である。
- 金利リスクとクレジットリスクを組み合わせたバランス型アプローチにより、分散効果とポートフォリオの柔軟性向上が期待できる。
市場のばらつきが拡大するほど、投資機会は増える。
現在の債券投資家は、リスクを取れば、ここ数年で最も高いリターンを期待できる環境にある。ただし、すべての投資対象が同じように有望なわけではない。利回り水準の上昇、ボラティリティの高まり、そして国・セクター・業種・発行体間の格差拡大により、投資機会は大きく広がっている。こうした投資機会の「ばらつき(ディスパージョン)」こそが、アクティブ運用で超過収益を生み出す源である。以下では、投資家がこの環境を活用するための4つの方法を紹介する。
ばらつきの拡大が投資機会の範囲を広げる
先進国の多くで長期国債利回りは数十年ぶりの高水準まで上昇している。その背景には、成長期待の高まり、政府債務の増加、政策の不透明感、さらには人工知能(AI)関連インフラ投資に伴う前例のない資金調達需要がある。一方で、インフレ期待は比較的安定しており、金利上昇が単にインフレ懸念だけで説明できる状況ではない(以前の記事『米国長期金利の上昇を読み解く』ご参照)。
世界各国では経済環境や金融政策の方向性にも大きな差が生じている。新興国では利下げが進み、世界経済の減速圧力を和らげている。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月に利上げを実施したが、長期的な引き締めサイクルではなく限定的な調整に止まる可能性も示唆されている。欧州中央銀行(ECB)と日本銀行も金融引き締めを進めた。一方、イングランド銀行はあしもと政策金利を据え置いているが、高騰するエネルギー価格がインフレを長引かせる可能性を踏まえ、利上げ転換の可能性を残している。
実際、エネルギー価格上昇の影響は国によって異なる。原油輸出国は恩恵を受ける一方(以前の記事『気候を巡るパワーゲーム:エネルギー・地政学とリスクの再評価』ご参照)、原油輸入国は逆風に直面する。投資家は地域ごとに異なる成長率、インフレ率、政策対応の組み合わせに向き合うことになる。
こうした「ばらつき」はクレジット市場でも同じだ。AI関連投資は経済全体に波及し始めており、成長を支える要因となっている。しかし、債券利回り上昇によって資金調達コストも上昇しており、信用力の低い借り手への圧力は強まっている。拡大投資路線を継続できる企業もあれば、資金調達する案件を選別しなくてはいけなくなる企業もある。AI関連投資のバリューチェーンにおいても、ハイパースケーラーとデータセンター運営会社、インフラ提供企業について、投資家は異なる信用力の評価を下している。
総じて言えば、このような「ばらつき」の拡大によって、債券市場の投資機会はより豊富になっている。
実践すべき4つの戦略
1. 「ばらつき」構造そのものを活用する
市場の分散が拡大するほど、個別銘柄選択の機会も増加する。このような環境では、システマティック運用の強みが最も発揮される(以前の記事『クレジット市場での銘柄間格差拡大〜システマティック債券運用に好機』ご参照)。
システマティック戦略は、バリューやモメンタム、運用会社独自開発のファクターなどを用いて数千銘柄の債券を分析し、見落とされがちな相対価値の機会を発見する。その強みは、幅広い投資対象の中で多数の独立した小さなアクティブ・ポジションを積み重ねる点にある。分散が拡大するほど、こうした戦術的リスクテイクの機会も増える。
もっとも、有望な債券を見つけることは出発点にすぎない。そのシグナルはポートフォリオ構築、流動性制約、取引コストなどを考慮した上でも有効でなければならない(以前の記事『再現性あるアルファを目指して〜システマティック債券戦略の差別化〜』ご参照)。システマティック戦略のようなアプローチには、堅牢なデータ基盤、継続的なファクター開発、厳格なポートフォリオ構築、優れた執行能力、そしてガバナンスを備えた「再現性のあるアルファ創出エンジン」を備えた運用会社がより好ましい(以前の記事『システマティック債券運用会社への7つの質問』ご参照)。
また、システマティック戦略は従来型アクティブ運用とは異なる超過収益源に依存するため、両者を組み合わせることで、ばらつきの大きい市場環境においてより多くの投資機会を捉える可能性がある。
2. デュレーションを確保し、分散する
実質利回りの上昇、魅力的なインカム収益、そして長期インフレ期待の安定は、伝統的なアクティブ債券運用においてデュレーション(金利変動へのエクスポージャー)を保有する根拠を強めている(以前の記事『ポートフォリオ最適化ツールの活用により高度化する債券運用』ご参照)。また、高い利回り水準は債券価格下落時のクッションとして機能する。
デュレーションについては、機動的にポジションをコントロールすることが重要である。単にポートフォリオのデュレーションを設定したまま放置してはならない。利回りが上昇している局面(債券価格が下落している局面)ではデュレーションを長期化し、利回りが低下している局面(債券価格が上昇している局面)では短期化することが重要である。さらに、イールドカーブ上のポジショニングも、金利環境の変化に対するポートフォリオの反応を左右する重要な要素となる。
アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は、デュレーションの源泉を地域的に分散することも重要であると考える。グローバルに分散されたデュレーション戦略は、単一国よりも堅固な債券ポートフォリオの基盤を提供する可能性がある(以前の記事『Now More than Ever: The Case for Global Bonds』(英語)ご参照)。また、国債は最も純粋な金利エクスポージャーであり、高い流動性を備えている。しかし、投資家は政府機関保証モーゲージ担保証券(エージェンシーMBS)などの証券化商品を通じてもデュレーションを取得できる(以前の記事『好環境にある米国MBS投資に注目する』ご参照)。これらはデュレーションに加えて追加的な利回りと分散効果を提供する。
3. クレジット投資では厳選を徹底する
世界のクレジット・スプレッドは総じて抑制された水準にある。しかし現在の環境では、スプレッドの平均では十分な判断材料にならない。ABは、将来リターンを予測するうえで、スプレッド水準よりも利回り水準の方が有用な指標であると考える(以前の記事『ハイイールド社債:ボラティリティの高い環境でこそ真骨頂を発揮する』ご参照)。あしもと、多くのクレジット・セクターで利回りは魅力的な水準にある。
最も魅力的な投資機会と最も大きなリスクは、表面的には見えにくい場所に存在する。そのため、銘柄選別は常に極めて重要だ。例えば、ハイパースケーラーやデータセンター運営会社は今年3,300億米ドル超の投資適格債を発行している。しかし「AI関連投資」全体が単一の投資テーマとして扱われているわけではない。債券のバリュエーションには、それぞれの資金調達ニーズ、資産の質、将来需要への感応度などの違いが反映されている。
ABは、データセンターの建設、接続、保守を支える一部の「オールドエコノミー」発行体こそ、前例のないAI関連設備投資の恩恵を受ける可能性が高いとみている。また、景気サイクルへの耐久力が高い消費関連セクターやエネルギー関連発行体も選好している。
一方、景気敏感業種や、デフォルトの大半を占めるCCC格の企業、さらには信用力の低い証券化商品については、最もぜい弱な領域であるためアンダーウェイトが妥当と考える。加えて、ハイイールド債(以前の記事『ハイイールド市場における5つの投資機会』ご参照)、新興国債券(以前の記事『新興国債券:AIディスラプションの次なるフロンティアか』ご参照)、証券化資産などを格付けや地域をまたいで組み合わせることで、さらなる分散効果が期待できる。
4. バランスの取れた投資姿勢を維持する
ABは、金利リスクとクレジットリスクをバランスよく配分することが、ポートフォリオの安全資産性とインカム収益確保を両立する上で有効であると考える。特に有効な戦略の一つは、国債などの金利感応度の高い資産と、成長重視のクレジット資産を組み合わせ、1つのポートフォリオの中で機動的に運用する方法である。
この組み合わせは、テールリスク(確率は低いが発生すると大きな影響を及ぼすリスク)を軽減し、マクロ経済要因へのエクスポージャーを分散する効果がある。分散効果を発揮する異なる資産を組み合わせることで、金利リスクと信用リスクのバランスを管理しやすくなり、市場環境に応じてデュレーションとクレジットの割合を迅速に調整することも容易になる。
市場のばらつきが拡大する中でも投資を続ける
何よりも重要なのは、市場に投資し続けることである。資金を現金で保有している投資家にとって、現在の高い利回り水準は債券市場へ参入する魅力的な機会を提供している。市場が分断し「ばらつき」が拡大するほど、投資機会も増加する。規律ある投資アプローチは、その機会を超過収益として実現する助けとなる。ABは、システマティックなアクティブ運用、分散されたデュレーション源泉、厳格なクレジット選別、金利リスクとクレジットリスクの均衡、そして十分なポートフォリオ流動性が、不確実性を吸収しながら新たな投資機会を迅速に取り込むための基盤になると考えている。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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